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[T12-P-6]岩手県北部に分布する古第三系野田層群の堆積環境と古土壌:堆積システム変遷に伴う古土壌の変化

*葉田野 希1 (1. 新潟大学理学部)
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キーワード:

古第三紀、古土壌、堆積システム、赤色古土壌、野田層群

はじめに:古第三紀は,アジア大陸とその縁辺域において,現在につながる気候システムが形成される時代である.しかし,当時の大陸縁辺域における陸域古環境の記録は少ない.古土壌は,地表面が比較的安定した期間に形成され,気候条件,土壌水分条件,土壌形成の継続時間を記録することから,陸域古環境の適した記録媒体である.本研究では,岩手県久慈市から野田村に分布する古第三系陸成層の野田層群を対象とし,堆積相解析に基づく堆積環境の復元と古土壌の記載を行った.これにより,堆積システムの変遷と古土壌発達との関係,および古土壌形成時の環境条件を検討した.

地質概説:野田層群は,下位より港層と久喜層にわけられる(島津・寺岡,1962).従来,本層群の堆積年代は前期漸新世とされてきた(島津・寺岡,1962).一方,港層からは暁新世~前期始新世とされる大型植物化石群が報告されている(堀内・植村,2009).

結果:港層は下位より,円礫からなる斜交層理礫層,塊状・不淘汰の礫支持礫層,およびフォアセット層理砂層からなるユニットM-I(礫質網状河川),良淘汰平行葉理砂層,砂礫互層,および含礫砂層からなるユニットM-II(河口〜海岸遷移帯),良淘汰平行葉理凝灰質砂層,およびトラフ型斜交層理砂層からなるユニットM-III(前浜~上部外浜),砂泥互層,凝灰質砂層,有機質シルト層,および亜炭層からなるユニットM-IV(氾濫原),円礫からなる礫支持礫層,およびフォアセット層理砂層からなるユニットM-V(礫質網状河川),泥層と亜炭層からなるM-VI(後背湿地)に区分される.ユニットM-IからM-IIIにかけては上方細粒化・深水化サクセッションを,ユニットM-IIIからM-Vにかけては上方浅海化・陸化サクセッションを示す.これらは,それぞれ海進とその後の海退を示す.ユニットM-III最上部からM-IVにかけて,海成堆積物を母材とし,A層,Bw層,C層に土層分化した古土壌が発達する.ユニットM-IVの砂泥互層には,主に細根化石の存在によって認定される,厚さ数cm程度の弱発達古土壌が認められる.また,立木化石が凝灰質砂層によって埋積された産状が認められ,古地表面が急速に埋没したことが示唆される.
久喜層は下位より,円礫からなる礫支持礫層,およびフォアセット層理砂層からなるユニットK-I(礫質網状河川),主にシルト~粘土層からなり,側方では亜円礫~円礫からなる礫支持礫層,斜交層理砂層,含礫泥層,および砂泥互層へと移化するユニットK-II(湖沼〜湖岸低地),斜交層理砂層,砂泥互層,および砂質シルト層からなるユニットK-III(砂質網状河川)に区分される.ユニットK-IIには,層厚約560 cmに達する赤色粘土層が挟在する.この赤色粘土層は,全体として塊状で割れやすく,土壌団粒構造が発達する.また,層厚数十cmの暗紫色を呈する斑紋状層準を約4層挟み,根痕周辺にはドラブ・ハローが認められる.このことから,本古土壌は,酸化的条件下での土壌形成の過程で,地下水グライ化を繰り返し被った強発達古土壌と解釈できる.また,同ユニットには,A層,Bt層,およびC層に明瞭に土層分化し,根化石を高密度に産する強発達の有機質古土壌が認められる.この古土壌には,乾裂痕に加え,マクロ~ミクロスケールの土壌団粒構造が認められる.一方,ユニットK-IIIには,主に根痕の存在によって認定される弱発達古土壌が発達する.

考察:野田層群では,港層下部の礫質網状河川システムから,海進に伴い河口〜海岸遷移帯を経て前浜〜上部外浜環境へ移行し,その後の海退・陸化に伴って氾濫原・礫質網状河川へ変化したと考えられる.久喜層では,礫質網状河川から湖沼〜湖岸低地へと移行し,湖盆周縁から粗粒砕屑物の供給を受け,砂質網状河川システムによって埋積されたと考えられる.このような堆積環境の違いに対応して,古土壌の発達程度にも違いが認められる.港層には弱発達古土壌が卓越し,立木化石が凝灰質砂層によって埋積された産状が認められる.これは,頻繁な堆積作用により土壌形成が断続的に中断され,個々の地表面の継続期間が短かったことを示すと考えられる.
一方,久喜層のユニットK-IIでは,厚い赤色古土壌や,明瞭な土層分化を示す強発達の有機質古土壌が認められる.これらは,湖周辺の安定した地形面における堆積速度の低下や長期間の地表面の安定を示すと考えられる.港層と久喜層における古土壌の特徴の差異は,堆積システムに規定された堆積速度,地表面の継続時間,局地的な地形条件の違いを反映していると考えられる.一方,久喜層に発達する赤色古土壌には,酸化的条件を示す特徴とグライ化を示す特徴が共存する.このことは,土壌形成期間に土壌水分条件が変動していたことを示す.今後の課題は,堆積年代の制約と古土壌の鉱物・化学的特徴の検討である.

文献:堀内・植村, 2009,日本古生物学会年会講演予稿集 45. 島津・寺岡,1962, 5万分の1地質図幅「陸中野田」.地質調査所 63p.

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