講演情報
[164]旧法成立前の東京周辺における工業地帯の創出理念-東京府知事井上友一による東部低地の改良事業-
○村上 善明1、秋田 典子2 (1. 千葉大学大学院園芸学研究科、2. 千葉大学大学院園芸学研究院)
キーワード:
工業地帯、工場、労働者、社会改良、用途地域制
本研究は、旧都市計画法制定前に東京府知事だった社会官僚井上友一の工業政策に着目して、東京東部低地における住工混在空間の課題の根源を明らかにするものである。1910年代、井上は、都市に新たに出現した工場と労働者のため、東部低地において「工業地帯の改良」と「工場の改良」を試みた。これは井上の防貧理念に基づく、工場と労働者の「独立自営」を促すための基盤整備と、工場主による福利増進の啓蒙であり、工業村を理想としていた。しかしそれは地方では成立しても、大都市に成長しつつあった東京周辺では成立しえないものであり、工場、労働者、東部低地の課題は解決されなかった。井上によって進められた工業政策は、その後の地域指定の根拠となり、今日の東部低地を規定した。
