講演情報

[10201-05-04]カレンダーを活用して目標を事例・病棟と共有し,しているADLへ働きかけることができた中心性頚髄損傷事例

*鈴木 音弥1、中村 瑞紀1、木村 亮太1 (1. 聖隷横浜病院)

キーワード:

中心性頚髄損傷、多職種連携、しているADL、目標カレンダー

【はじめに】中心性頚髄損傷により基本動作・日常生活活動(以下ADL)に重介助を要した回復期事例を担当した.当院では事例・リハ・病棟で目標を共有するために目標カレンダーを活用している.今回,目標カレンダーを用いて事例・病棟と連携を図ったことで,できるADLがしているADLへと汎化され,結果として車椅子自走での病棟生活が獲得できたため以下に報告する.発表に際し,事例より紙面にて同意を得ている.【事例紹介】80歳代,女性,右利き.診断名は中心性頚髄損傷(C5レベル),外傷性くも膜下出血.現病歴は外出先で転倒し救急要請.中心性頚髄損傷の診断で頸椎カラー装着.8病日にC4-6椎弓形成術施行.21病日にリハビリ継続目的に当院回復期病棟に入棟となった.病前生活は自立.マンションに姪夫婦・息子と4人暮らしであった.【作業療法評価】hopeは「友達に手紙が書けるようになりたい」「食事を座って食べたい」「トイレに行けるようになりたい」.認知・高次脳機能面はMMSE 28点,HDS-R 26点,FAB 14点であった.リハには意欲的であった.身体機能面は,関節可動域は右上肢・手指に制限を認め,筋力は右上肢・体幹筋でMMT2レベル.感覚は上下肢末梢優位(C6-8レベル)にしびれを認めた.FIM45点,基本動作・ADLは全般に介助を要した.【介入経過】介入初期は机上での作業活動は車椅子座位30分弱で耐久性の低下を認めた.そこでトイレ動作能力の向上,離床時間拡大に向け機能面への介入と並行してシーティングを行い,机上での作業活動が持続できる環境を調整した.次にADL拡大に向け,座位姿勢が安定した段階で車椅子駆動練習を実施.その後退院に向けてPTと移動方法について検討し,車椅子での生活を想定した練習を実施した.退院支援の段階に応じて,カンファレンスで目標を事例と看護師で共有.具体的にはカンファレンス後,事例-看護師-リハビリ間で目標カレンダーに記載・共有した.その際,期間設定した実現可能な目標を設定し,立案した目標に対してのフィードバック,達成度の確認を実施しながら行い,円滑にADLの拡大が図れるよう進めた.【結果】車椅子座位の耐久性は半日程度可能となる.移乗動作は支持物把持し自立.右上肢挙上時の肩甲帯周囲の過緊張,手指の可動域制限・しびれも残存したが,一部使用物品を工夫し日常生活動作は入浴以外自立となった.FIM87点に向上した.最終的に病棟生活の中で主体的に車椅子での生活が確立できた.【考察】本事例において,できるADLからしているADLに汎化できた要因は2つあると考える.第1に目標設定において段階付けて設定し,長い入院期間の中で事例のモチベーションを落とさずに実施できたこと.第2に病棟練習の中で現状の能力から必要な環境設定・動作方法を事例・看護師と共有し,自立に向けて段階的に支援できたことで,しているADLへ汎化できたと考える.