講演情報

[T4-O-15](招待講演)沈み込み帯の変成脱水過程とスロー・ファスト地震

*小澤 創1 (1. 東京大学地震研究所)
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【ハイライト講演】沈み込み帯では変成反応によって水が放出されることで,地震の発生メカニズムに影響を与えているとされる.講演者は,変成反応と岩石の変形の相互作用を数理モデルから解読しようと試みている.これに関する最新の研究結果が発表される.  ※ハイライト講演とは...

 沈み込み帯の深部プレート境界では、脱水によって解放された流体が豊富に存在している考えられる。流体はプレート境界断層や、上盤内の断層帯を伝わって上昇し、スロー地震から通常の(ファスト)地震を引き起こすと考えられている。我々はどこまでこのプロセスを定量的にモデル化できるだろうか?
まず、どこにどれだけ流体が存在するかは、化学的な考察が必要になる。熱力学モデルは温度圧力条件下で安定な鉱物組み合わせを導く。そこに沈み込み帯の温度構造モデルと組み合わせることで、どの深さでどれだけの水が生成されるかを計算できる。ただし、沈み込むプレートの含水状態が不確定要素として残る。カスケーディアや南海に適用したモデルはスロー地震発生領域の深部延長で沈み込む海洋地殻から流体が生成されることを示す。
地震のような脆性的な変形過程を支配するのは流体の量よりもその圧力である。ダルシー則により、流体のフラックスから流体圧の勾配が求められるが、ここでは浸透率が大きな不確定要素になる。大きなスケールの浸透率は物性値ではなく、流体のバランスから亀裂の密度や幅を通じて動的に調整される量と考えられる。本研究では、浸透率として実験から得られている、有効圧依存性、温度に依存したヒーリング、摩擦滑りに伴う増加の3つのプロセスを過程し、定常状態における浸透率分布と流体圧分布を同時に推定した。静岩圧から流体圧を引いた有効圧は地震発生帯の広範囲で一定程度になり、その深部延長では深さと共に減少し、1MPa程度になる。この結果は、さまざまな手法から推定されたスロー地震発生域の有効圧と調和的である。
次に求まった有効圧から摩擦強度・応力プロファイルを計算する。粘性流動測として圧力溶解クリープを用いる。浅部では、摩擦強度が弱く変形は摩擦的になり、深部に行くにつれて、温度上昇により、粘性変形が卓越する。この遷移は緩やかで、一般にスロー地震発生帯では、摩擦変形と粘性変形が沈み込みによる変形をおよそ当分配するという結果を得た。これは、スロー地震発生領域で変形した岩石が脆性変形・粘性変形を両方記録していることと調和的である。
ここまで求めたのは定常状態での流体圧、変形機構であった。これは長期的な平均に対応しており、地震サイクル程度の時間スケールでは変動することが考えられる。最後に、浸透率が時間変化するプロセスに伴って流体圧が変動するFault-Valve機構をモデル化し、これによってスロースリップが再現されることを示す。

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