講演情報
[10311-15-01]家族との繋がりに着目して介入し実存面のQOL向上となった事例
-IT支援を用いた緩和期でのアプローチ-
*荒木 明日香1、山本 力也1、吉水 真衣子2、木村 亮太1 (1. 聖隷横浜病院 リハビリテーション課、2. 聖隷横浜病院 緩和ケア病棟)
キーワード:
緩和ケア、QOL、家族支援、IT支援
【はじめに】
今回,緩和ケア病棟にて多発転移性脳腫瘍により多彩な症状を呈するクライエント(以下CL)を担当した.離床支援というリハ処方に対し,作業療法(以下OT)としての目標設定を模索し,身体的苦痛の緩和を図ったことを契機に心理社会的苦痛の表出があった.そこで、新たな目標としてIT支援を行った.スマホ操作方法の獲得が一助となり,家族との繋がりを獲得し,QOL向上となったため報告する.今回の発表に際し,書面にて同意を得ている.
【事例紹介】
50代の男性,右利き.診断名は転移性脳腫瘍.病前生活は自立していた.建設関係の契約社員として勤務し,パートナーと生活していた.現病歴はX-1年に右肺上葉腫瘤,右精巣腫瘍の所見があった.X年Y-1月に多発転移性脳腫瘍を認め,γナイフ治療を受けたが,けいれん発作が出現し意識レベルの低下,Best Supportive Care(BSC)方針となった.X年Y月Z日に当院緩和ケア病棟へ入棟した.Z+9日医療施設型ホスピスに退院した.
【OT評価】
意識レベルはJCSⅡ-10,COMは日常会話可能だった.高次脳機能面は観察上,注意機能低下や失語症状がみられたが,記憶機能は比較的保たれていた.身体機能面は,右上肢はMMTで2~3レベル,左上肢はBr.stage上肢Ⅲ手指Ⅳで不随意運動も認めた.感覚機能は両上肢に異常感覚があった.全身状態はPerformance status(PS)4でADLは全介助であった.HOPEは「気分転換のために車椅子に乗りたい」であった.
【OT経過】
リクライニング車椅子へ離床し,気分転換を行っていく中で,「スマホが使えなくなり,返事が返せない」との訴えが表出されるようになった.そこからベッド上でのスマホ操作を練習し,パートナーとのメッセージのやり取りを習得することを目標とし介入した.実際にスマホ操作を評価し,①感覚障害による右上肢の操作性低下に対し,タッチペンの導入とユニバーサルテープでカフと圧痕防止に示指カバーを作成した.②注意機能低下による文字入力困難さに対し,音声入力を導入し反復して練習した.③左上肢の麻痺や不随意運動の影響によるスマホの固定困難さに対し,スマホスタンドを導入し環境調整を行った.
【結果】
身体・高次脳機能面で著変はなかった.スマホの操作はスマホを固定し,タッチペン操作と音声入力を使い分けることで,メッセージのやり取りが可能となった.CLからは「これならパートナーが心配しないように状況を伝えることが出来そうです」とパートナーを想う発言が聞かれた.
【考察】
CLにとってスマホでのメッセージのやりとりは,就業されているパートナーと面会時間外にも繋がることができる必要な手段であったと推察された.IT支援によって新たなスマホ操作の獲得をしたことは家族との繋がりを得て,実存面のQOL向上になったと考える.
今回,緩和ケア病棟にて多発転移性脳腫瘍により多彩な症状を呈するクライエント(以下CL)を担当した.離床支援というリハ処方に対し,作業療法(以下OT)としての目標設定を模索し,身体的苦痛の緩和を図ったことを契機に心理社会的苦痛の表出があった.そこで、新たな目標としてIT支援を行った.スマホ操作方法の獲得が一助となり,家族との繋がりを獲得し,QOL向上となったため報告する.今回の発表に際し,書面にて同意を得ている.
【事例紹介】
50代の男性,右利き.診断名は転移性脳腫瘍.病前生活は自立していた.建設関係の契約社員として勤務し,パートナーと生活していた.現病歴はX-1年に右肺上葉腫瘤,右精巣腫瘍の所見があった.X年Y-1月に多発転移性脳腫瘍を認め,γナイフ治療を受けたが,けいれん発作が出現し意識レベルの低下,Best Supportive Care(BSC)方針となった.X年Y月Z日に当院緩和ケア病棟へ入棟した.Z+9日医療施設型ホスピスに退院した.
【OT評価】
意識レベルはJCSⅡ-10,COMは日常会話可能だった.高次脳機能面は観察上,注意機能低下や失語症状がみられたが,記憶機能は比較的保たれていた.身体機能面は,右上肢はMMTで2~3レベル,左上肢はBr.stage上肢Ⅲ手指Ⅳで不随意運動も認めた.感覚機能は両上肢に異常感覚があった.全身状態はPerformance status(PS)4でADLは全介助であった.HOPEは「気分転換のために車椅子に乗りたい」であった.
【OT経過】
リクライニング車椅子へ離床し,気分転換を行っていく中で,「スマホが使えなくなり,返事が返せない」との訴えが表出されるようになった.そこからベッド上でのスマホ操作を練習し,パートナーとのメッセージのやり取りを習得することを目標とし介入した.実際にスマホ操作を評価し,①感覚障害による右上肢の操作性低下に対し,タッチペンの導入とユニバーサルテープでカフと圧痕防止に示指カバーを作成した.②注意機能低下による文字入力困難さに対し,音声入力を導入し反復して練習した.③左上肢の麻痺や不随意運動の影響によるスマホの固定困難さに対し,スマホスタンドを導入し環境調整を行った.
【結果】
身体・高次脳機能面で著変はなかった.スマホの操作はスマホを固定し,タッチペン操作と音声入力を使い分けることで,メッセージのやり取りが可能となった.CLからは「これならパートナーが心配しないように状況を伝えることが出来そうです」とパートナーを想う発言が聞かれた.
【考察】
CLにとってスマホでのメッセージのやりとりは,就業されているパートナーと面会時間外にも繋がることができる必要な手段であったと推察された.IT支援によって新たなスマホ操作の獲得をしたことは家族との繋がりを得て,実存面のQOL向上になったと考える.