講演情報
[T14-O-12]宇都宮市北西部に分布する大谷層ユニットV層から採掘された大谷石の鉱物組成
*相田 吉昭1、橋本 優子2、石川 智治3、菊川 照英4、古川 登5 (1. 宇都宮大学、2. 宇都宮大学大学院地域創生科学研究科、3. 宇都宮大学工学部、4. 千葉県立中央博物館、5. 千葉大学大学院理学研究院地球科学研究部門)
キーワード:
大谷石、火山礫凝灰岩、石材、大谷層、鉱物組成
【はじめに】
宇都宮市北西部の大谷地区には,中期中新世の含軽石火山礫凝灰岩や凝灰質砂岩層などを主とする大谷層が分布し,本層の上部(層序ユニットIII層, IV層,V層上部・下部)から採掘された含軽石火山礫凝灰岩は大谷石として全国的に知られている(相田・酒井, 2017; 中村ほか, 2025).そのうちユニットIV層とユニットV層上部から採掘された石材は,それぞれ大谷石軟質荒目,また大谷石硬質荒目に対応している.一般に,大谷石石材の火山礫凝灰岩には,不規則な形態を示す黒褐色の「ミソ」や粘土質物質が抜けた「ミソ跡」が大〜小様々なサイズで含まれることが特徴である.また大谷層の層序ユニットは,含まれる岩片の種類や「ミソ」のサイズや量などで,それぞれ岩質が異なることから,石材の肉眼観察に基づいて,その由来,すなわち層序ユニットを推測することが可能である.一方,地下深所で採掘された直後の大谷石は,母岩が青緑色を示し「ミソ」は認められない.採掘後に空気と触れることで,母岩中に含まれる黒色緻密な部分が急速に黒色から黒褐色に変色,繊維状の粘土鉱物に変質し,その部分が「ミソ」となる.また「ミソ」が風化した大谷石から岩石薄片を作成することは,石材中の粘土鉱物化した軽石などが水で膨潤して剥離するため,湿式研磨法では困難であった.従って,地表部の露頭や既存の大谷石石材では,「ミソ」を構成する初生の物質が何であるのか解明することは難しい.この事から,大谷石の岩石特質と大谷層の層序ユニットとの関係を明らかにするため,できるだけ地下深所で採掘された直後の大谷石について,切断面の観察や構成鉱物の特定が必要である.
【試料と手法】
本研究では,地下深所の大谷層ユニットV層上部から採掘された火山礫凝灰岩から切り出したばかりの新鮮な試料について,乾式研磨法による岩石薄片の作成を行い,主要鉱物組成を検討した.また,大谷石に含まれる様々な含有物や岩片に関して,粉末X線回折(XRD)分析を行い,詳細な鉱物組成の比較検討を行った.試料は大谷石産業(株) 地下採掘場の地下50mの採掘場から掘削直後に採取した大谷石を,同日中に切断した.切断した試料の半分は岩石薄片作成用,残りの半分は粉末X線回折(XRD)による分析用とした.大谷石の切断面において,黒色緻密岩片部,暗緑色岩片部,淡緑色岩片部,緑色岩片部,および基質部から試料を採取し,めのう乳鉢で粉砕して粉末試料を作成し,XRD分析に用いた.
【結果】
大谷層ユニットV層上部の石材は,地下深所においては,基質は青緑色で,黒から緑色の岩片や白色軽石などの様々な含有物が認められる.偏光顕微鏡下では短冊状の粘土鉱物と一部ガラス質基質に石英や斜長石,少量の単斜輝石や黒雲母の結晶片と岩片を含み,石英や斜長石結晶片のサイズは比較的大きい.XRD分析結果から,基質と岩片を含む測定部位全ての箇所に共通して,斜プチロル沸石のピークが認められる.また暗緑色岩片,緑色岩片および基質には,斜プチロル沸石に加えて石英,斜長石のピークが認められる.特に黒色緻密岩片には,斜プチロル沸石に加えてスメクタイト族の粘土鉱物のピークが認められる.
【考察】
大谷層ユニットV層上部に相当する新鮮な大谷石の火山礫凝灰岩中に存在する黒色緻密岩片部に認められるスメクタイト族の粘土鉱物は,XRDプロファイルのピークの特徴から推測すると鉄サポナイトを示す可能性が高い.先行研究では,層準不明の大谷層の地下深所の採掘場で新たに切断した大谷石に含まれる粘土質岩片のXRD分析に基づいて,2種類のスメクタイト族の粘土鉱物のピークを認め,2価鉄に富むサポナイトと3価鉄に富むサポナイトが存在することを報告している(Kohyama et al., 1973).これらから,大谷石を特徴づける「ミソ」は,軽石や岩片が埋没続成作用を受けて鉄サポナイトに富む粘土質物質に変質したもので,採掘された大谷石の「ミソ」部分が短時間で変色することは,Fe2+-サポナイトがFe3+-サポナイトに酸化されることに対応し,その後,急速にサポナイトの変質が進んでいくことが示唆される.
【引用文献】
相田・酒井,2017, 大谷石の作る景観と地質,宇都宮美術館・下野新聞社,14-25.
Kohyama et al., 1973, Calays and Clay Minerals, 21, 229-237.
中村ほか,2025,2024年度徳次郎石研究会活動報告書,61-89.
宇都宮市北西部の大谷地区には,中期中新世の含軽石火山礫凝灰岩や凝灰質砂岩層などを主とする大谷層が分布し,本層の上部(層序ユニットIII層, IV層,V層上部・下部)から採掘された含軽石火山礫凝灰岩は大谷石として全国的に知られている(相田・酒井, 2017; 中村ほか, 2025).そのうちユニットIV層とユニットV層上部から採掘された石材は,それぞれ大谷石軟質荒目,また大谷石硬質荒目に対応している.一般に,大谷石石材の火山礫凝灰岩には,不規則な形態を示す黒褐色の「ミソ」や粘土質物質が抜けた「ミソ跡」が大〜小様々なサイズで含まれることが特徴である.また大谷層の層序ユニットは,含まれる岩片の種類や「ミソ」のサイズや量などで,それぞれ岩質が異なることから,石材の肉眼観察に基づいて,その由来,すなわち層序ユニットを推測することが可能である.一方,地下深所で採掘された直後の大谷石は,母岩が青緑色を示し「ミソ」は認められない.採掘後に空気と触れることで,母岩中に含まれる黒色緻密な部分が急速に黒色から黒褐色に変色,繊維状の粘土鉱物に変質し,その部分が「ミソ」となる.また「ミソ」が風化した大谷石から岩石薄片を作成することは,石材中の粘土鉱物化した軽石などが水で膨潤して剥離するため,湿式研磨法では困難であった.従って,地表部の露頭や既存の大谷石石材では,「ミソ」を構成する初生の物質が何であるのか解明することは難しい.この事から,大谷石の岩石特質と大谷層の層序ユニットとの関係を明らかにするため,できるだけ地下深所で採掘された直後の大谷石について,切断面の観察や構成鉱物の特定が必要である.
【試料と手法】
本研究では,地下深所の大谷層ユニットV層上部から採掘された火山礫凝灰岩から切り出したばかりの新鮮な試料について,乾式研磨法による岩石薄片の作成を行い,主要鉱物組成を検討した.また,大谷石に含まれる様々な含有物や岩片に関して,粉末X線回折(XRD)分析を行い,詳細な鉱物組成の比較検討を行った.試料は大谷石産業(株) 地下採掘場の地下50mの採掘場から掘削直後に採取した大谷石を,同日中に切断した.切断した試料の半分は岩石薄片作成用,残りの半分は粉末X線回折(XRD)による分析用とした.大谷石の切断面において,黒色緻密岩片部,暗緑色岩片部,淡緑色岩片部,緑色岩片部,および基質部から試料を採取し,めのう乳鉢で粉砕して粉末試料を作成し,XRD分析に用いた.
【結果】
大谷層ユニットV層上部の石材は,地下深所においては,基質は青緑色で,黒から緑色の岩片や白色軽石などの様々な含有物が認められる.偏光顕微鏡下では短冊状の粘土鉱物と一部ガラス質基質に石英や斜長石,少量の単斜輝石や黒雲母の結晶片と岩片を含み,石英や斜長石結晶片のサイズは比較的大きい.XRD分析結果から,基質と岩片を含む測定部位全ての箇所に共通して,斜プチロル沸石のピークが認められる.また暗緑色岩片,緑色岩片および基質には,斜プチロル沸石に加えて石英,斜長石のピークが認められる.特に黒色緻密岩片には,斜プチロル沸石に加えてスメクタイト族の粘土鉱物のピークが認められる.
【考察】
大谷層ユニットV層上部に相当する新鮮な大谷石の火山礫凝灰岩中に存在する黒色緻密岩片部に認められるスメクタイト族の粘土鉱物は,XRDプロファイルのピークの特徴から推測すると鉄サポナイトを示す可能性が高い.先行研究では,層準不明の大谷層の地下深所の採掘場で新たに切断した大谷石に含まれる粘土質岩片のXRD分析に基づいて,2種類のスメクタイト族の粘土鉱物のピークを認め,2価鉄に富むサポナイトと3価鉄に富むサポナイトが存在することを報告している(Kohyama et al., 1973).これらから,大谷石を特徴づける「ミソ」は,軽石や岩片が埋没続成作用を受けて鉄サポナイトに富む粘土質物質に変質したもので,採掘された大谷石の「ミソ」部分が短時間で変色することは,Fe2+-サポナイトがFe3+-サポナイトに酸化されることに対応し,その後,急速にサポナイトの変質が進んでいくことが示唆される.
【引用文献】
相田・酒井,2017, 大谷石の作る景観と地質,宇都宮美術館・下野新聞社,14-25.
Kohyama et al., 1973, Calays and Clay Minerals, 21, 229-237.
中村ほか,2025,2024年度徳次郎石研究会活動報告書,61-89.
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