講演情報
[T14-O-10]須恵器の鉱物組成とその胎土の推定(3)
*小滝 篤夫1、菱田 哲郎2、諫早 直人1、横臼 彩江1、山内 愛弓2、東 昭吾、佐々木 尚子1 (1. 京都府立大、2. 兵庫県立考古博物館)
キーワード:
須恵器の鉱物組成、須恵器の胎土
はじめに
考古学において,土器を作る材料として使われた土(胎土)の産地の推定には,多様な方法が取られてきた(石田2015,2022).ルーペ,実体顕微鏡などによる土器表面の鉱物観察,土器薄片の偏光顕微鏡による鉱物や微化石の観察のほか,蛍光X線分析,中性子線分析などによる土器の化学組成の検討(三辻ほか2013など)である. 筆者らは,2023年以来,京都府福知山市夜久野町の末窯跡群で表採された,京都府立大学考古学研究室と福知山市文化財保護係が保管する須恵器片のうち「焼きが甘い」と判断される試料の岩石薄片の鉱物観察結果と,末地区周辺の地質分布を比較して,胎土を推定する試みを報告してきた.その後,試料の数を増やして顕微鏡観察を進めた結果,胎土の推定に新たな展開があったので続報として報告する.
須恵器窯跡の地質
末窯跡群は,7世紀前半から10世紀初頭まで長期間,稼働したことがわかっている須恵器窯跡群で,牧川右岸と左岸にまたがって分布している.右岸側には主として夜久野複合岩類のメンバーであるはんれい岩が分布し,地表下数m以上の深さまで風化が進みマサ土状になっている.鉱物は斜長石,直方輝石,普通角閃石,粘土鉱物が確認できる.左岸側には,中・古生代の砂岩・頁岩が分布していて,石英,長石類が確認できる.牧川の上流には,花こう岩,流紋岩,頁岩などが分布している(中澤・石渡・石田2009).
須恵器片中の鉱物・岩片
須恵器片の薄片を偏光顕微鏡下で観察した.はんれい岩の風化土を胎土とした指標になる普通角閃石と,川砂を胎土に混入した指標となる花こう岩片,および径1㎜以上の石英粒子に注目した.焼きが甘い土器の場合,普通角閃石の光学的性質が保存されることは増島(2009)で報告されている.牧川左岸の鎌谷,日置地区等の砂岩頁岩分布域の窯で焼いた須恵器試料からは普通角閃石が検出されず,径1㎜以上の石英や花こう岩片が含まれている.一方,牧川右岸の末地区のはんれい岩分布域の窯で焼いた試料からは,特定の地区の試料を除いて,普通角閃石が検出される.また,ほとんどの試料から花こう岩片,1㎜以上の石英粒子が検出される.
胎土の推定
各試料には,それぞれの窯の所在地の地質に対応した鉱物が観察できたことから,窯の所在地で採取した土を使用した可能性が高い.しかし,はんれい岩分布域である牧川右岸の一つの谷系に存在する窯跡の試料には,普通角閃石を見出せず,窯の所在地の土を使った痕跡がない.その理由は,工人の側に原因があったのかもしれないが,今のところ明らかにはできない.さらにほとんどの須恵器試料には,径1㎜以上の石英粒子や花こう岩片を含むことから,胎土の粒度を調整するために,混和剤として牧川はんらん原の堆積物が混入されている可能性が高いことが判明した.また,一つの谷系の窯の試料には,石英が飛びぬけて多く含まれる.混和剤として,牧川の川砂を多く使用したものか,牧川左岸の山地の土を混用したのか,その他の理由があるのか今後の検討が必要である.
文献
石田智子(2015)鹿児島考古第45号,3-13,石田智子(2022)科学分析はじめてガイド.22-25.中澤圭二・石渡 明・石田志朗(2005)夜久野町史第1巻,21-180.増島 淳(2009)静岡地学 第100号,51-59.三辻利一・中園 聡・平川ひとみ(2013)分析化学,62(2),73-87.
考古学において,土器を作る材料として使われた土(胎土)の産地の推定には,多様な方法が取られてきた(石田2015,2022).ルーペ,実体顕微鏡などによる土器表面の鉱物観察,土器薄片の偏光顕微鏡による鉱物や微化石の観察のほか,蛍光X線分析,中性子線分析などによる土器の化学組成の検討(三辻ほか2013など)である. 筆者らは,2023年以来,京都府福知山市夜久野町の末窯跡群で表採された,京都府立大学考古学研究室と福知山市文化財保護係が保管する須恵器片のうち「焼きが甘い」と判断される試料の岩石薄片の鉱物観察結果と,末地区周辺の地質分布を比較して,胎土を推定する試みを報告してきた.その後,試料の数を増やして顕微鏡観察を進めた結果,胎土の推定に新たな展開があったので続報として報告する.
須恵器窯跡の地質
末窯跡群は,7世紀前半から10世紀初頭まで長期間,稼働したことがわかっている須恵器窯跡群で,牧川右岸と左岸にまたがって分布している.右岸側には主として夜久野複合岩類のメンバーであるはんれい岩が分布し,地表下数m以上の深さまで風化が進みマサ土状になっている.鉱物は斜長石,直方輝石,普通角閃石,粘土鉱物が確認できる.左岸側には,中・古生代の砂岩・頁岩が分布していて,石英,長石類が確認できる.牧川の上流には,花こう岩,流紋岩,頁岩などが分布している(中澤・石渡・石田2009).
須恵器片中の鉱物・岩片
須恵器片の薄片を偏光顕微鏡下で観察した.はんれい岩の風化土を胎土とした指標になる普通角閃石と,川砂を胎土に混入した指標となる花こう岩片,および径1㎜以上の石英粒子に注目した.焼きが甘い土器の場合,普通角閃石の光学的性質が保存されることは増島(2009)で報告されている.牧川左岸の鎌谷,日置地区等の砂岩頁岩分布域の窯で焼いた須恵器試料からは普通角閃石が検出されず,径1㎜以上の石英や花こう岩片が含まれている.一方,牧川右岸の末地区のはんれい岩分布域の窯で焼いた試料からは,特定の地区の試料を除いて,普通角閃石が検出される.また,ほとんどの試料から花こう岩片,1㎜以上の石英粒子が検出される.
胎土の推定
各試料には,それぞれの窯の所在地の地質に対応した鉱物が観察できたことから,窯の所在地で採取した土を使用した可能性が高い.しかし,はんれい岩分布域である牧川右岸の一つの谷系に存在する窯跡の試料には,普通角閃石を見出せず,窯の所在地の土を使った痕跡がない.その理由は,工人の側に原因があったのかもしれないが,今のところ明らかにはできない.さらにほとんどの須恵器試料には,径1㎜以上の石英粒子や花こう岩片を含むことから,胎土の粒度を調整するために,混和剤として牧川はんらん原の堆積物が混入されている可能性が高いことが判明した.また,一つの谷系の窯の試料には,石英が飛びぬけて多く含まれる.混和剤として,牧川の川砂を多く使用したものか,牧川左岸の山地の土を混用したのか,その他の理由があるのか今後の検討が必要である.
文献
石田智子(2015)鹿児島考古第45号,3-13,石田智子(2022)科学分析はじめてガイド.22-25.中澤圭二・石渡 明・石田志朗(2005)夜久野町史第1巻,21-180.増島 淳(2009)静岡地学 第100号,51-59.三辻利一・中園 聡・平川ひとみ(2013)分析化学,62(2),73-87.
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