講演情報
[T18-P-18]岩手県安家地域における北部北上帯中部三畳系層状チャートのコノドント化石層序
*塩原 拓真1、武藤 俊2、尾上 哲治3 (1. 九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻、2. 産業技術総合研究所地質調査総合センター 、3. 九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)
キーワード:
三畳紀、コノドント、ラディニアン、アニシアン、層状チャート
中期三畳紀は安定した乾燥気候が低~中緯度の大陸内陸部に広がっていたと考えられてきたが,テチス海沿岸の一部地域からは,後期ラディニアン(ロンゴバルディアン)に,湿潤化を示す地質記録が残されていることが明らかになってきた[1].そして,これらの時代には,放散虫やコノドントといった主要な海洋生物が多様化したことも報告されている[2] [3].中期三畳紀の湿潤化と遠洋性・外洋性生物の多様化は関連したイベントであった可能性があるが,これらの報告はテチス海の限られた陸棚堆積物を対象としており,当時の超海洋であるパンサラッサ海における同時代の海洋環境変化や生物多様化についての研究例は乏しい.この問題に対し,著者らはパンサラッサ海遠洋域の堆積物である西南日本美濃帯坂祝地域の層状チャートにおいて化石層序と化学層序を構築し,前期ラディニアン―後期ラディニアン境界付近で,放散虫の形態変化とリンとカルシウムの顕著な増加が発生していることが明らかになった[4].しかし,これらの現象が局所的なものか,あるいはパンサラッサ海全域に波及した広域的なイベントであるかを検証するためには,他地域のパンサラッサ海遠洋性堆積物との対比が不可欠である.
そこで本研究では,ラディニアンの環境変動の広域対比を可能にするために,パンサラッサ海遠洋域の深海底堆積物におけるコノドント化石層序を東北日本の北部北上帯において検討した.検討セクションは,岩手県岩泉町折壁川沿いの林道に位置する折壁川セクションである.本セクションは北部北上帯の大鳥ユニットに属し,層厚約23 mの灰色層状チャートからなる.層状チャートは単層厚5~10cm程度のチャートと層間の珪質粘土岩からなり,セクション下部から上部にかけて,チャートの相対的な厚さが増すとともに,単層の分離が良くなる傾向がみられる.本研究ではチャート試料60試料を採取し,NaOH法[5]を用いて微化石抽出処理を行った.
本研究の結果,このセクション最下部からは前期アニシアンを特徴づけるChiosella timorensisが,中部からは中期から後期アニシアンに特徴的なNeogondolella shoshonensisやParagondolella bulgarica groupが,中上部からは後期アニシアンから前期ラディニアンに特徴的なNeogondolella ex gr. constricta,後期アニシアンから後期ラディニアンに特徴的なParagondolella excelsa groupやParagondolella trammeri groupが,上部ではラディニアンに特徴的なSephardiella hungaricaや後期ラディニアンに特徴的なSephardiella cf. mungoensisが産出した.なお, このセクションでは,放散虫化石は得られなかった.以上の結果より,折壁川セクションの約23 mの灰色層状チャートは,前期アニシアンから後期ラディニアンにかけて連続的に堆積したことが明らかになった. 本研究により,階以下の年代層序単元で美濃帯と対比可能な中期三畳系のパンサラッサ海遠洋域堆積岩層序を,東北日本から初めて認識することができた.
引用文献
[1]Preto, N. et al., 2010, PPP, 290, 1-10
[2]Kiliç, A. M. et al., 2015, PROCED EARTH PLAN SC, 15, 321-324
[3]Ozsvárt, P. et al., 2023, Geo.Alp., 20, 1-96
[4]塩原ほか, 2025, 日本地質学会第132年学術大会, T12-O-16.[5]Rigo, M., 2023, Palaeontology, 66, 4, 1-8
コメント
コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン
