講演情報

[T18-P-13]上部白亜系蝦夷層群のパリノファシス分析・地球化学分析に基づくアジア大陸東縁部の古環境変動復元

*都丸 大河1、高嶋 礼詩2、ニェフヴェドヴィッチ マリウス3、荒尾 眞成1、黒柳 あずみ2 (1. 東北大学理学研究科地学専攻、2. 東北大学学術資源研究公開センター 東北大学総合学術博物館、3. ワルシャワ大学地質学部)
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キーワード:

後期白亜紀、渦鞭毛藻シスト、XRF分析

研究背景
北海道中軸部に広く分布する白亜系蝦夷層群は,保存状態の良い化石が豊富に産出することから,層序学・古生物学的研究が多く実施されている.このことから,蝦夷層群は北西太平洋域における白亜系模式層序として位置づけられる(Takashima et al., 2004).また,蝦夷層群は,アジア大陸縁辺部に位置した前弧海盆堆積体であり,アジア大陸での気候変動と海洋環境の変化の関係性を復元する上で極めて有用である.しかしながら,同一区間で地球化学分析と有機物分析を併せて実施した研究例は,OAE2など一部の区間に限られる(Takashima et al., 2024). 目的北海道北西部苫前地域の上部白亜系蝦夷層群の泥岩試料を対象に,パリノファシス分析・渦鞭毛藻シスト化石群集解析・XRF分析・C-S分析・DOP分析を実施し,セノマニアン期からカンパニアン前期にかけてのアジア大陸縁辺部の海洋における有機物組成の挙動・大陸風化強度の増減・底層の酸化還元環境変化の復元を試みた.
パリノファシス分析
粒径20μm以上の有機物粒子は,全区間を通じて陸源の有機物粒子が全体の95%を占め,そのほとんどが植物片で構成されていた.花粉・胞子化石は全試料から確認され,特に裸子植物由来の花粉はコニアシアン階に多く確認された.一方,海洋起源の有機物粒子は存在割合が低いが,OAE2直前など一部の炭素同位体比変動イベント層準付近では,渦鞭毛藻シスト化石が増加していた.
渦鞭毛藻シスト化石群集
渦鞭毛藻シスト化石は,上部セノマニアン階から下部チューロニアン階にかけては比較的多く確認された.一方で,コニアシアン階では著しく少なかった.また,群集構成は多くの層準で独立栄養種が優占的であったが,Isabelidinium属やSubtilishpaera属などの従属栄養種の割合が増加した層準が,複数の炭素同位体比変動イベント層準付近で確認された.
大陸風化強度
各種化学風化指標(K/Rb比,CIA,CIX)は,上部チューロニアン階で特に高い値を示した.また,一部の炭素同位体比変動イベント層準付近では,相対的な増加が確認された.一方で,チューロニアン/コニアシアン境界付近から中部コニアシアン階にかけては顕著な減少が示唆された.
底層の酸化還元環境
TOC・TSは,それぞれ約0.3-1.1 wt.%および約0.2-1.2 wt.%の範囲を変動した.特に,渦鞭毛藻シスト化石の増加層準では,TOC・TSともに比較的高い値を示した.DOP分析では,多くの区間で酸化還元環境はoxicからdysoxicを示すが,OAE2層準の直下と下部チューロニアン階の2層準でanoxicを示した.
各時代の特徴・総括
セノマニアン後期からチューロニアン前期にかけては,複数の炭素同位体比変動イベントの発生と同時に,大陸風化強度と渦鞭毛藻が増加し,海洋底層が還元的環境に変化したと推定される.これら一連の変化は,気候変動により大陸から海洋に栄養塩が供給され,表層の一次生産が刺激されたことに起因する可能性がある.一方で,チューロニアン後期には,大陸風化強度は最大となり海洋底層が還元的環境に変化したにも関わらず,渦鞭毛藻の増加は確認されなかった.コニアシアン期では,ほとんどの期間で大陸風化強度が低くかつ酸化的な環境が卓越したことから,この期間には乾燥化が進行したと推定される.サントニアン~カンパニアン期では,複数の炭素同位体比変動イベント周辺で大陸風化の強化・渦鞭毛藻の増加・海洋底層の還元的環境への変化が確認され,この時代においても大陸からの栄養塩供給に伴う一次生産の急増が複数発生した可能性がある.
参考文献
Takashima et al., 2004, Cretaceous Res., 25.3, 365-390.
Takashima et al., 2024, Commun. Earth Environ., 5(1), 85.
Tyson, 1993, Kluwer Academic Publishers, 153-191.

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