講演情報

[10301-04-03]脊髄梗塞後の食事動作改善に向けたに作業療法介入の症例報告

*船津 時代1、駒場 一貴1,2、石坂 麻季1、橋本 直樹1、小山内 綾子3 (1. 昭和大学藤が丘病院リハビリテーション技術部、2. 昭和大学保健医療学部リハビリテーション学科作業療法学専攻、3. 昭和大学藤が丘病院脳神経内科)

キーワード:

脳血管障害、食事、環境整備

【目的】脊髄梗塞は難治の経過を辿るためリハビリテーションの早期介入が重要であると報告がある.C4-5の脊髄梗塞の症例に対し食事に着目して身体機能訓練や環境調整を実施した.結果食事動作向上,満足度向上に至ったため報告する.
【事例紹介】40代男性.両上肢挙上困難,しびれ,後頚部痛出現し救急要請.C4-5の脊髄梗塞,肺塞栓症の診断で入院.4病日目より理学療法7病日目より作業療法開始. マンション4階に独居,入院前ADL自立.会社員で在宅ワークが主であるが月に数回車出勤が必要であった.趣味はサーフィンであった.また本報告に際して症例に説明し同意を得た.
【作業療法評価】MMTは右上肢2~3,左上肢3~4,両下肢4~5,表在覚や運動覚は保たれているが両手部のしびれと腹部の異常感覚が生じていた.肩周囲に右優位の疼痛の訴えがあった.FIMは61/126点,食事は非利き手で自助具を使用し摂取,ラップを開ける等の介助を要していた.食事に対する実行度は0/10,満足度は0/10であった.症例の希望は「利き手でご飯が食べたい」であった.
【介入方針】入院時四肢動作困難でADL全介助であったが,作業療法介入時は介助量が軽減.医師とは梗塞部の再開通により回復が期待できることを共有,ここ数日で介助量が減少したことを踏まえ,日々変化する病態に応じて動作評価を行い,負荷や環境の調整を多職種と連携して実施する方針とした.
【経過】食事動作に着目しながら,7病日目より身体機能評価と筋性疼痛に対するリラクゼーションを実施した.疼痛軽減が見られた13病日目から上肢体幹筋力向上訓練を実施.また上肢機能向上に伴い自助具を用いた食事動作訓練を実施し,介助量軽減を図った.その際利き手の過負荷による疼痛増悪リスクを危惧し,食事時の利き手の使用頻度や機能訓練時の負荷量を日々調整した.筋力向上に伴い19病日目で疼痛を確認しながら筋持久力訓練を開始し,全量摂取を目指した.これらの介入時看護師や理学療法士と情報共有し,ベッド環境,食形態,食事介助量,自助具,右手使用率といった環境設定を実施しADL参加を促した.28病日目回復期病院に転院となった.
【結果】MMTは右上肢4~5,右下肢,左上下肢は5と向上, 両手部のしびれと腹部の異常感覚は残存,肩周囲の疼痛は軽減傾向となった.FIMは124/126点に改善,利き手を使用し食事を全量摂取することが可能となり,食事動作に対する実行度6/10,満足度6/10へ向上した.
【考察】症例は機能訓練や環境調整により,食事動作や病院内ADLの向上が見られた.日々変化する病態に合わせて動作評価を行い,負荷や環境の調整を実施した結果症例の希望と介助量の軽減が達成された.急性期において,作業療法士は病態に応じた負荷や環境の評価,調整を行い患者の改善をサポートする役割が期待される.