講演情報
[10101-05-02]亜急性期における脳卒中後重度上肢運動麻痺症例に対する視覚誘導性自己運動錯覚とAI統合型筋電図駆動ロボットハンドの併用介入
*匂坂 歩夢1、姫田 大樹1,2、山岡 洸1,3、廣瀬 卓哉1、丸山 祥1,2,4 (1. 湘南慶育病院 リハビリテーション部、2. 東京都立大学大学院人間健康科学研究科、3. 北里大学大学院医療系研究科、4. 北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科作業療法学専攻)
キーワード:
ロボット、上肢機能、バーチャルリアリティ
【はじめに】脳卒中後重度上肢運動麻痺に対し, 視覚刺激を用いた運動イメージやロボット療法の有効性が報告されている. 運動イメージは運動療法前のプライミングとして実施することで上肢機能回復を促進し, その誘発手段の1つである視覚誘導性自己運動錯覚(KINVIS)は皮質脊髄路の興奮性を増大させることが示されている. また, AI統合型筋電図駆動ロボットハンド(MELTz®)は運動学習と手指機能の改善に有用であり, 麻痺手の使用量を増加させる可能性がある. しかし, KINVISとMELTz®を併用した報告はない. 本報告では, ラクナ梗塞により重度上肢運動麻痺を呈した症例に対し, KINVISとMELTz®を併用した介入を実施し, 手指運動機能改善を認めたため, 以下に報告する. なお, 症例報告にあたり本人より書面で同意を得た.
【症例紹介】右ラクナ梗塞(放線冠~被殻)と診断され, 左上肢運動麻痺を呈した60代右利きの女性. 保存的加療後, 発症20病日に回復期リハビリテーション病棟へ入院. 初回評価時(39病日), FMA(U/E)26点(A26, B0, C0, D0), FMA(感覚)12点, ARAT13点(A3, B1, C0, D9), BBT2個, MAS0, MAL-AOU, QOMともに0.88点であった. 発症から数日で肩・肘関節の随意運動は得られていたことから中枢部の予後は良好と判断し, 手指の機能改善に焦点を当てた介入を進めることとした. 目標は, 整容時に左手に美容液を受ける, ペットボトル開閉時に左手で把持することができるとした.
【方法】介入内容は, KINVISとMELTz®の併用介入を1時間, 通常OTを1時間, 自主訓練を0.5時間, 計2.5時間の介入を40病日から15日間実施した. KINVISでは, HMDを装着し仮想空間内で3秒間の手指屈伸運動の観察を10分×2回/日, 実施した. MELTz®では, 前腕の筋電図を測定し, 手指屈伸運動を合計30分実施した. 通常OTでは, 電気刺激療法およびADL訓練を, 自主訓練では, 近位筋に対し, ReoGo®-Jを実施した.
【結果:55病日】FMA(U/E)38点(A29, B0, C5, D4), FMA(感覚)12点, ARAT26点(A11, B6, C0, D9), BBT8個, MAS0, MAL-AOU1.43点, MAL-QOM1.71点であり, 上肢機能の改善を認めた. 日常生活においては, 美容液を左手に受ける, ペットボトル開閉時に左手で把持する等, 左手を使用する場面が増加した.
【考察】本症例では, KINVISをプライミングとしてMELTz®と併用した介入により, 手指屈伸運動の改善が確認された. この変化は, KINVISにより皮質脊髄路の興奮性を増大させた可能性があり, その状態で, MELTz®によって手指屈筋・伸筋群の筋電を検出し, 能動的な運動出力を支援したことによると考えられる.
【症例紹介】右ラクナ梗塞(放線冠~被殻)と診断され, 左上肢運動麻痺を呈した60代右利きの女性. 保存的加療後, 発症20病日に回復期リハビリテーション病棟へ入院. 初回評価時(39病日), FMA(U/E)26点(A26, B0, C0, D0), FMA(感覚)12点, ARAT13点(A3, B1, C0, D9), BBT2個, MAS0, MAL-AOU, QOMともに0.88点であった. 発症から数日で肩・肘関節の随意運動は得られていたことから中枢部の予後は良好と判断し, 手指の機能改善に焦点を当てた介入を進めることとした. 目標は, 整容時に左手に美容液を受ける, ペットボトル開閉時に左手で把持することができるとした.
【方法】介入内容は, KINVISとMELTz®の併用介入を1時間, 通常OTを1時間, 自主訓練を0.5時間, 計2.5時間の介入を40病日から15日間実施した. KINVISでは, HMDを装着し仮想空間内で3秒間の手指屈伸運動の観察を10分×2回/日, 実施した. MELTz®では, 前腕の筋電図を測定し, 手指屈伸運動を合計30分実施した. 通常OTでは, 電気刺激療法およびADL訓練を, 自主訓練では, 近位筋に対し, ReoGo®-Jを実施した.
【結果:55病日】FMA(U/E)38点(A29, B0, C5, D4), FMA(感覚)12点, ARAT26点(A11, B6, C0, D9), BBT8個, MAS0, MAL-AOU1.43点, MAL-QOM1.71点であり, 上肢機能の改善を認めた. 日常生活においては, 美容液を左手に受ける, ペットボトル開閉時に左手で把持する等, 左手を使用する場面が増加した.
【考察】本症例では, KINVISをプライミングとしてMELTz®と併用した介入により, 手指屈伸運動の改善が確認された. この変化は, KINVISにより皮質脊髄路の興奮性を増大させた可能性があり, その状態で, MELTz®によって手指屈筋・伸筋群の筋電を検出し, 能動的な運動出力を支援したことによると考えられる.