講演情報
[11教-ポ-13]球技学習におけるルールに関連する諸概念
*山崎 竜誠1、鈴木 理2、伊佐野 龍司2 (1. 日本大学人文科学研究所、2. 日本大学)
学習指導要領(文部科学省、2018)における「~型」表記に象徴されるように、球技領域においては類縁的種目に通底する内容の理解が重要である。しかし近年の球技授業実践の多くは、ゲームのプレイ条件を浮き立たせ学習者の戦術的気づきを導く(グリフィンほか、1999)ためにルールを運用しており、種目特有の内容のみを理解させるに留まっているように見受けられる。そこで本研究は、球技領域における指導内容の習得に向けて、ルールがいかなる機能を果たし得るのかを検討することを目的とした。これに関して、すでに山崎(2023)は、球技学習においてルールが〈課題〉(指導内容)と〈課題解決方法〉を構成する機能を包括的に捉えている。しかし、ルールが機能する諸概念すなわち〈課題〉、〈課題解決方法〉、「現実のゲーム文脈」について、その概念間の関連にまで議論が及んでいなかった。そこで本研究は、ルールの機能とその機能に関連する諸概念を整理し体系的に提示することで、論理的妥当性を裏付けることを企図した。具体的には、多木(1995)とゲーム構造論(例えば 鈴木、2018)が共に記号論的見地に立脚すること、また川谷(2005;2013)がルールの機能を「ゲームの本質を構成する/他のゲームとの差異を構成する」と説明していることに着眼し、ゲーム構造を形づくるルールの「両義的な機能」を精緻に記述するに至った。また、ルールが現実のゲーム情況に適用される際には、その機能が「文脈依存性」を帯びる(松宮、2022)ことを明確に位置づけることで、ルールがゲーム構造を構成する位相と、ゲーム情況において学習者に対して機能し、プレイに影響を与える位相とを明確に区別した。一連の議論により、球技学習におけるルールとそれに関連する諸概念との連関が精緻になり、ルール運用の際の有用な参照枠組みが浮き彫りとなった。
コメント
コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン
