講演情報

[09コ-ポ-52]ある大学の剣道部所属学生の心理的傾向に基づく指導の検討

*玉田 理沙子1 (1. 志學館大学)
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近年、大学における部活動・サークル活動への参加率は、コロナ禍以降減少傾向にある(全国大学生協連, 2022)。一方で、こうした課外活動が学生にもたらす心理的・社会的価値は根強く、特にスポーツ経験者の間ではその重要性が体感的に理解されている。部活動は単なる競技やレクリエーションの場ではなく、集団の中での役割や人間関係を通じて多様な経験を積む機会ともなり得る。玉田ら(2025)は、ある大学で認定された課外活動団体(以下、指定サークル)に所属する学生を対象に、主観的幸福感や精神的健康との関連を調査した。これらの指定サークルは、競技力を基本としつつも必須とはせず、学業との両立や多様な成長経験を重視する柔軟な活動スタイルを特徴としている。その結果、心理的安定や大学生活への肯定的な影響に寄与する可能性が示された。一方で、活動意識の差や新メンバーとの関係性による孤独感など、参加環境における課題も指摘されている。また、玉田ら(2023)は、高校剣道指導者への質的調査を通じて、剣道指導において「人間性の育成」が重視されている実態を明らかにした。 本研究は、大学剣道部に所属する学生の心理的状態を量的に記述し、剣道指導における「人間性の育成」という理念が学生の主観的幸福感や精神的健康にどのように表れているのかを検討することを目的とする。 そのために、同調査データのうちある大学の剣道部に所属する学生33名の回答を抽出し、主観的幸福感尺度(井上ら,2022)および12項目版一般健康質問票(GHQ-12)を用いて、心理的傾向を探索的に捉えた。剣道部という特定の活動を通じて学生の心理的状態を量的に記述し、現場で指導に関わる立場から浮かび上がった問いを一事例として検討したものである。自身の指導を見直すためであると同時に、同じような立場にある指導者が実践を省みる手がかりとしても活用されることを期待している。

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