講演情報

[T14-O-13]建築石材とやきもの用の石をめぐる質感:大谷石と栃木県産凝灰岩の比較検討

*橋本 優子1、相田 吉昭2、石川 智治3、何 元元3 (1. 宇都宮大学大学院 地域創生科学研究科(博士後期課程)、2. 宇都宮大学農学部、3. 宇都宮大学工学部)
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キーワード:

大谷石、芦沼石、凝灰岩質石材の質感、栃木県の建築石材、やきもの用の石

[はじめに]
たとえば石川・橋本(2026)で述べられる通り、栃木県宇都宮市に産する大谷石は、近世以前から建築石材として利用され、近代以降はフランク・ロイド・ライトの基本設計による帝国ホテル新館(ライト館:全館竣工1923年)で一躍脚光を浴びるようになった含軽石火山礫凝灰岩である。これに対して県東の芳賀郡益子町で焼かれる益子焼は、中村・相田・布川・橋本(2025)で記されるように、幕末に礎が置かれ(1853年)、大正末期に遡る民藝運動(生活文化運動)の提唱者の一人・濱田庄司の益子築窯(1931年)、その活動により全国的知名度を高めた陶器にほかならない。益子焼の釉薬は、この地で採れる含軽石火山礫凝灰岩・凝灰角礫岩の芦沼石が原料で、単味で深い柿色を呈する(柿釉)。
他にも、県北東の小砂石(含軽石細粒凝灰岩:那須郡那珂川町)が幕末期から小砂焼に利用され、県東の茂木石(軽石凝灰岩:芳賀郡茂木町)は釉薬原料となり、大谷石に関しては、焼成して外装材とする試み・製品が昭和戦後に見られる。これらはいずれも、地域では建築石材と、やきもの用の石を兼ねてきた凝灰岩質石材だが、そのことに踏み込んだ報告は、中村・相田・布川・橋本(2025)、石川・橋本(2026)など、きわめて少ない。そこで本研究は、大谷石と芦沼石を中心に、現地調査・試料分析を踏まえ、石材としての用途と質感の連関について比較検討を行い、その第一報とする。
[標本試料・その観察と分析]
大谷石は、現今の典型的な荒目石材と中目石材、ライト館の竣工時に遡る構成材、ライト館に石材を供した東谷石材商店採掘場跡の原材、芦沼石は現役の採掘場に近い露頭の自然石、茂木石は採掘場跡の原材を、ダイヤモンド・カッターまたは岩石カッターで断裁し、H100×W100×D50mm(どの寸法もマイナス20mm程度の幅あり)の標本試料を作製した。研究室内では、これらの4種6点に絞り、実験参加者の目視・触察による感性評価実験(視覚・触覚)を実施することで、人間が特定の石材に対して何を感じるのかを、数値で導き出している。
また、大谷石を原料とし、現在は生産を終えた焼成外装石材の商品見本2種(素焼・ガラス粉の施釉)、小砂地区に所在する採掘場の原材(小砂石)、濱田窯に残された歴史的建造物の構成材(茂木石)も同寸に切り、比較検討の対象とした。
すべての標本試料は、その出所・由来を現地で確認し、感性評価実験とは別に、観察(目視・触察)を通じて、石材(焼成外装石材は原料と商品見本)としての特質を分析しつつある。
[調査・分析結果と今後の課題]
大谷石、芦沼石、茂木石、小砂石は軟らかく、温かさが感じられる素朴な風合いで共通する。肌理については、芦沼石、小砂石がやや細かく、他は粗いため、石材の質感と主な用途の合致が認められた。これらは、日本的(風土的)な趣の石材という点でも似た傾向を示し、総括するならば、他の栃木県産凝灰岩質石材とは、はっきりと区分できる。
今後は、石材、その焼成、釉薬づくり(粉砕・仮焼・水溶)、その焼成による物性の変化と、それぞれの質感の相関関係にも視野を広げ、栃木県の建築・ものづくり文化の研究深化に役立てていきたい。さらに、ライトが大谷石とともに多用した簾煉瓦(外装用工業陶器:愛知県常滑市)と国産建築石材の組み合わせ、美意識をめぐり、土・やきものと親和性が高いとされる凝灰岩質石材の質感の真価についても、科学に評価検討を行っていきたいと考えている。
[謝辞]
本研究の一部は、宇都宮市大谷特性活用補助金の助成を受けています。大谷石材協同組合、濱田庄司記念益子参考館、和田 直 氏ほか多くの組織・個人には、調査や標本試料の作製などでご協力をいただきました。皆様に御礼を申し上げます。
[引用文献]
石川智治・橋本優子(2026) 宇都宮大学工学部 石川・何研究室 石材サンプル・カタログ2025; 160p.
中村洋一・相田吉昭・布川嘉英・橋本優子(2025) 栃木県に産する凝灰岩質石材について. 徳次郎石研究会2024(令和6)年度活動成果報告書; p.61-89.

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