講演情報
[G-P-34]表層堆積物中の有孔虫殻の変質作用に基づく奄美大島周辺海域の堆積作用
*山﨑 誠1、加藤 優衣2、青木 翔吾1、長谷川 四郎3、天野 敦子4 (1. 秋田大学大学院国際資源学研究科、2. 陸前高田市役所、3. 東北大学総合学術博物館、4. 産業技術総合研究所)
キーワード:
表層堆積物、堆積過程、底生有孔虫、東シナ海
東シナ海は,ユーラシア大陸と台湾,琉球列島,九州に囲まれる縁海で,与那国島西方から黒潮が流入し,トカラ海峡より太平洋へと注ぐ.本調査海域は,西部の大陸棚から沖縄トラフと琉球列島,その東側の琉球海溝にかけての海底地形の変化に富む海域で,琉球列島の島嶼や海丘群は複雑な地形をなし,海洋表層を流れる海流と地形の相互作用により堆積作用も複雑である.トカラ列島周辺海域では,黒潮が島嶼部を通過する際の流向・流速の変動に応じて局所的に堆積,輸送,侵食の各プロセスが卓越し,多様な底質を形成する(鈴木ほか,2023).イシサンゴ類やコケムシ類,有孔虫類などの生物起源砕屑物にも,海底での水流による摩滅・変質や掃き寄せによる淘汰などの影響が認められ,それらの一部は暗褐色や赤褐色に変色している(鈴木ほか,2022;長谷川,2023).このことは,東シナ海の海洋底堆積物中の有孔虫化石などを環境指標とする古海洋環境復元では,海底や海洋表層の水流によって二次的に運搬された個体と,初生的にその場に堆積した個体を,量的・質的に区別する必要があることを意味する.山﨑ほか(2025)は,有孔虫殻の変色を区別した結果,変色した個体には120 m以浅に生息する底生有孔虫が含まれること,一部には海底の露岩域からの堆積粒子の再移動・運搬が推測されることを報告した.本研究では,変色個体の分布に加え殻の破損に注目し,変色・破損程度の地理的分布を明らかにするとともに,変色がいつ・どの深度で起きたのか考察する.
試料は,産業技術総合研究所による調査航海(GK15-2,GK17-2)で採集された海底表層堆積物を用いた.そのうち先行研究(長谷川・内村,2017;山﨑ほか,2025)で変色した底生有孔虫殻の産出が予想される23試料を選び,変色度合いを区別し,さらにGK15-2の17試料については殻の破損の有無についても検討した.調査地域の底質は,水深123 mまでは極粗粒砂,それ以深の水深953 mまでは中粒から極細粒砂からなる砂質堆積物で,それ以深では泥質堆積物よりなる(西田ほか,2016;杉崎ほか,2018).これら砂質堆積物は,沖縄南方から奄美大島北方まで広く分布するRyukyu Sand Sheet(Nishida et al., 2022)に相当すると判断される.
調査を行った水深78 mから1028 mの表層堆積物試料には,いずれも淡黄色〜黄褐色に変色した底生有孔虫が含まれた.変色した底生有孔虫は,試料採集深度に関わりなく,長谷川・内村(2017)によって定義されたI帯(120 m以浅)ないしII帯(130–350 m)の種群により占められる.I帯を構成する底生有孔虫Amphisitegina papillosaについて変色有/無個体の殻断面を観察したところ,変色は個々の室ごとにではなく面的に,かつ殻の中心よりも外縁部ほど黄褐色を帯びた強い変色が観察された.また,宗谷海峡南東海域で表層堆積物中の有孔虫殻の運搬過程を考察した内田(2005)に基づき,17試料について125–180 µm(小型と呼ぶ)と180 µm以上(大型と呼ぶ)の2サイズに区分し変色・無変色の底生有孔虫殻の破損状態を区別した.その結果,破損殻は変色の有無に関わらず分析試料で普遍的に確認され,小型殻で平均0.5%,大型殻で平均7%(最大24.3%;水深78 m)を占めた.また,変色個体に占める破損殻の割合は,平均5.6%と低い傾向にあった.以上のことから奄美大島周辺海域では,(1)底生有孔虫殻は浅海域(I帯〜II帯; 350 m以浅)で変色し,(2)殻断面の観察に基づくと変色は有孔虫の死後に進行したものと推測される.講演では,有孔虫殻の変色・破損と堆積の過程についても考察をおこなう.
引用文献
長谷川・内村, 2017, 地質調査総合センター速報, no. 72, 85–91; 長谷川, 2023, 地質調査研究報告, 74, 301–314; 西田ほか, 2016, 地質調査総合センター速報, no. 70, 66–74; Nishida et al., 2022, Mar. Geol., 444, doi: 10.1016/j.margeo.2021.106707; 杉崎ほか,2018, 地質調査総合センター速報, no. 75, 84–96; 鈴木ほか, 2022, 地質調査研究報告, 73, 275–299; 鈴木ほか, 2023, 地質調査研究報告, 74, 259–286; 内田, 2005, 熊本大学博士論文, pp.134, 山﨑ほか, 2025, 第132年地質学会講演要旨.
試料は,産業技術総合研究所による調査航海(GK15-2,GK17-2)で採集された海底表層堆積物を用いた.そのうち先行研究(長谷川・内村,2017;山﨑ほか,2025)で変色した底生有孔虫殻の産出が予想される23試料を選び,変色度合いを区別し,さらにGK15-2の17試料については殻の破損の有無についても検討した.調査地域の底質は,水深123 mまでは極粗粒砂,それ以深の水深953 mまでは中粒から極細粒砂からなる砂質堆積物で,それ以深では泥質堆積物よりなる(西田ほか,2016;杉崎ほか,2018).これら砂質堆積物は,沖縄南方から奄美大島北方まで広く分布するRyukyu Sand Sheet(Nishida et al., 2022)に相当すると判断される.
調査を行った水深78 mから1028 mの表層堆積物試料には,いずれも淡黄色〜黄褐色に変色した底生有孔虫が含まれた.変色した底生有孔虫は,試料採集深度に関わりなく,長谷川・内村(2017)によって定義されたI帯(120 m以浅)ないしII帯(130–350 m)の種群により占められる.I帯を構成する底生有孔虫Amphisitegina papillosaについて変色有/無個体の殻断面を観察したところ,変色は個々の室ごとにではなく面的に,かつ殻の中心よりも外縁部ほど黄褐色を帯びた強い変色が観察された.また,宗谷海峡南東海域で表層堆積物中の有孔虫殻の運搬過程を考察した内田(2005)に基づき,17試料について125–180 µm(小型と呼ぶ)と180 µm以上(大型と呼ぶ)の2サイズに区分し変色・無変色の底生有孔虫殻の破損状態を区別した.その結果,破損殻は変色の有無に関わらず分析試料で普遍的に確認され,小型殻で平均0.5%,大型殻で平均7%(最大24.3%;水深78 m)を占めた.また,変色個体に占める破損殻の割合は,平均5.6%と低い傾向にあった.以上のことから奄美大島周辺海域では,(1)底生有孔虫殻は浅海域(I帯〜II帯; 350 m以浅)で変色し,(2)殻断面の観察に基づくと変色は有孔虫の死後に進行したものと推測される.講演では,有孔虫殻の変色・破損と堆積の過程についても考察をおこなう.
引用文献
長谷川・内村, 2017, 地質調査総合センター速報, no. 72, 85–91; 長谷川, 2023, 地質調査研究報告, 74, 301–314; 西田ほか, 2016, 地質調査総合センター速報, no. 70, 66–74; Nishida et al., 2022, Mar. Geol., 444, doi: 10.1016/j.margeo.2021.106707; 杉崎ほか,2018, 地質調査総合センター速報, no. 75, 84–96; 鈴木ほか, 2022, 地質調査研究報告, 73, 275–299; 鈴木ほか, 2023, 地質調査研究報告, 74, 259–286; 内田, 2005, 熊本大学博士論文, pp.134, 山﨑ほか, 2025, 第132年地質学会講演要旨.
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