講演情報
[G-P-30]隠岐海嶺におけるガスチムニー内外の堆積物比較からみたガスチムニー活動と周辺環境
*桑野 太輔1、門野 美佳2、金子 夏樹2、尾内 千花2、池原 実3、尾張 聡子4、戸丸 仁2 (1. 京都大学、2. 千葉大学、3. 高知大学、4. 東京海洋大学)
キーワード:
日本海、隠岐海嶺、ガスチムニー、ガスハイドレート、第四紀
日本海は,水深3000 mに達する深い堆積盆を有する一方で,外洋とは水深約130 mの浅い海峡を介して接続する半閉鎖的な海域である.日本海では有機物に富む堆積物が厚く堆積し,その熟成によって炭化水素が生成・集積した結果,メタンハイドレートやメタン湧出域が広く分布し,海底下には流体の移動経路であるガスチムニーが発達している(松本ほか,2024).一方,第四紀後期の日本海では,氷期–間氷期サイクルに伴う海水準変動によって海洋環境が大きく変化し,最終氷期には100 m以上の海水準低下により底層環境の還元化や薄い葉理層(TL層)の形成が生じたことが知られている(Tada et al., 1999).また,海水準低下はガスハイドレート安定領域の浅化を引き起こし,メタンハイドレートの分解やメタン湧出活動を活発化させた可能性が指摘されている(Matsumoto et al., 2004).しかし,ガスチムニー活動と第四紀の環境変動との関係は,上越沖など一部の海域では詳細に検討されているものの,鳥取県沖の隠岐海嶺ではガスチムニーの存在が知られているのみで,ガスハイドレートの有無や活動履歴は明らかになっていない.そこで本研究では,KS-25-8航海において隠岐海嶺で採取されたガスチムニー内外のピストンコアおよびアシュラコア試料を用いて,堆積物の基礎的な解析に基づいてガスチムニー活動の履歴と周辺海底環境の変遷を明らかにすることを目的として研究を行った.
対象試料は,ガスチムニー内で採取されたPC2505およびAS2505,ならびにガスチムニー外で採取されたPC2506およびAS2506である.両地点の距離は約1 kmしか離れていない.試料は半割後に岩相記載,色測定,CT撮影,MSCL測定,XRFコアスキャン(ITRAX)を実施し,堆積物の基礎的な情報を把握した.また,ガスチムニー外で採取されたPC2506については,TOC測定および浮遊性有孔虫化石を用いた14C年代測定を行った.
両地点のコアは,明瞭に異なる堆積相を示し,ガスチムニー内で採取されたPC2505では,最下部に塊状ガスハイドレート,その上位に炭酸塩ノジュールを含む堆積物が認められた.このことは,少なくとも一定期間にわたりメタン湧出環境が継続していたことを示唆する.一方,ガスチムニー外で採取されたPC2506ではTL層を含むシルトを主体とした整然層が発達し,ガスハイドレートや炭酸塩ノジュールは認められなかった.また,色測定の結果,PC2506では最終氷期から退氷期にかけて明瞭なL*値の変化が認められたのに対し, PC2505ではL*値の変化は認められなかった.さらに,PC2505ではTL層が認められず,堆積構造も著しく乱されていたことから,ガスハイドレートの成長・分解に伴って堆積物が攪乱された可能性が示唆される.一方,同地点のアシュラコアAS2505では,表層堆積物にガスチムニー外のAS2506と同様の色変化が認められたことから,現在は通常の堆積が継続しており,堆積物の攪乱は過去の特定期間に生じたと考えられる.さらに,ガスチムニー外のPC2506の色変化を近傍のMD01-2407コア(Kido et al., 2007)と比較すると,最終氷期にはより短周期のL*値の変動が認められた.このことは,海水準低下に伴うメタン湧出活動の活発化により,ガスチムニーの影響が周辺の海底にも及んだ可能性を示唆する.今後は,ITRAXデータやTOCなどの地球化学データを統合し,第四紀におけるガスチムニー活動と海洋環境変動との関係をより詳細に評価する予定である.
【引用文献】
Kido et al., 2007, Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology, 247, 32–49.
Matsumoto et al., 2004, Resource Geology, 54, 53–68.
松本ほか,2024,地学雑誌,133,63–89.
Tada et al., 1999, Paleoceanography, 14, 236–247.
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