講演情報

[10311-15-03]パラスポーツを通じて集団への参加・関与を支援できた一事例

*吉田 祐太1、安藤 岳彦2 (1. 医療法人社団佑樹会 介護老人保健施設 めぐみの里、2. 医療法人社団佑樹会 介護老人保健施設 ひまわりの里)

キーワード:

スポーツ、参加、地域活動

【はじめに】
ビギナー向けの車いすバスケスクールの運営に作業療法士として携わり,スポーツを楽しむ層のはじめの一歩を支援している.今回,パラスポーツを通じてはじめの一歩を支援できた事例を報告する.
発表に際し,保護者より書面にて同意を得ている.
【事例紹介】
10歳(小学校4年生),男児,知的障害(療育手帳A2),特別支援学級に在籍.1歳児健診で座位保持困難を指摘される.現在,放課後等デイサービスを月2回利用している.言語は単語レベルでジェスチャーによる表出が多い.癇癪や叩く,大声をあげるなどの行動障害あり.スクールには保護者と兄の付き添いで参加.
【評価】
保護者への面接:「不安と期待が半分.周囲に迷惑をかけないか心配」と,安心して皆と過ごす中で将来的に本人の力を発揮して成長できることを願っていた.
事例の観察:競技用車いすに興味を示さず拒否的な反応.表情はこわばり,不安や恐怖心を感じている様子.集団には参加せず,コート隅で過ごしている.
【経過】
安心して参加できること,やりたいことに取り組む姿勢が持てることの2点を目標として保護者と共有.
強制しないことを前提にできることから開始し,達成できたら支援を減らして成功体験を得られるよう工夫した.環境面では刺激の少ないコート隅を設定.事例は小さいボッチャボールに興味を示したためこれを使い,ボールに触れる,捕球する,狙ったところに投げる練習を実施.2回目の参加では癇癪を起こさず,コートに居続けることができた.また,保護者が競技用車いすに乗っている姿を見せることで徐々に競技用車いすにも興味を示すようになり,触れたり握ったり動かしてみるなどの行動がみられるようになった.
最終的には競技用車いすに乗って集団に加わるに至った.
【再評価】
保護者への面接:「楽しそうに参加できるとは思わなかった.一緒に遊ぶ姿を見ると成長を感じる」
事例の観察:コート内でボール投げや車いす操作,集団への参加ができるようになった.
【考察】
パラスポーツはモノとルールを工夫でき,誰でも一緒に楽しむことができる.本事例では,本人と保護者の目標の実現に向け,面接・観察と段階的な参加促進を行った.本人の興味・不安について適宜,保護者と共有し協働的に介入できたことで,不安や恐怖心を軽減し行動を引き出すことができたものと考える.
今回は面接・観察による評価であったが,今後は生活行為向上マネジメントなどのツールを利用し可視化を行うことで,参加に悩む方に対してスクール全体での協働的介入に拡大できるものと考える.スクール活動を通じて,社会参加のきっかけ作りをさらに進めたい.