講演情報
[T18-P-10]南大西洋における上部漸新統–下部中新統石灰質ナノ化石層序
*和田 怜香1、亀尾 浩司1、土井 信寬、桑野 太輔2 (1. 千葉大学、2. 京都大学)
キーワード:
石灰質ナノ化石、漸新世、中新世
石灰質ナノ化石は,石灰質ナノプランクトンと呼ばれる単細胞藻類の石灰質殻の化石である.進化速度が大きく, 時代ごとに特徴的な種が存在することから, ジュラ紀から第四紀に至る化石帯や化石基準面が確立されており,海成堆積物の年代決定に広く利用されてきた.本研究は,比較的温暖な気候から, Mi–1と呼ばれる大規模な寒冷化を経て再び温暖な気候へと変化する古第三紀–新第三紀境界付近,すなわち漸新世と中新世の境界付近を研究対象とする.本研究で扱う古第三紀–新第三紀境界付近は,比較的温暖な気候から, Mi–1と呼ばれる大規模な寒冷化を経て再び温暖な気候へと変化しており,現在型の気候システムが成立したとされる中新世への橋渡しとなる時代である.しかし,同時代に相当する堆積物は必ずしも多くないため, 詳しい年代層序学的研究に乏しく,後の時代と比較して層序学的,古環境学的に不明な点が多い.本研究は,南大西洋の深海底コアの上部漸新統–下部中新統における石灰質ナノ化石を検討し,古海洋環境の復元の先駆けとして石灰質ナノ化石の消長を明らかにすることを目的とした. 本研究では,国際深海科学掘削計画(IODP; International Ocean Discovery Program )第390/393次研究航海で掘削されたHole U1583Cの上部漸新統–下部中新統に相当する24– 17 Maにかけての石灰質ナノ化石層序を検討した.計40試料を偏光顕微鏡下で観察した結果,14 属31 種の石灰質ナノ化石を同定した.全層準を通じて卓越する化石種はCyclicargolithus属およびReticulofenestra属をはじめとする分類群reticulofenestridsである.その他にはDiscoaster属やSphenolithus属の産出を伴った.また,Backman et al. (2012) の化石帯区分のうち,少なくとも7枚の化石基準面が認められた.これらは顕著な化石種の出現や消滅で構成され,特に本研究の南大西洋のサイトで認められた Sphenolithus ciperoensisの上限およびSphenolithus delphixの上限および下限は,他地域でもほぼ同時であることから有効な化石基準面である.一方, Sphenolithus capricornutusの産出上限は,他地域で認められる上限の層準とは大きな差異が認められたた.また, 既存の化石基準面として取り扱われていないReticulofenestra stavensis, Cyclicargolithus abisectusおよびZygrhablithus bijugatusの産出上限も明瞭なイベントとして認識できることから,それらは新たな化石基準面として利用できる可能性がある.一方で,多産するCyclicargolithus属およびReticulofenestra属は,新第三紀および第四紀の同種のグループと同様,個体サイズの分布が時代とともに多様化し,次第に大型の個体が見られる傾向がある.特にReticulofenestra属の大型の個体は,クロンC5En/C5Er境界付近と,クロンC6Bn.1rでそれぞれ消滅し,Cyclicargolithus属の大型の個体は,クロンC6Bn.1nにおいて消滅する.これらは上部中新統や鮮新統でみられるイベントと同様,顕著な層序学的指標となると考えられるとともに,クロンC6Bn.1rにおいて消滅するイベントは,漸新世/中新世境界の指標になる可能性がある.これらの変化が,種としての違いであるかどうかを明らかにするためには電子顕微鏡を用いた形態的な検討を詳しく行う必要がある .
文献Backman et al., 2012, Newsletters on stratigraphy, 45, 221–244.
文献Backman et al., 2012, Newsletters on stratigraphy, 45, 221–244.
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