講演情報
[10201-05-05]転移性脳腫瘍患者に対する急性期での作業療法実践
-不安や焦燥感に対し目標設定・IADL支援を行い,主婦業復帰に繋がった事例-
*鈴木 陽太1、山本 力也1、木村 亮太1 (1. 聖隷横浜病院リハビリテーション課)
キーワード:
ADOC、AMPS、調理訓練
【はじめに】今回,転移性脳腫瘍のClient(以下CL)を担当した.腫瘍摘出後早期より作業療法(以下 OT)を開始した.心身機能・活動が改善しても,漠然とした不安や焦燥感を抱えていた.そのため,ADOCを用いた目標設定により重要な作業であった「炊事」に焦点をあてて介入したことで,心理面が改善し主婦業への復帰に繋がったため報告する.本発表に際し,本人に同意を得ている.
【事例紹介】70歳代,女性,右利き,診断名は転移性脳腫瘍(左小脳).X年Y月Z日に突然の吐き気あり.19病日当院に来院し頭部MRIにて左小脳半球に嚢胞性腫瘍を認め,転移性脳腫瘍の診断で入院となった.25病日に頭蓋内腫瘍摘出手術を施行し,術翌日から OT介入を開始した.既往歴は肺がんstageⅢA,現在も化学療法継続中.妹と同居し病前ADLは自立.
【作業療法評価:術後7日間】言語面,認知機能・高次脳機能は観察上問題はなかった.心理面に漠然とした不安・焦燥感を抱 えていた.身体機能面では運動麻痺・感覚障害は認めず,ICARS18点で測定障害,企図振戦,体幹失調を認めた.ADLはFIM81点(運動48点/認知33)で,食事,整容自立,更衣軽介助,トイレ動作は支持物使用で自立していた.
【経過】Ⅰ期:作業の獲得に向けた離床期では術後早期より全身状態の把握,リスク管理に留意しながら 徐々に離床を進めた.術後7日目には嘔気や眩暈は軽減し,座位でのADLは概ね自立した.CLからは「一人だと不安です.家に帰って元の生活ができますか」との訴えがあった.
Ⅱ期:炊事に焦点を当てた時期では不安や焦燥感に対しADOCを用いて目標共有を図った.特に重要度の高い作業に炊事が挙げられ,「炊事は毎日やるものだから大切ですね.家に帰った時にできるか不安です」との訴えがあった.術後18日目より炊事の再獲得に向けて介入 した.実動作は調理計画,準備,調理動作,後片付けの4つの工程に分けて実施した.先輩OTRの指導の下,AMPSに基づいた分析を行うと,全体的に作業遂行は可能であるが,調理動作において軽度の緩慢さや拙劣さを認めた.
【結果】心理面は漠然とした不安や焦燥感の改善を認め,失調症状はICARS3点に改善した.ADLはFIM123点(運動88点/認知35)で病棟内自立となった.AMPSは運動技能・プロセス技能共に 1.7.CLからは「家でもできる自信がつきました.最初は妹と一緒にやってみます」との訴えがあった.
【考察】評価上は作業遂行に必要な心身機能は一定以上保たれていたが,AMPSを用いた評価で作業遂行の質に低下がみられた.本事例を通して作業療法プロセスを通して評価・介入することで,担当OTが気付けなった炊事における作業遂行の質を評価・介入していくことができ主婦業復帰に繋がったと考える.
【事例紹介】70歳代,女性,右利き,診断名は転移性脳腫瘍(左小脳).X年Y月Z日に突然の吐き気あり.19病日当院に来院し頭部MRIにて左小脳半球に嚢胞性腫瘍を認め,転移性脳腫瘍の診断で入院となった.25病日に頭蓋内腫瘍摘出手術を施行し,術翌日から OT介入を開始した.既往歴は肺がんstageⅢA,現在も化学療法継続中.妹と同居し病前ADLは自立.
【作業療法評価:術後7日間】言語面,認知機能・高次脳機能は観察上問題はなかった.心理面に漠然とした不安・焦燥感を抱 えていた.身体機能面では運動麻痺・感覚障害は認めず,ICARS18点で測定障害,企図振戦,体幹失調を認めた.ADLはFIM81点(運動48点/認知33)で,食事,整容自立,更衣軽介助,トイレ動作は支持物使用で自立していた.
【経過】Ⅰ期:作業の獲得に向けた離床期では術後早期より全身状態の把握,リスク管理に留意しながら 徐々に離床を進めた.術後7日目には嘔気や眩暈は軽減し,座位でのADLは概ね自立した.CLからは「一人だと不安です.家に帰って元の生活ができますか」との訴えがあった.
Ⅱ期:炊事に焦点を当てた時期では不安や焦燥感に対しADOCを用いて目標共有を図った.特に重要度の高い作業に炊事が挙げられ,「炊事は毎日やるものだから大切ですね.家に帰った時にできるか不安です」との訴えがあった.術後18日目より炊事の再獲得に向けて介入 した.実動作は調理計画,準備,調理動作,後片付けの4つの工程に分けて実施した.先輩OTRの指導の下,AMPSに基づいた分析を行うと,全体的に作業遂行は可能であるが,調理動作において軽度の緩慢さや拙劣さを認めた.
【結果】心理面は漠然とした不安や焦燥感の改善を認め,失調症状はICARS3点に改善した.ADLはFIM123点(運動88点/認知35)で病棟内自立となった.AMPSは運動技能・プロセス技能共に 1.7.CLからは「家でもできる自信がつきました.最初は妹と一緒にやってみます」との訴えがあった.
【考察】評価上は作業遂行に必要な心身機能は一定以上保たれていたが,AMPSを用いた評価で作業遂行の質に低下がみられた.本事例を通して作業療法プロセスを通して評価・介入することで,担当OTが気付けなった炊事における作業遂行の質を評価・介入していくことができ主婦業復帰に繋がったと考える.