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[T18-P-4]底生有孔虫化石の酸素同位体比層序に基づく上総層群黄和田層中部の年代モデル

*武田 歩珠1、桑野 太輔2、久保田 好美3、サイディ マッソウ3、宇都宮 正志4、亀尾 浩司1 (1. 千葉大学、2. 京都大学、3. 国立科学博物館、4. 産業技術研究所)
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キーワード:

上総層群、黄和田層、酸素同位体層序、底生有孔虫、更新世

 房総半島中部には,鮮新–更新統からなる上総層群が厚く連続して堆積している(三梨ほか,1959).上総層群は地表の露出状況が極めて良好であることに加え,多くのテフラ層が挟在し,異なる分類群の化石を豊富に含むことなどから,標準年代尺度の構築や古環境復元に適している.上総層群が堆積した時期は,Early–Middle Pleistocene Transition(EMPT)と呼ばれる氷期–間氷期サイクルのおもな周期が4.1万年から10万年に変化した時期(Head and Gibbard, 2015)に相当する.したがって,地球規模での気候システムの転換期における本邦周辺の海洋環境の変化を検討するために,この時期の記録を含む地層を研究することが重要である.これまで上総層群の年代層序学的研究では,浮遊性有孔虫化石(例えば五十嵐,1994)や,石灰質ナノ化石(佐藤ほか,1988)の検討が行われた.しかし,これらの研究は上総層群全体の微化石層序を検討したものであり,時間分解能は必ずしも高くない.近年の年代層序学的研究としては,詳細な酸素同位体比層序が検討されており,国本層における千葉セクション(Suganuma et al., 2021),梅ヶ瀬–太田代層(辻ほか,2005),黄和田層(Kuwano et al., 2021)がある.特にKuwano et al.(2021, 2025)は,黄和田層上部を対象としてKd8–O28までの高時間分解能の年代モデルを構築し,同層堆積時における本邦周辺の表層海洋環境を復元した.その一方,それより古い下位の層準については,上総層群の検討はもちろんのこと,世界的に見ても検討した例はほとんどない.そこで本論では上総層群黄和田層中部Kd20–Kd15.3の層準を対象として,底生有孔虫化石の酸素同位体比に基づき高時間分解能の年代モデルを構築することを試みた.
本研究では,千葉県南東部に位置する養老川支流から採取された泥岩試料に含まれる底生有孔虫化石(Bulimina striata,Bolivinita quadrilatera)の酸素同位体比の測定を行った.酸素同位体比の分析は,国立科学博物館筑波分館所有の炭酸塩前処理装置 KIEL Ⅳ Carbonate Deviceと安定同位体比質量分析計MAT253を使用して実施した.産出した底生有孔虫化石の酸素同位体比は,検討層準全体を通じて2.75–3.71‰の間で変動し,3回の氷期–間氷期サイクルが認められた.この酸素同位体比曲線を標準曲線(LR04 Stack curve;Lisiecki and Raymo, 2005)と対比した結果,検討層準は海洋酸素同位体ステージMIS 42–48後半に相当することが明らかとなった.また,対象層準の堆積速度は,上総層群の既存の年代モデル(Pickering et al., 1999,Kuwano et al., 2021)と同様,海面低下期および海退期に増加し,海面上昇期および海進期に減少する傾向を示した.
本研究地域で得られた底生有孔虫化石の酸素同位体比は,標準曲線と比較して全体的に約0.55‰軽い値を示した.一方,MIS 47では両者の差が0.26‰まで小さくなった.その要因はMIS 47の時期に酸素同位体比が重くなることにあり,その時期が寒冷な環境であったと推定される.紀伊半島沖の放散虫化石群集の検討によると,この時期に黒潮が南方へ移動したことが報告されており(Matsuzaki et al., 2015),房総半島沖合では親潮の影響が相対的に強まったと考えられる.このことにより,MIS 47では標準曲線で認められるような軽いピークは認められず,両者の差が小さくなったと解釈される.

引用文献
Head and Gibbard (2015) Quaternary International, 389, 7–46.
五十嵐 (1994) 地質学雑誌, 100, 348–359.
Kuwano et al. (2021) Stratigraphy, 18, 103–121.
Kuwano et al. (2025) Paleoceanography and Paleoclimatology, 40, e2024PA004921.
Lisiecki and Raymo (2005) Paleoceanography, 20, PA1003.
Matsuzaki et al. (2015) Marine Micropaleontology, 118, 17–33.
三梨ほか(1959) 地質調査所月報, 10, 83–98.
Pickering et al.(1999) Journal of the Geological Society, 156, 125–136.
佐藤ほか(1988) 石油技術協会誌, 53, 475–491.
Suganumaet al. (2021) Episodes Journal of International Geoscience, 44, 317–347.
辻ほか (2005) 地質学雑誌, 111, 1-20.

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