講演情報

[09コ-ポ-16]パルクール指導における動向と発生運動学的アプローチの可能性

*中村 真由美1 (1. 清泉大学短期大学部)
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近年、パルクールは都市空間を創造的に活用する身体実践として世界的に認知度が高まり、多くのスポーツ実践者の注目を集めるとともに教育現場への導入も進んでいる。多様な動きを包含するパルクールは総合的な身体能力の向上に寄与する可能性があり、現代社会における身体能力低下という課題に対する一つの解決策となりうる。日本でもパルクールを実践・指導するコミュニティが増加している。しかし、パルクールの指導において重要な課題が存在する。既存のパルクール研究は主にバイオメカニクス的分析や社会学的考察に偏っており、体系的な指導法の確立には至っていない。また、危険なイメージが先行し、パルクールに挑戦する者にとっての心理的障壁となっている側面もある。安全かつ効果的な指導法を確立するためには、実践者の運動感覚的世界を内在的に理解し、動きの習得過程を構造化する理論的枠組みが不可欠である。このような課題に対して本研究では、金子明友らの発生運動学を理論的基盤とした分析アプローチに着目する。発生運動学は「動感」「運動感覚能力」「形成位相」などの概念を通じて、実践者がどのように動きを感じ、習得し、発展させていくかを分析する視座を提供する。パルクールにおいても、実践者がどのように環境を捉え、動きのフローを構成しているかを理解することは、指導法確立の核心的課題である。この現象学的基盤を持つスポーツ運動学的アプローチは、外部観察だけでは捉えきれない「動きの感じ」を解明する上で有効性が期待される。本発表の目的は、パルクール研究の動向を整理し、発生運動学的アプローチのパルクール指導への適用可能性とその実践的意義を検討することである。

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