講演情報

[G-P-27]五島列島奈留島ノコビ浦に産する火成岩類の産状とその意義

*金丸 龍夫1、松藤 彬成2、長田 充弘1、髙場 智博3、古川 邦之4、谷 健一郎5 (1. 日本大学文理学部、2. 熊本大学、3. 大分大学、4. 愛知大学、5. 国立科学博物館)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

五島列島、奈留島、黒曜石、松脂岩、日本海拡大

 長崎県西部に位置する五島列島には中新世の日本海拡大前後に堆積した主として堆積岩類からなる五島層群が分布し,それらを貫く火成岩類が広く分布している.Kiyokawa et al. (2022) によれば,五島層群はリフティングに伴う火成活動,湖,河川,デルタに至る陸成環境で形成されたものであり,日本海拡大に伴う背弧リフト盆地の形成および沈降過程を反映していると解釈されている.また,五島列島では幅広い年代の火成活動が認められる.それらは,16―14 MaのジルコンU–Pb年代を示す苦鉄質から珪長質まで幅広い化学組成をもつ火成岩体や火成複合岩体(Suda et al., 2021; Kiyokawa et al., 2022など),および,第四紀の福江火山群などである.五島列島(下五島エリア)ジオパークのジオサイト「野首(ノコビ)の断層(五島市ウェブサイト)」に指定されている,五島列島の中部に位置する奈留島ノコビ浦には,苦鉄質から珪長質の複数の岩脈が産する.本研究では,その産状を明らかにし,周辺のテクトニクスとの関連性について言及する.ノコビ浦には北西-南東走向の断層破砕帯を挟んで複数の岩脈が分布する.破砕帯北東側には苦鉄質岩脈が卓越し,五島層群砂岩との境界でペペライト様組織や細脈状分岐が認められる.破砕帯北東側には小規模な花崗斑岩体もみられる.一方,南西側には松脂岩岩脈および流紋岩岩脈が分布し,いずれも概ねNW–SE走向の急傾斜岩脈として産する.松脂岩はパーライト状割れ目が発達し,石基は脱ガラス化している.また,一部には針状鉱物が放射状に成長するリソフィーゼ様組織が認められる.岩脈縁辺部には発泡組織を伴う白色部が認められ,岩脈群は雁行配列を示す.強熱減量から推定される含水量は平均10 wt.%程度である.ここで,苦鉄質岩脈は母岩との関係から五島層群堆積直後の貫入と考えられる.花崗斑岩体は16 Maを示し,下五島地域に広く分布する14―16 Maの火成活動と同時期であると考えられる.一方,松脂岩岩脈,その白色部および流紋岩岩脈から得られたジルコンU–Pb年代はいずれも約12 Maを示し,この火成活動とは区別される.これら珪長質岩脈の走向は,五島列島を分断するKiyokawa et al. (2022) のF2断層系と調和的であり,少なくとも12 MaにはF2断層系が活動可能な構造として存在し,その構造を利用したマグマ上昇が生じていた可能性を示す.また,松脂岩および流紋岩岩脈の産状は,これらが火道あるいは溶岩ドーム近傍で形成されたことを示唆する.以上のことから,奈留島南西部には12 Ma頃に珪長質火山体が存在した可能性がある.さらに奈留島の南東沖に分布する椛島デイサイトからも同時期のK-Ar年代が報告されている(河田ほか, 1994)ことから,奈留島-椛島周辺では12 Ma付近に比較的大規模な珪長質火成活動が発生していた可能性がある.

文献
五島市ウェブサイト(https://www.city.goto.nagasaki.jp/geopark/about/list_geosite.pdf)2026/6/24閲覧
河田ほか, 1994, 5万分の1地質図幅「福江」
Kiyokawa et al., 2022, Island Arc. DOI: 10.1111/iar.12456
Suda et al., 2021, Island Arc. DOI: 10.1111/iar.12390

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン