講演情報
[11教-ポ-32]体育科教育において質的研究手法がもつ可能性に関する一考察
*佐藤 亮平1、岡崎 太郎3、近藤 雄一郎2 (1. 宮城教育大学、2. 福井大学、3. 北翔大学大学院)
教育実践を研究する学問としての体育科教育学は、その学問的関係性を親科学として教育学との血縁的関係、体育学と婚姻的関係があるとされる(高橋、2010)。そして、その独自性については体育の教科内容(スポーツ文化)の指導・学習、体育の学習環境(グラウンド、体育館、プールなど)、体育を学ぶ個人や集団(興味・関心、運動発達、学習形態など)といった条件下で「授業(単元)計画を立て、実践し、そのなかから一般に妥当するような方法上の原理を究明する研究」であるとされる。それゆえ、体育科教育学は「基礎科学」を基礎とした「実践科学」であるとされる。このような立ち位置をとって体育科教育学は独自の知識を生産してきた。ただし、これまでに『体育科教育学研究』に掲載された研究は定量的データを用いられた研究が主流となっている(岡崎ら、2025)。こうした現実に対し、質的研究の有効性について示している研究もある(岩田ら、2022)。そこで、本研究では、体育科教育学研究に掲載されている質的研究手法を用いた研究を対象に、その手法が照らし出す研究対象が量的研究とどのように異なるか、について明らかにすることを目的とする。研究方法は体育科教育学研究において参与観察的手法を用いた研究として掲載されている成家・青木(2023)、成家ら(2013)、伊佐野ら(2011)の研究方法について整理する。その上で、これらの研究が明らかにした対象について考察する。その結果、質的研究の手法が用いられることによって、学校の中で、学年のなかで、クラスのなかで、授業のなかで、という各レベルで生起する出来事に対して、教師は、子どもは、という視点から、その実態を記述することを通じて、現場の教師が育んできた実践知の再発見、既存の知見の再解釈、を可能にすると考えられた。
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