講演情報

[10301-04-01]認知症により強い介助拒否がある患者に対して作業の工夫や環境設定により介助拒否が軽減した症例

*篠原 彩希1、宇都宮 裕人1 (1. イムス横浜東戸塚総合リハビリテーション病院)

キーワード:

認知症、コミュニケーション、介護負担

【初めに】
 活動に対する取り組み方尺度(以下,ASEA)は様々な既存評価の適応外とされる中等度から重度認知症患者の能力値を正確に判断できるとされている.今回,回復期病棟で認知機能に日差があり,介助拒否が強い症例に対しASEAを用いて発動性を高める活動の提供,環境設定を行った結果,周辺症状が減少し活動への取り組み方にも変化が見られ,介助量の軽減が図れたため,以下に報告する.症例の家族より同意を得ている.
【症例紹介】
 A氏80歳代男性.自宅で妻・娘と3人暮らしをしていたが,徐々にADL・認知機能の低下がみられ,妻の介助のもと生活をしていた.既往の脳梗塞後遺症で失語症,構音障害や周辺症状もあり,コミュニケーションや介助に難渋していた.
【OT評価】
 FIMは29点(上衣更衣:2点,トイレ:2点).認知機能はMMSEは拒否あり精査困難であった.CTSDは9/30点.周辺症状はBPSD+Q は44/135点で介助に対する拒否・暴力,徘徊が見られた.ASEAでは,午前中の更衣は14/20点で午後は9/20点と日差があり,午前中の方が発動性は低いが介助拒否がないため関わりやすい状況であった.余暇活動では動画視聴が16/20点で評価した作業の中で最も取り組みが良く,他の活動に関しても午前中の方がASEAの点数が良い結果だった.
【介入】
 拒否が少なく,活動に取り組みやすい午前にOT介入時間を固定し,ADL訓練の定着を図ることとした.具体的に,上衣更衣では被り着で行うことを定着した.上肢を誘導しながら袖を通す介助,介助者が袖口を抑えた中での袖通し,動作の定着が図れたら徐々に声かけのみで実施するなど段階付けて介入した.その上で,症例の活動の取り組みがよい動画視聴から実施して,症例の意欲を引き出した上でADL支援を実施した.
【結果】
 FIMは47点に向上した(上衣更衣:5点,トイレ:3点).MMSEは7点,CTSDは18点に向上した.BPSD+Qは35/135点で介助者への暴行,介助への抵抗は減少した.ASEAでは,日差が減少しており,午前中の更衣は19/20点で午後は13/20点となった.
【考察】
 活動に接する機会が少ないことにより,BPSDが増加すると報告されている.実際に本症例は活動に参加する機会の減少により,BPSDが見られていた.今回,ASEAを用いて本人が参加しやすい環境設定や介助を行ったことで,BPSDの減少,ADL介助量の軽減に繋がったと考える.