講演情報

[10311-15-04]発達障害学生に対するデイケアの取り組み
―学生・家族プログラムの実施―

*川畑 啓1、水野 健1,2、今井 美穂1、五十嵐 美紀1,2、横井 英樹1,2 (1. 昭和医科大学附属烏山病院、2. 昭和医科大学発達障害医療研究所)

キーワード:

自閉スペクトラム症/障害、学生、家族、精神科デイケア

【はじめに】
当院では成人を対象とした発達障害専門プログラムを実施しており,効果が認められている.一方,同プログラムを発達障害の診断を受けた高等教育機関の学生(専門学校,大学等)に実施すると,社会経験の不足により共感体験を積みにくいことや,必要性に迫られていないことによるモチベーションの低さなど,若年層ならではの課題がみられた.そこで発達障害学生に対する支援手法を明らかにするために,ニーズ調査を実施し,その結果をもとに学生プログラムを作成・実施し,効果を検証した.
【方法】
発達障害の診断のある当事者(昭和大学,晴和病院に通院中の学生,中退・卒後10年以下)および家族へ支援ニーズなどのアンケート調査の結果をもとにプログラムを作成・実施した.プログラム参加前後で質問紙および参加者のコメントと転帰調査で効果検証を行った.当院の倫理審査委員会の承認を受けて実施した.(承認番号:B-2018-003)
【結果】
ニーズ調査[回収数379(本人157/家族 222)]では大学時代に3割が中退・休学を経験しており,うち55.6%が引きこもり経験があった.学生相談室利用は半数にとどまった.必要とされる支援内容については,当事者・家族ともにコミュニケーション・就労支援・社会性の獲得が上位であった.これらの結果から,全11回のプログラムを作成・実施を行った.自己理解編,コミュニケーショントレーニング編,就職活動編で構成されるものとした.プログラムにはこれまで4機関(医療機関2,大学2)で112名が参加した.参加前後で履修状況が安定し,学生相談や保健センターなどの学内支援に繋がり,アルバイトやインターン,就労継続支援事業所など就労へ向けての活動や社会との接点を持つ行動が増加した.「困っているのは自分だけではなかった」などと共感のコメントが得られた.家族を対象としたプログラムも作成・実施した.家族の精神的健康度は有意に改善し,高い満足度が得られた.前向きなコメントが得られた一方,不安が高まった家族もいた.
【考察】
同質の集団で知識やロールプレイを用いたスキルの獲得とディスカッションを行うプログラムの構成・形態は,共感体験と共に自己理解や認知の変化を促すのに有効であったと考えられる.また,全11回のプログラムを通して同年代と意見交換したり楽しんだりすること,支援者と関わる経験を積むことで,他者や社会と関わることへの抵抗感を減らしている可能性がある.家族に関しては,当事者の診断された時期や学年による課題の変化(修学,対人関係,就活)など家族が抱える課題は多様であり,柔軟性と継続的な支援が必要と考えられた.支援の入り口としての医療を位置づけ,医療-大学間で連携することで切れ目のない支援が可能となる.今後,学年や診断時期に応じた内容を検討する等,プログラムの精査と継続的な効果検証が必要である.