講演情報

[10316-20-05]主介助者である妻に対し退院に向けた情報共有を重要視し,自宅退院に至った重度片麻痺症例

*藤平 夏鈴1、水野 亘1、山本 潤2、青野 宏治3 (1. JA神奈川県厚生連 伊勢原協同病院 リハビリテーション室、2. 国際医療福祉大学 小田原保健医療学部 作業療法学科、3. JA神奈川県厚生連 伊勢原協同病院 リハビリテーション科)

キーワード:

片麻痺、家族支援、退院支援

[はじめに]
転帰先の決定には,家族と関わり,退院後のビジョンを共有することが重要である(杉浦ら,2014)と報告されているが,その具体的な取り組みに関する報告は少ない.そこで,今回右被殻出血の重度片麻痺症例に対し,家屋調査,家族への介助指導を実施した結果,自宅退院に繋げられたため,その具体的な内容を報告する.尚,発表に関して症例より書面にて同意を得ている.
[事例紹介]
症例は70代男性.右被殻出血を発症し,第34病日に回復期リハビリテーション病棟に入院した.第108病日のICで自宅退院に決まった.作業療法評価から重度の運動感覚障害を認めたが認知機能は保たれていた.またFunctional Independence Measure54/126点で,起居動作,トイレ動作共に中等度介助であった.自宅は一戸建て,70代の妻と二人暮らしで,妻は介助に協力的だが不安もあった.
[自宅退院のための情報共有]
第133病日より家屋調査と妻への介助指導を開始した.家屋調査では,排泄動作で元々所有するPトイレに加えて,L字柵を導入することを提案した.介助指導では,実施前に担当PTと教示方法の統一を図り,担当PTの指導にも同席した.その際に妻より起居動作,ベッド上での上方移動の介助が不安であると発言があり,Pトイレの介助方法に加え,その2つの動作も指導することにした.ベッド上での上方移動にはスライディングシートを使用したが,時間,体力の負荷が大きく現実的ではなかった.そのため,担当PTに再度指導を依頼しつつ,妻の体格にあった介助方法を提案することを意識した.トイレ動作に対しては介助方法とその手順を記載したマニュアルを作成し,それを用いて介助指導を行った.文章表現等の分かりにくいところを聴取し,修正したマニュアルを退院時に渡した.各動作の介助指導後に毎回介助に対する妻の不安感を共有する機会を作った.思った通りにできない,手順が覚えられないことにもどかしさを感じていたため,前回から改善した点を伝え不安の軽減に努めた.
[結果]
介助指導,マニュアルを通して介助方法を共有したことで,妻の介助下でも起居動作,トイレ動作共に軽介助レベルで可能になり,自宅退院となった.また妻からは介助に対し不安感があるという発言が減った.
[考察]
平野ら(2015)は入院時から実践的な家族指導を実施することが,在宅復帰後の患者家族の不安感軽減に繋がると述べている.家族指導では,介助方法だけではなく,妻の負担が減るように体の使い方も伝えた.また可能な限り妻と関わる時間を作り,介助に対する具体的な不安感を共有することで,退院後の生活を想像できるように働きかけた.さらにマニュアルを作成して渡すだけではなく,その内容が再現できるか一緒に確認し,妻と介助方法について共有したことで自宅退院に繋げられたと考える.