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[26]洋上風力発電に伴う地域共生基金をめぐる当事者の制度的正当性海域及び陸域の当事者が有する権利利益の法解釈学的分析

○小林 寛1、樋野 公宏2、浅見 泰司3 (1. 経済産業省/東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻、2. 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻、3. 東京大学空間情報科学研究センター)
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キーワード:

再エネ海域利用法、法的三段論法、政策規範、損失補償、代償措置、景観利益

洋上風力発電に伴う地域共生基金の地域内での配分協議に関して、海域と陸域の当事者それぞれの制度的正当性を分析し、協議を進める際の共通認識となるべき事項について、次の内容を政策規範として提示した。
[1] 制度的正当性は、「原告適格性」(法律上保護される権利利益を持ち、海域に風車が設置されることで影響を受けること)と「損失の不可避性」(社会経済的な損失が避けられないこと)の要件から構成される。ある当事者の権利利益が両方の要件を満たすならば、その者は代償措置としての共生策の前提となる、基金の配分に関与する制度的正当性を有することを意味する。
[2] 海域では、漁業に関する権利利益が要件に該当する。陸域では、地域住民が有する景観利益が法律上保護に値し、基礎自治体は住民が有する景観利益を代表する立場として要件に該当し得る。
[3] 最高裁判例の見解を考慮すると、景観利益が住民の共同利益として公的に形式化されていない場合には、陸域の景観利益よりも海域の漁業に関する権利利益(経済的実態を持つ財産的権利)の方がより配慮されるべきと解釈できる。