講演情報

[G-P-28]河口周辺沿岸海域表層堆積物中のマイクロプラスチック分布

*天野 敦子1、板木 拓也1、宇智田 奈津代2、田中 厚資2、鈴木 剛2 (1. 産業技術総合研究所、2. 国立環境研究所)
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キーワード:

マイクロプラスチック、堆積物、沿岸海域、粒度

 本研究は河口から海域へのマイクロプラスチック(MP)の移動過程を明らかにすることを目的に,河口域周辺の海底表層堆積物中のMP分布とその特性の変化について調査した.調査対象は山形県最上川(YG),宮城県旧北上川(MG),広島県太田川(HS),福岡県御笠川(FK)の河口周辺海域で,各海域河口から沖合に向かう3地点で表層堆積物をグラブ採泥器で採取した.採取試料を10μmメッシュのネットでろ過した水道水と篩を用いて0.3~1 mmに分画した. 7.8mol/Lのヨウ化ナトリウムを用いて比重分離し,捕集した浮遊物を過酸化水素で酸化処理した.その残留物からマイクロマニピュレータ搭載した自動計測顕微鏡システム(Itaki et al.,2020)を用いてMP候補粒子の形状と色の計測し,1粒子毎に拾い出しを行った.そして,フーリエ変換赤外分光分析(FT-IR)の全反射(ATR)法を用いてMPの素材判定を行った. 
 乾燥重量1 kg中の堆積物に含まれるMP濃度はHSで151.5~954.2個/kgと最も高く,FKで28.4~341.4個/kg,YGとMGでは概ね100個/kg以下で,YGの河口に一番近い地点ではMPが検出されなかった.各海域内で比較すると,HS,FKのMP濃度は河口で高く,沖合に向かって減少する傾向を示すが,YGでは沖合の地点で高く,またMGの地点間のMP濃度差は他海域と比較すると小さい.プラスチック素材は多くの地点でポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリエチレンテフタレート(PET)が半数を占めるが,HSではポリスチレン(PS)が大半を占める.堆積物の粒度指標(Tanaka et al., 2025)と比較すると,HSとFKの中央粒径値は4~6φ,含泥率は50~90%である.またこれら海域はそれぞれ半閉鎖的な広島湾,博多湾に位置し,停滞的な海洋環境であるため,湾内の堆積物中にMPが集積しやすいと言える.また,MP濃度が河口から沖合へと向かって減少する傾向は,河川由来のMPが河口周辺に多く堆積していることを示唆する.ただし,HSで大半を占めるPSは広島湾内の養殖漁業で使用されている発泡スチロール由来の可能性が高い.MGの中央粒径値と含泥率は河口地点でそれぞれ2.3φと13%,沖合の2地点では6.3φ,90%以上と異なるが,MP濃度は同程度である.MGは仙台湾に位置し,太平洋に面した開放的な海洋環境のため,河川から流入したMP,泥粒子は波浪等で拡散して堆積していると考えられる.YGの中央粒径値は3地点とも2.5φ程度であるが,含泥率は河口地点では2%,沖合の2地点では16~18%と異なり,含泥率の高い沖合地点でMP濃度が高いことから,MPは泥質粒子と同様に挙動,堆積していると考えられる.これら海域の一部では含泥率の高い地点でMP濃度が高く,MPが細粒堆積物とともに輸送・堆積する可能性が示唆されたが,その関係は一様ではなく,海域の閉鎖性や発生源,波浪・沿岸流等の影響により海域ごとに異なると考えられる.今後,研究対象海域や比較する堆積物指標等を追加し,MPの堆積物への集積する要因について検討する.
 本研究は環境総合推進費1-2502「タイヤ摩耗粉塵の河川・海洋流出量の精緻な推計と、それに基づく生態リスクの評価と低減に係る研究(JPMEERF20251002)」と1-2604「半閉鎖性水域における微細マイクロプラスチックの集積機構の理解と対策指向型マッピング(JPMEERF20261003)」で実施した.引用:Itaki et al. (2020) Automated collection of single species of microfossils using a deep learning– micromanipulator system. Progress in Earth and Planetary Science, 7, 19.; Tanaka et al., (2025) Distribution and accumulation patterns of tire-derived particles in coastal and lake sediments. Water Research, 268, 124278

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