講演情報

[G-P-14]亜熱帯島嶼における堆積岩の風化過程:鉱物組合せと物性の変化

*筬島 聖二1、山口 季彩4,2、吉田 孝紀3 (1. 信州大学大学院 総合医理工学研究科、2. 信州大学大学院 総合理工学研究科、3. 信州大学理学部、4. 現所属:住友金属鉱山株式会社)
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キーワード:

岩石風化、亜熱帯島嶼、砂岩、灼熱減量、かさ密度、土粒子密度

はじめに
岩石の化学風化作用は気候条件(気温,降水量)の影響を受ける(例えばStrakhov,1967).亜熱帯島嶼である沖縄島北部には,先新第三系に属する堆積岩類が分布しており,地表付近では亜熱帯特有の高温多雨の環境下で強い風化作用が進行し,最終的に国頭マージと呼ばれる土壌へと変化する.今回,沖縄島北部において上部白亜系名護層の砂岩を対象に,新鮮部から風化土壌に至る過程をLOI値と主要元素組成,鉱物組合せの変化から検討し,風化区分の作成を試みた.
地質概要
沖縄島北部に分布する先新第三系は,下部白亜系の与那嶺層,上部白亜系の涌川層と名護層,始新統の嘉陽層に区分される.このうち名護層は砂岩及び砂岩粘板岩互層を挟有する泥質千枚岩と粘板岩を主体とし,泥質片岩を伴う(中江ほか,2010).これらの堆積岩類は地下深部の新鮮部では暗灰色を呈するが,地表付近では赤色~黄色の厚い風化殻を形成する.筆者らは,沖縄島北部の大宜味村南部から東村の丘陵地帯に分布する砂岩を名護層に属するものと考え研究対象とした.
研究手法
研究対象とした名護層砂岩の露頭は,大宜味村と東村の境界にある津波山から北東約500mの比高約10mの切土斜面と,その南側に続く東村慶佐次地区の渓流とした.しかしこの近傍では新鮮部から弱風化部が露出する露頭を確認できないため,弱風化部に相当する岩石については東村平良地区海岸から,新鮮部については,岩相が類似する嘉陽層砂岩を国頭村宇嘉地区海岸から採取した.渓流では切土露頭と海岸露頭の中間的な風化程度を示す試料を採取した.以上より,新鮮部から強風化部に向けて,国頭村宇嘉地区→東村平良地区→東村慶佐次地区渓流→大宜味村切土露頭とつながる一連の砂岩の風化系列を設定した.切土露頭では土壌硬度試験を実施した.それぞれの露頭から採取した試料は,薄片観察とX線粉末回折法による鉱物の同定のほか,土粒子密度試験,全岩分析,灼熱減量試験を実施した.
結果
切土露頭では,赤色~黄色の強風化した中粒砂岩が,凝灰岩の薄層を挟在している.風化砂岩の色調は,露頭の頂部から3.5mまでは黄色(10YR 6/6),3.5mより下部では赤色(5R 5/7)を基調とする.土壌硬度は最上部では約25mm,下部に向かうに従い増加し,最下部では約30mmに達した.
鏡下観察およびX線粉末回折では,新鮮部や中風化部の露頭では石英,岩片(火山岩起源),斜長石,カリ長石,白雲母が観察された.これらの初生鉱物等は,中風化部から強風化部において,長石類や岩片が次第に粘土鉱物や含水酸化物に変化していくことを鏡下観察およびX線粉末回折で確認した.具体的には,切土露頭では頂部から5.3mに挟在される凝灰岩層より下部では石英,白雲母,カオリナイト,カリ長石が認められるが,凝灰岩層より上部ではカリ長石と白雲母の消失とイライト/スメクタイト混合層の生成が,最上部では白雲母の消失と針鉄鉱の生成が認められた.
新鮮部から強風化部へ向かい,かさ密度は2.7から2.2g/cm3へと減少する傾向があるが,土粒子密度は2.6~2.75g/cm3の間にあり,風化進行との明瞭な関係は認められなかった.また灼熱減量試験では,新鮮部より強風化部へ向かってLOI値は1.65から7.45(wt%)と順次増加した.Tiで規格化した主要元素の値は,風化進行に伴いSi,Al,Fe,Mn,Mg,K,Pが順次減少し,特にNaとCaは切土露頭ではほぼ消失していた.Mnは切土露頭の最下部で局所的に濃集した.
考察
沖縄島北部に分布する名護層砂岩では,初生的に含まれる長石類及び岩片が風化作用の進行に伴い粘土鉱物や針鉄鉱などの含水酸化物に変化することで,最終的に風化土壌へと変化する.また,岩盤内部では節理の開口や微細な割れ目の発達と,その割れ目を充てんする粘土鉱物等の流失による空隙増加も予想される.風化進行に伴い土粒子密度は変化に乏しいもののかさ密度のみは減少するという現象は,空隙の増加によるものと考えられる.一方,風化進行に伴うLOI値の増加の原因は,加熱による粘土鉱物や含水酸化物内部の結晶水の損失と考えられる.切土露頭における風化進行に伴う土壌硬度の減少は,長石類や岩片が軟質な粘土鉱物や含水酸化物に変化したことと,空隙の増加で説明できる.
沖縄島の堆積岩風化度をLOI値で評価した事例はあるが(宮城ほか,2010),このような構成鉱物と複数の岩石物性の変化は,風化度を定量化する上で有効な複合指標として利用できる.
引用文献
宮城ほか,2010,琉球大教育紀要,75,253-270.
中江ほか,2010,20万分の1地質図幅「与論島および那覇」,産総研地調査センター.
Strakhov, 1967, Principles of Lithogenesis, Vol. 1. Oliver & Boyd.

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