講演情報

[G-P-24]10万分の1徳島県地質図を用いた深層崩壊の地質解析

*田村 俊之1、村田 明広1、中島 昇1 (1. ニタコンサルタント株式会社)
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キーワード:

徳島県地質図、深層崩壊、受け盤斜面、混在岩、砂岩.砂岩泥岩互層

 15万分の1徳島県地質図及び同説明書1)が作成されてから50年以上が経過し,全県を含んだより詳細な地質図が必要とされていた.一方,地質図としては四国地方土木地質図2)が編纂された他,産総研地質調査総合センターより20万分の1日本シームレス地質図3)が作成・公開されている.本検討に用いる地質図は,令和7年9月に発表された「10万分の1徳島県及び周辺地域の地質図4)」(以下,10万分の1徳島県地質図と略す)であり,編纂図ではなく,同一の地質基準に基づく現地調査により作成されている.10万分の1徳島県地質図は,岩相による区分を基本とし,層理面や片理面の走向・傾斜の記号が記載(傾斜角は非表示)されるなど,地質分布に関しては多くの情報量を有している.
地すべり,斜面崩壊は,地質がその素因として大きなウェイトを占めており,様々な研究が行われてきた.20万分の1日本シームレス地質図では,防災科学技術研究所「1:50,000地すべり地形分布図」などとオーバーレイでき,地質との関連性を検討することができるが,流れ盤・受け盤斜面など地質構造との関連性を詳細に検討できるのは5万分の1地質図幅の発表されている地域に限定される.一方,10万分の1徳島県地質図では,層理面・片理面などの走向・傾斜が記載されていることから,岩相のみならず地質構造との関連性を徳島県全域及び周辺地域で評価・検討できる大きな可能性を秘めている.
徳島県中北部は,御荷鉾ユニット,三波川帯を中心に全国でも有数の地すべり地帯であり,地すべり災害が頻発している.対して,徳島県中南部では,秩父帯(雲早山ユニット以南),四万十帯を通じて斜面崩壊を中心とした災害が頻発している5).これらの斜面災害のうち,国土交通省では深層崩壊の発生の恐れのある渓流抽出マニュアル(案)6)により作成した深層崩壊渓流(小流域)レベル評価区域図を発表し,徳島県中南部地域は深層崩壊の発生が相対的に高い地域としている7).本マニュアルは,国内全域を対象とするため,地質に関する抽出要素は20万分の1日本シームレス地質図を用いた①活断層,②明瞭なリニアメントに限られ,当地質図から得られない流れ盤や受け盤等の面構造,褶曲構造などは,その評価に組み込まれていない.  
本検討では,斜面災害(深層崩壊)に対するリスク評価の高度化を目指し,地質的抽出要素を加えるため,10万分の1徳島県地質図を用いて,深層崩壊を中心とした大規模災害発生個所の地質特性(岩相,地質構造)を解析した.深層崩壊発生地点は地質構造と密接に関係しているとされ,秩父帯,四万十帯の付加体で多数発生している8).秩父帯では,秩父北帯・黒瀬川帯・三宝山帯を通じて,多くが混在岩分布地域で発生しており,黒瀬川帯白亜紀正常堆積物(砂岩,砂岩泥岩互層など)分布地域では発生していない.四万十帯では,北帯,南帯ともに砂岩・砂岩泥岩互層分布地域で発生しており,混在岩(メランジュ)分布地域での発生は一部に限定される.また,地質体にかかわらず「受け盤」での発生が多数を占める.これは,砂岩・砂岩泥岩互層に比べ混在岩の強度が小さく,中小規模の崩壊が繰り返し発生していることが要因で,大規模な深層崩壊発生に至るひずみが蓄積されないためと考えられる.一般的に,地質構造が流れ盤斜面では崩壊などの地質リスクが高く,受け盤斜面ではそのリスクが小さいとされている.しかし,深層崩壊においては,「流れ盤」より「受け盤」で,よりリスクが高いことが明らかとなった.四国山地では非常に大きな隆起量が継続している他,県南地域では約100年ごとに繰り返す海溝型巨大地震(南海,東南海地震)による山体の緩み,その後の重力変形(岩盤クリープ)により,受け盤斜面において深部まで緩みが蓄積されている可能性が高いと考えられる9).
本研究に用いた10万分の1徳島県地質図は,さらに利用範囲を拡大すべく面構造の傾斜角度の追加などを行い,5万分の1の図幅ごとに公表できればと考えている.また,深層崩壊,地すべり分布図などと本地質図をGISで統合することにより,地質リスク評価などにも活用範囲を広げることが可能と考えている.
【参考文献】1)徳島県(1972)15万分の1徳島県地質図及び同解説書.2)四国地方土木地質図編纂委員会(1998)四国地方土木地質図及び同解説書.3)産総研地質調査総合センター 20万分の1日本シームレス地質図.4)村田明広(2025)10万分の1徳島県及び周辺地域の地質図・同説明書.5)国土交通省四国地方整備局四国山地砂防事務所(2004)四国山地の土砂災害.6)独立行政法人土木研究所(2008)深層崩壊の発生の恐れのある渓流抽出マニュアル(案).7)国土交通省(2010)深層崩壊に関する全国マップ.8)千木良雅弘(1998)岩盤クリープと崩壊-構造地質学から災害地質学へ-,地質学論集,50.9)横山俊治(2010):中国四国地方の応用地質学,5.5地形・地質的要素から見た中国四国地方の地すべり.

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