講演情報
[113]斜面市街地における移動手段の成立可能性および持続性に関する研究-長崎市斜面移送システムを中心に-
○佐々木 道啓1、黒瀬 武史2 (1. 東京大学 工学系研究科 都市工学専攻、2. 九州大学大学院 人間環境学研究院 都市・建築学部門)
キーワード:
斜面市街地、高齢者、斜面移送システム、人口減少都市、長崎市
本研究では、長崎市の斜面市街地におけるアクセシビリティ改善事業を対象として、都市縮退期における斜面地モビリティの成立可能性および持続性について議論する。既往の取り組みを、生活道路の整備と斜面地モビリティの整備という2つのアプローチに分類し、人口動態や土地利用の定量分析に加え、利用者へのアンケート調査や長崎市議会会議録の分析を通じて、両手法の長期的成果を比較した。生活道路の整備は都市機能の継続には寄与したものの、長い事業期間と高い事業費を要した。一方、斜面地モビリティのうち、特に斜面移送システムは費用対効果に優れ、短期間での整備が可能であったが、斜面市街地の維持には限定的な効果しか示さなかった。しかしながら、利用者へのアンケート調査では、斜面移送システムは、特に高齢の利用者の日常生活や福祉サービスを支えていることが確認された。近年、斜面地モビリティの整備は進められていないが、道路整備の長期化の課題や斜面移送システムに対する利用者の評価を踏まえ、人口減少期の市街地周縁部に位置する斜面市街地の持続性に寄与する斜面地モビリティのあり方を再評価する必要がある。
