講演情報
[10101-05-04]急性期病院において日本語版Grade-4/5MALを使用した一症例
*山本 恵利香1、髙橋 香代子1 (1. 北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科作業療法学専攻)
キーワード:
MAL、脳卒中、患者教育
【はじめに】
脳卒中後の片麻痺患者において,ADLでの麻痺側上肢の使用を促すことは重要である.評価ツールとしてMotor Activity Log(以下,MAL)が広く使用されているが,項目の難易度が高いことや急性期病院で使用しにくい現状もある.そこで,2013年に重度上肢機能障害を呈する患者も使用できるようにGrade-4/5MALが米国にて開発され,2025年には日本語版Grade-4/5MALが発表された.
【目的】
本研究は,急性期病院の脳卒中片麻痺患者に対し日本語版Grade-4/5MALを使用することで,設問項目についての考察や急性期病院における使用方法を検討することとした.
【方法】
対象は,急性期病院の脳卒中片麻痺患者のうち,Grade-4/5の対象であるFMA31点以下の意思疎通が可能なもの1名とした.まずADLでの麻痺側上肢の使用の理解度について,佐々木(2019)が考案した「麻痺した手の生活での使用方法はわかりますか」の質問を,1:とても分かる,2:まあ分かる,3:あまり分からない,4:まったく分からないの4件法にて聴取した.次にGrade-4/5MALの評価を実施し,改めて麻痺側上肢の使用の理解度について質問を行った.今回の発表に際し,対象者より書面にて同意を得ている.
【結果】
対象は,右橋出血を発症し左片麻痺を呈した50歳代左利きの女性である.発症30病日後の評価は,FMA31点,MMSE27点,FIM運動項目19点,認知項目33点,MAL-14のAOU0点,QOM0点であった.麻痺側上肢の使用における理解度は,3点を示し「手をどのように使えばいいのかわからない」との発言があった.Grade-4/5MALの使用頻度(AS)は平均0.33点,動作の質(HW)は平均0.17点であった.その後,再度聴取した麻痺側上肢の使用における理解度は,2点であり「具体的な手を使う場面がイメージしやすい」との発言を認めた.
【考察】
Grade-4/5MALは,補助手や両手動作でも参加可能なADL項目が新しく追加されている.今回の対象者においても,“座るために手で体を支える”などの項目は麻痺側上肢の参加が促しやすい傾向にあった.また,麻痺側上肢の使用に関する理解度の質問については,Grade-4/5MAL実施後の方が実施前よりも理解度が高い結果となった.これは,Grade-4/5MALのADL項目が具体的な上肢の使用をイメージできるためと考えられる.さらには,対象者の発言からもADL上の麻痺側上肢の使用方法の気づきが得られる結果となった.このようにGrade-4/5MALは,急性期病院でも麻痺側上肢の参加を促すツールとして使用することが可能であり,動機づけや作業療法士などとの目標共有のツールとしても有効である可能性がある.
脳卒中後の片麻痺患者において,ADLでの麻痺側上肢の使用を促すことは重要である.評価ツールとしてMotor Activity Log(以下,MAL)が広く使用されているが,項目の難易度が高いことや急性期病院で使用しにくい現状もある.そこで,2013年に重度上肢機能障害を呈する患者も使用できるようにGrade-4/5MALが米国にて開発され,2025年には日本語版Grade-4/5MALが発表された.
【目的】
本研究は,急性期病院の脳卒中片麻痺患者に対し日本語版Grade-4/5MALを使用することで,設問項目についての考察や急性期病院における使用方法を検討することとした.
【方法】
対象は,急性期病院の脳卒中片麻痺患者のうち,Grade-4/5の対象であるFMA31点以下の意思疎通が可能なもの1名とした.まずADLでの麻痺側上肢の使用の理解度について,佐々木(2019)が考案した「麻痺した手の生活での使用方法はわかりますか」の質問を,1:とても分かる,2:まあ分かる,3:あまり分からない,4:まったく分からないの4件法にて聴取した.次にGrade-4/5MALの評価を実施し,改めて麻痺側上肢の使用の理解度について質問を行った.今回の発表に際し,対象者より書面にて同意を得ている.
【結果】
対象は,右橋出血を発症し左片麻痺を呈した50歳代左利きの女性である.発症30病日後の評価は,FMA31点,MMSE27点,FIM運動項目19点,認知項目33点,MAL-14のAOU0点,QOM0点であった.麻痺側上肢の使用における理解度は,3点を示し「手をどのように使えばいいのかわからない」との発言があった.Grade-4/5MALの使用頻度(AS)は平均0.33点,動作の質(HW)は平均0.17点であった.その後,再度聴取した麻痺側上肢の使用における理解度は,2点であり「具体的な手を使う場面がイメージしやすい」との発言を認めた.
【考察】
Grade-4/5MALは,補助手や両手動作でも参加可能なADL項目が新しく追加されている.今回の対象者においても,“座るために手で体を支える”などの項目は麻痺側上肢の参加が促しやすい傾向にあった.また,麻痺側上肢の使用に関する理解度の質問については,Grade-4/5MAL実施後の方が実施前よりも理解度が高い結果となった.これは,Grade-4/5MALのADL項目が具体的な上肢の使用をイメージできるためと考えられる.さらには,対象者の発言からもADL上の麻痺側上肢の使用方法の気づきが得られる結果となった.このようにGrade-4/5MALは,急性期病院でも麻痺側上肢の参加を促すツールとして使用することが可能であり,動機づけや作業療法士などとの目標共有のツールとしても有効である可能性がある.