講演情報
[10101-05-03]心筋炎後の開胸術後患者に対する心身機能に応じて段階的に作業に焦点を当てた実践の経験
*宇都宮 裕人1、増田 智也2、齋藤 駿太3 (1. イムス横浜東戸塚総合リハビリテーション病院、2. イムス葛飾ハートセンター、3. 済生会小樽病院 リハビリテーション室)
キーワード:
作業療法理論、目標設定、生きがい
【初めに】今回,心筋炎による開胸術後の患者に,目標が立たない状態から身体機能に応じて作業に焦点を当てた評価や支援を段階的に行うことで退院後の「外食」に行く自信をつけることができたため報告する.尚,報告にあたり,症例からは紙面で同意を得ている.【症例紹介】A氏,60歳代女性.今回,第0病日に心筋炎発症して,第14病日に開胸術が施行された.術後87日後に開胸術後の廃用症候群の診断で当院回復期リハビリテーション病棟に入院となった.入院時のNYHA心機能分類はclassⅢ,左室駆出率(以下;EF)は34%,MMTは上肢は4,下肢・体幹が3であり,日常生活に多くの支障を呈している状態であった.また,低血圧であり,めまいやだるさが著明であった.趣味は,食べ歩きであった.【OT評価】認知機能はMMSEが満点.身体機能は,BBSや6分間歩行は困難であった.身体活動能力質問表(以下;SAS)は2Mets相当であった.FIMは58点で,車椅子介助で重介助の状態であった.症例は,「何もできない.」と涙し,目標がない状態であった.評価は肯定的な主観的経験を評価できる作業との結び付きに関する評価尺度(以下;AOE)を用いたが,「動けないから何もできない.」と話し,作業中心の視点の<ステップ1:17/60点>,患者中心の視点の<ステップ2:45/60点>であり,OEの当てはまりが低下しており,その状態をより良く改善したいと思っている状態であった.【経過】SASやAOEを参考に,達成感を意識して2Mets相当のベッド上でのエルゴメーター,トイレなどをめまいに考慮し実施した.入院第22日には,めまいが消失して車椅子自立となった.AOEはステップ1:28/60点,ステップ2:50/60点となり,生活に必要な家事自立が目標が挙がった.そのため,3〜4Mets相当の洗濯干し,掃除など課題を実施した.入院第30日には歩行器自立となり,AOEはステップ1:35/60点,ステップ2:53/60点となり,外食が目標に挙がった.そのため,5Mets相当の院内庭園を杖歩行で荷物を持った階段や歩行訓練を目標とする外出距離を考慮し実施した.最終的には,入院第57日に公共交通機関を利用した外出訓練を実施した.【結果】入院第63日にはNYHA心機能分類はclassⅡ,EFは60%となった.身体機能は,MMT上肢・下肢・体幹は共に5,BBSは54点や6分間歩行は370mであった.SASは5Mets相当であった.FIMは125点となった.AOEはステップ1:42/60点,ステップ2:46/60点となり,「休みつつ外出できそう,食べに行くことが楽しみ.」と肯定的な話があった.【考察】本症例において,作業視点と心身機能を段階的に支援することは,活動と参加に焦点を当てて支援できることが考えられた.