講演情報
[10316-20-01]上肢の使用中に伴うしびれと痛みの不快感軽減により上肢機能とADL向上を認めた一例
*佐藤 光1、宇都宮 裕人2、海藤 公太郎2 (1. 済生会東神奈川リハビリテーション病院 セラピスト部、2. IMSグループ イムス横浜東戸塚総合リハビリテーション病院)
キーワード:
しびれ、痛み、上肢機能
【はじめに】
脊髄損傷では77%が痛みや不快な感覚があると報告されており,訓練進捗やADLの阻害因子にもなる為,介入する重要性は高い.今回,頚髄損傷により手指の随意性は保たれていたが,しびれと痛みによる不快感を訴え,上肢機能訓練に対して消極的な発言と行動を認めた症例を担当した.経皮的電気刺激(TENS)と上肢機能訓練を実施した結果,しびれと痛みによる不快感の軽減に伴い上肢機能とADL向上を認めた為,報告する.
【事例紹介】
80歳代の男性.病前のADL自立.C3-6頸椎の椎弓形成術を施行し,25病日目に当院へ入院.ASIAはグレードC.上肢機能はARATが右23点,左30点,BBTは右21個,左21個.感覚機能はSWTで右示指・中指3.22,左示指・中指3.61.SFMPQ2は左右:神経障害性の痛み3点.両上肢の使用中に伴う不快感はNRS10であり,両手指にしびれと痛みを認めた.認知機能はMMSE-J30点.ADLはFIMの運動項目37点,認知項目35点.症例は「チクチクジンジンするしびれと痛みがあって指が使えないからどうにかしてほしい」と訴えた.尚,本報告は症例から書面にて同意を得ている.
【介入経過】
症例は手指の随意性は保たれていたが,しびれや痛みが生じていたことで「指先にしびれと痛みの感覚があって不快で手のリハビリをしたくなくなる」と訴え,上肢機能訓練に対して消極的な発言と行動を認めた.そこで,しびれと痛みの訴えが強く聞かれた示指・中指に対してTENSを実施したところ,症例から「ジンジンチクチクする感じが減ったからこれならやれそう」と聞かれNRSは3へ軽減した.その為,介入では1時間TENSを併用しつつ巧緻性を伴う上肢機能訓練を実施する方針とした.また,介入前後にNRSにてしびれと痛みに対する評価をし,持続時間は症例に記録してもらい経過を追った.しびれと痛みが軽減した状態で上肢機能訓練を実施した結果,上肢機能の向上に伴い,食事・整容・更衣動作が可能となった.
【結果】
ARATは右51点,左55点,BBTは右40個,左38個.SFMPQ2は左右:神経障害性の痛みが1点へ軽減し,NRSは左右0となった.FIMは運動項目76点となり,ADLは修正自立にて可能となった.
【考察】
神経障害性疼痛などの痛みに対して,TENSによる非薬物療法での鎮痛効果が報告されている. また,人は痛みを伴う可能性がある運動に対して活動を実施することができず,回避的な行動をとることが報告されている.症例はしびれと痛みから不快感が生じ,訓練への消極的な発言や行動を認め,上肢機能訓練に取り組めない可能性があった. そこで,しびれと痛みに対してTENSを使用することにより,回避的行動が抑制され,しびれと痛みが軽減した中での反復的な上肢機能訓練が可能となり,上肢機能とADL向上に繋がったのではないか.
脊髄損傷では77%が痛みや不快な感覚があると報告されており,訓練進捗やADLの阻害因子にもなる為,介入する重要性は高い.今回,頚髄損傷により手指の随意性は保たれていたが,しびれと痛みによる不快感を訴え,上肢機能訓練に対して消極的な発言と行動を認めた症例を担当した.経皮的電気刺激(TENS)と上肢機能訓練を実施した結果,しびれと痛みによる不快感の軽減に伴い上肢機能とADL向上を認めた為,報告する.
【事例紹介】
80歳代の男性.病前のADL自立.C3-6頸椎の椎弓形成術を施行し,25病日目に当院へ入院.ASIAはグレードC.上肢機能はARATが右23点,左30点,BBTは右21個,左21個.感覚機能はSWTで右示指・中指3.22,左示指・中指3.61.SFMPQ2は左右:神経障害性の痛み3点.両上肢の使用中に伴う不快感はNRS10であり,両手指にしびれと痛みを認めた.認知機能はMMSE-J30点.ADLはFIMの運動項目37点,認知項目35点.症例は「チクチクジンジンするしびれと痛みがあって指が使えないからどうにかしてほしい」と訴えた.尚,本報告は症例から書面にて同意を得ている.
【介入経過】
症例は手指の随意性は保たれていたが,しびれや痛みが生じていたことで「指先にしびれと痛みの感覚があって不快で手のリハビリをしたくなくなる」と訴え,上肢機能訓練に対して消極的な発言と行動を認めた.そこで,しびれと痛みの訴えが強く聞かれた示指・中指に対してTENSを実施したところ,症例から「ジンジンチクチクする感じが減ったからこれならやれそう」と聞かれNRSは3へ軽減した.その為,介入では1時間TENSを併用しつつ巧緻性を伴う上肢機能訓練を実施する方針とした.また,介入前後にNRSにてしびれと痛みに対する評価をし,持続時間は症例に記録してもらい経過を追った.しびれと痛みが軽減した状態で上肢機能訓練を実施した結果,上肢機能の向上に伴い,食事・整容・更衣動作が可能となった.
【結果】
ARATは右51点,左55点,BBTは右40個,左38個.SFMPQ2は左右:神経障害性の痛みが1点へ軽減し,NRSは左右0となった.FIMは運動項目76点となり,ADLは修正自立にて可能となった.
【考察】
神経障害性疼痛などの痛みに対して,TENSによる非薬物療法での鎮痛効果が報告されている. また,人は痛みを伴う可能性がある運動に対して活動を実施することができず,回避的な行動をとることが報告されている.症例はしびれと痛みから不快感が生じ,訓練への消極的な発言や行動を認め,上肢機能訓練に取り組めない可能性があった. そこで,しびれと痛みに対してTENSを使用することにより,回避的行動が抑制され,しびれと痛みが軽減した中での反復的な上肢機能訓練が可能となり,上肢機能とADL向上に繋がったのではないか.