講演情報

[T18-P-5]秋田県五城目地域に分布する下部更新統笹岡層の有孔虫化石に基づく古海洋環境変動

*菊地 亀文1、妹尾 達也2、根本 直樹3、池原 実4、松井 浩紀1、山﨑 誠1 (1. 秋田大学大学院国際資源学研究科、2. 総合地質調査株式会社、3. 弘前大学大学院理工学研究科、4. 高知大学海洋コア国際研究所)
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キーワード:

前期更新世、笹岡層、氷河性海水準変動、有孔虫、日本海


 北部日本海沿岸地域には,最上部新生界が広く分布する.日本海の深海の堆積層では炭酸塩溶解により有孔虫化石の産出が不連続になりやすいのに対し,浅海成層ではその影響を受けにくく連続的な記録が期待できる.しかし,欠損のない連続露頭でかつ堆積当時の環境が浅海域であるという条件を満たす必要があるため,日本海地域で浮遊性有孔虫化石を用いた表層環境変動の連続的な復元ができる露頭は限られる.前期更新世は,鮮新世末の北半球高緯度域の氷床拡大に続いて4.1万年周期の氷期-間氷期サイクルで特徴づけられ,約2.15 Maにははじめて本格的な氷河作用が生じた(Rohling et al., 2014).また,約1.7 Maには対馬暖流の恒常的な流入が始まったとされるが(Kitamura and Kimoto, 2006),その直前の表層環境の詳細は未だ明らかではない.秋田県五城目地域の馬場目川河岸には,下部更新統笹岡層が層厚200 m以上にわたりほぼ連続的に露出する.調査地域で追跡可能な古地磁気層序(星ほか,2001;Hoshi and Yamada, 2016)や石灰質ナンノ化石層序(Sato et al., 2001)より,その地質年代は約2.4–2.0 Maに対比される.貝形虫化石の群集解析では,堆積当時の底質環境は,上部漸深海帯から亜沿岸帯で,外洋環境と内湾環境を繰り返したことが明らかになっている(Yamada et al., 2002).一方,本ルートで有孔虫化石を用いた連続的な層序は確立されておらず,海洋表層環境復元の観点から未だ十分な調査はなされていない.そこで,本研究では,同地域の連続露頭を対象に前期更新世の日本海の海洋環境の変動を明らかにすることを目的とする.
本研究では,五城目地域の馬場目川右岸に露出する全長約230 mの連続露頭にて層位間隔1 mで試料を採取し,89試料について浮遊性有孔虫化石の群集解析を行った.また,123試料について全有孔虫に占める浮遊性有孔虫の比率(P/T比)を,234試料について含泥率を求めた.また,酸素同位体比変動を明らかにするため,高知大学海洋コア国際研究所の全国共同利用(26A007)にて分析を行った.
その結果,7属14種の浮遊性有孔虫が確認された.調査層序区間を通してTurborotalita quinqueloba(平均39.6%,最大77.6%)とGlobigerina bulloides(平均27.0%,最大56.8%)が優勢に産し,Globigerinita glutinata,Globoconella inflata praeinflata,Neogloboquadrina incompta,Neogloboquadrina pachydermaが随伴する.P/T比は平均0.40,最大0.74で全体的に低い.現在の日本海においてT. quinquelobaとG. bulloidesは低塩分・富栄養な沿岸水塊に分布し(Domitsu and Oda, 2005),両種の多産と低いP/T比は,堆積時の海洋表層が沿岸水の影響を強く被る低塩分・富栄養な環境にあったことを示唆する.一方,寒冷な環境を示唆するN. pachydermaの相対量は調査層序区間を通じて周期的に極大値を示し,その増加は氷期における海水温の低下を記録している可能性が高い.含泥率は下部~中部で明瞭な傾向は示さず,上部で顕著に減少し,浅海化傾向を示す.講演では底生有孔虫殻の安定酸素同位体比に基づき,氷期-間氷期変動に伴う寒冷種の増減や岩相解析による堆積環境の変遷との比較を行う.

引用文献
Rohling et al., 2014, Nature, 508, 477–482; Kitamura and Kimoto, 2006, Palaeogeogr. Palaeoclimatol. Palaeoecol., 236, 355–366; 星ほか, 2001, 地質雑, 107, 129–141; Hoshi and Yamada, 2016, Quat. Int., 397, 573–588; Sato et al., 2001, J. Min. Coll. Akita Univ., Ser. A, 8, 151–162; Yamada et al., 2002, Palaeogeogr. Palaeoclimatol. Palaeoecol., 185, 115–132; Domitsu and Oda, 2005, Paleontol. Res., 9, 255–270.

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