講演情報

[G-P-22]2026年4月に発生した長野県北部の被害地震と「揺れやすさマップ」の評価

*津金 達郎1、宮澤 洋介2、信州大学 震動調査グループ (1. 信州大学理学部、2. 北陽建設)
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キーワード:

揺れやすさマップ、盆地端部効果、地形効果、糸魚川-静岡構造線断層帯北部区間、神城断層、松本盆地東縁断層

はじめに
2026年4月18日に長野県大町市,木崎湖の北東で2度の地震が発生した(美麻地震と呼ぶ).奇しくも,ちょうど1年前の2025年4月18日に発生した広津地震1)の震央は美麻地震の約13km南で,ともに大町市を中心に比較的広い範囲で被害が発生した.信州大学震動調査グループは,これまでに長野県松本市,大町市,安曇野市の「揺れやすさマップ」を作成2) 3) 4)してきたが,広津地震に続き,美麻地震も大町市の「揺れやすさマップ」の範囲内で被害が生じる地震となった.そこで,想定されていた「揺れやすい」地域と実際の被害地域の関係をさらに検討する.
震源断層と地質
美麻地震の震央は,神城断層の東,1ー1.5kmの大峰帯内5)に位置するが,神城断層を東傾斜30-60°とすると6),震源は神城断層下盤側の青木花崗岩7)もしくより深部の岩体に位置する.2026年4月18日は13:20にMj5.0(深度8km),続いて南南東1kmの所で14:54にMj5.1(深度9km)と同規模の地震が連続した.以後両地震を発生順に本震1,本震2と呼ぶ.気象庁発表のCMT解と余震分布から本震1の断層面はN12W,西落ち65°ですべり角-4°.本震2の断層面は南北走向,西落ち42°で,すべり角19°であった.本震2の断層面とすべり角は広津地震(南北走向,西落ち48°,すべり角20°)に近いが,余震分布から両者は連続せず,雁行関係にあり,これらはそれぞれ神城断層,松本盆地東縁断層の共役断層と考える.
地震被害
美麻地震の本震1,2の最大観測震度はそれぞれ震度5強(大町市美麻),震度5弱(大町市美麻,八坂など)であった.同規模の地震が連続したため,両地震の被害を一括して美麻地震の被害としてまとめる.震源は山間部の地下で震央1km圏内に人家は無い.目立った被害は震央5km圏内の湖岸,山間の集落の他,松本盆地東縁の段丘上,犀川沿いに広がり,震央から20km南までおよぶ.一方,北隣りの白馬村での被害は無く,被害の北限は震央から5kmほどである.主な被害は屋根瓦;63軒,壁の破損等の建物外装;61軒,ブロック塀・道路等;15箇所,墓石等石造物転倒;18箇所となり,被害箇所は広津地震の2倍以上である.集計値は大町市,池田町,松川村,生坂村,安曇野市,白馬村への問い合わせによる.
揺れやすさの評価
「揺れやすさマップ」と被害程度を比較するため,美麻地域,仁科三湖周辺~松本盆地北部の被害地域を調査した.山間部と平野部など,見かけの震動の差をどこでも見出せるよう,墓地や石塔群などの被害に注目した.行政へ被害として報告されない墓石のずれは,その大きさによって揺れの程度の指標として役立つので,墓石の新旧の差,施工不良なども考慮し,墓地の震度を6弱,5強,5弱(相当),それ以下に区分した.集落単位では木崎湖岸の東海ノ口,美麻新行(小規模盆地),小藤(地すべり地)で震度5強となり,その他の被害地域は震度5弱となる.まれに震度6強と評価した墓地もあるがほとんどが,地震波の増幅を受けやすい小さな凸地形上にある.「揺れやすさマップ」の揺れやすさと相対的震度差は全体としては良い相関を持つが,小藤の評価は再検討を要する.
地形効果の再認識
広津地震と同様1)に美麻地震でも,松本盆地東縁の段丘上,犀川沿いに遠方まで被害域が現われた.これは盆地端部効果(堆積盆地への直達S波と盆地端部からの表面波との増幅的干渉)8)によるものと考える.広津地震の震源近傍に位置する八坂地域と比べると,美麻地震の震源近傍にあたる美麻地域では地すべり地に立地する集落が少ないため,被害は比較的少なかった.しかし,両地震で被害が出た八坂地域の矢下や藤尾は盆地端部効果が効き,揺れを増幅する地盤・地形条件を持つと考えられるので,特に注意したい.
まとめ
今回の調査地域では2ー4回の墓石のズレが重なった例が見つかった.これは大町市北部では1986年12月30日の被害地震以降,10年に1回程度の割合で強い揺れに見舞われた地域がある証拠である.今後も被害情報を地震防災に還元できるような取り組みが必要であろう.
引用文献
1)津金ほか(2025) 地質学会演旨.
2)信大震動調査G(2014)「揺れやすさマップ」を活かして地震に備える.
3)信大震動調査G (2016) 大町市の地震動と地盤に関する調査報告書.
4)信大震動調査G (2020) 安曇野市地盤と地震動に関する調査報告書.
5)小坂(1991) 信大理学部紀要,26,75-140.
6)地震本部地震調査委員会(2015) 糸魚川-静岡構造線断層帯の長期評価(第二版).
7)加藤ほか(1989) 大町地域の地質(地質図幅).
8) 石川ほか(2000) 第四紀研究,39,389-400.
信大震動調査G;遠藤正孝・古本吉倫・原田晋太郎・原山 智・井関芳郎・北沢淳史・小松宏昭・小坂共栄・松下英次・宮沢洋介・小野和行・太田勝一・塩野敏昭・土本俊和・津金達郎・富樫均・高橋康・竹村健一・竹下欣宏・田中俊廣・田邉政貴・山浦直人・矢野孝雄・吉田孝紀

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