講演情報
[G-P-15]貝形虫群集及び殻のMg/Ca比に基づく新潟県南魚沼市四十日地域における鮮新統岩之沢層の古環境復元
*花田 凪翔1、山田 桂1、中 裕1、宇都宮 正志2、岡村 慶3 (1. 信州大学、2. 産業技術総合研究所、3. 高知大学)
キーワード:
鮮新世、貝形虫、古環境復元
はじめに 中期~後期鮮新世の日本海は,現在よりも低温の水塊が浅海帯においても卓越していた(Yamada et al., 2005;Irizuki et al., 2007)ことが指摘されてきた.そのため,外洋水は津軽海峡から日本海に流入していたと推察されている(Itaki, 2016).しかしながら,同時期に南方系の軟体動物化石の産出報告もあり(e.g., 天野ほか,2009),ごく表層では南方海峡から流入する暖水の影響があった可能性も指摘されるなど,当時の日本海の水塊構造については議論が続いている.近年では,微化石殻中の微量元素を用いた定量的な古水温復元法が確立され,日本海でも海底コア試料を対象とした海底水温の復元が進められている.しかし,暖水の影響が及んだ可能性のある浅海域における定量的な古水温復元例は限られている.また,鮮新世は現在と類似した気候条件を有し,中期鮮新世温暖期(mPWP)を含む気候変動の解明は,将来の気候変動予測の観点からも重要である(Haywood et al., 2016).そこで本研究では,貝形虫殻のMg/Ca比を用いて,中期〜後期鮮新世における日本海浅海域の古水温変化を定量的に復元することを目的とした.
調査地域・試料 本研究では,新潟県南魚沼市の魚沼丘陵東部に分布する鮮新統岩之沢層を対象とした.四十日川下流域では岩之沢層が連続的に露出し,貝形虫化石の産出も報告されている(中ほか,2018).岩之沢層は主に塊状の灰色砂質シルト岩からなり,側方にせん滅する礫岩層や二枚貝やカキ化石を伴うことから,チャネルの影響を受けた内湾環境で堆積したと推定される.岩之沢層の堆積年代は石灰質ナンノ化石や火山灰層より3.66–2.75 Maとされている(e.g., 天野ほか,2009).また,本研究において石灰質ナンノ化石を再度検討し,Reticulofenestra spp.とCoccolithus pelagicusの相対産出頻度より調査ルートはDatum A より下位だと考えられるが,それ以上の制約は今のところ難しい.調査地域内の四十日川下流域から,61試料を採取し,そこから浅海域に生息する貝形虫Cytheropteron sawanense,中層〜深海域に生息するKrithe属,浅海域〜陸棚斜面に生息するLoxoconcha属の破損していない成体殻を抽出した.四十日川下流域で採取した61試料のうち,C. sawanenseは27試料,Krithe属は1試料,Loxoconcha属は6試料から得られた.各試料から得られた同一タクサの殻1〜4個をまとめてICP-AESを用いてMgとCa濃度を測定しMg/Caを求めた.
結果・考察 C. sawanenseの浅海域の古水温はYamada et al.(2014)の換算式より0.8–24.2 ℃の値を示し,平均値は8.9 ℃となった.各試料の値にばらつきがあるものの,調査ルート下部では主に約5–10 ℃で推移するのに対し,最上部の約2.5 Ma以降では0〜25 ℃の変動幅を示し,上部では相対的に浅海帯の水温変動が大きかった可能性が示された.Krithe属の古水温は1試料のみから得られ,Elmore et al.(2012)の換算式より9.8 ℃であった.この値はC. sawanenseが示す水温とほぼ同じであった.Loxoconcha属に基づく古水温はCronin et al.(2005)の換算式より10.6–16.3 ℃を示し,平均値は14.0 ℃となった.下部では14 ℃以下,上部では16 ℃以上を示した.同じ層準のC. sawanenseに基づく古水温と比較すると,Loxoconcha属による水温はいずれもやや高い値を示す傾向が見られた.今後は群集解析に基づく古環境変遷と対比し,中期〜後期鮮新世における日本海浅海域の古水温変動を検討する.
【引用文献】天野ほか,2009,地質雑,115(11),597-609; Cronin et al., 2005, Palaeo3., 225(1-4), 14-67; Elmore et al., 2012, Geochem, Geophys, Geosystems, 13(9); Haywood ey al., 2016, Nature communications, 7(1), 10646.; Irizuki et al., 2007, Palaeo3., 245(3-4),421-443; Itaki, T., 2016, Progress in Earth and Planetary science,3(1),1-21; 中ほか,2018,日本地質学会第125年学術大会講演要旨,557; Yamada et al., 2005, Palaeo3.,220(3-4),255-271; Yamada et al., 2014, Palaeo3., 410, 244-254.
調査地域・試料 本研究では,新潟県南魚沼市の魚沼丘陵東部に分布する鮮新統岩之沢層を対象とした.四十日川下流域では岩之沢層が連続的に露出し,貝形虫化石の産出も報告されている(中ほか,2018).岩之沢層は主に塊状の灰色砂質シルト岩からなり,側方にせん滅する礫岩層や二枚貝やカキ化石を伴うことから,チャネルの影響を受けた内湾環境で堆積したと推定される.岩之沢層の堆積年代は石灰質ナンノ化石や火山灰層より3.66–2.75 Maとされている(e.g., 天野ほか,2009).また,本研究において石灰質ナンノ化石を再度検討し,Reticulofenestra spp.とCoccolithus pelagicusの相対産出頻度より調査ルートはDatum A より下位だと考えられるが,それ以上の制約は今のところ難しい.調査地域内の四十日川下流域から,61試料を採取し,そこから浅海域に生息する貝形虫Cytheropteron sawanense,中層〜深海域に生息するKrithe属,浅海域〜陸棚斜面に生息するLoxoconcha属の破損していない成体殻を抽出した.四十日川下流域で採取した61試料のうち,C. sawanenseは27試料,Krithe属は1試料,Loxoconcha属は6試料から得られた.各試料から得られた同一タクサの殻1〜4個をまとめてICP-AESを用いてMgとCa濃度を測定しMg/Caを求めた.
結果・考察 C. sawanenseの浅海域の古水温はYamada et al.(2014)の換算式より0.8–24.2 ℃の値を示し,平均値は8.9 ℃となった.各試料の値にばらつきがあるものの,調査ルート下部では主に約5–10 ℃で推移するのに対し,最上部の約2.5 Ma以降では0〜25 ℃の変動幅を示し,上部では相対的に浅海帯の水温変動が大きかった可能性が示された.Krithe属の古水温は1試料のみから得られ,Elmore et al.(2012)の換算式より9.8 ℃であった.この値はC. sawanenseが示す水温とほぼ同じであった.Loxoconcha属に基づく古水温はCronin et al.(2005)の換算式より10.6–16.3 ℃を示し,平均値は14.0 ℃となった.下部では14 ℃以下,上部では16 ℃以上を示した.同じ層準のC. sawanenseに基づく古水温と比較すると,Loxoconcha属による水温はいずれもやや高い値を示す傾向が見られた.今後は群集解析に基づく古環境変遷と対比し,中期〜後期鮮新世における日本海浅海域の古水温変動を検討する.
【引用文献】天野ほか,2009,地質雑,115(11),597-609; Cronin et al., 2005, Palaeo3., 225(1-4), 14-67; Elmore et al., 2012, Geochem, Geophys, Geosystems, 13(9); Haywood ey al., 2016, Nature communications, 7(1), 10646.; Irizuki et al., 2007, Palaeo3., 245(3-4),421-443; Itaki, T., 2016, Progress in Earth and Planetary science,3(1),1-21; 中ほか,2018,日本地質学会第125年学術大会講演要旨,557; Yamada et al., 2005, Palaeo3.,220(3-4),255-271; Yamada et al., 2014, Palaeo3., 410, 244-254.
コメント
コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン
