講演情報
[T12-P-8]岩手県久慈層群の陸成層から汽水成層における堆積環境の側方変化
*山岸 昇玄1、安藤 卓人1、千代延 俊1 (1. 秋田大学大学院 国際資源学研究科)
キーワード:
側方変化、堆積環境、有機物、白亜紀、久慈層群
[はじめに]
蝦夷前弧堆積盆を埋積する上部白亜系から古第三系の非海成層は,炭化水素鉱床の根源岩として注目されている (大澤ほか, 2002).特に,上部白亜系久慈層群は,本堆積盆北上亜堆積盆の西縁相を構成し,堆積相解析や層序学的観点を中心とした研究が行われてきている (島津・寺岡, 1962; 吉田ほか, 1987; 照井・長浜, 1995; Ando, 1997; 2003).そして,本層群のうち非海成層に当てはまるのが陸成~汽水成層の玉川層と沢山層である.特に沿岸環境下で形成した玉川層は高い炭化水素ポテンシャルを示す炭質泥岩が胚胎する一方で,未熟成であることを発表者は指摘している (山岸ほか, 2025).しかし,両層は側方変化が著しいことが発表者によって認められ,その詳細については明らかになっていない.そこで本研究では地質調査による詳細な岩相記載を主軸として久慈層群玉川層及び沢山層の側方変化を理解した上で,側方変化における有機物特性の違いを理解した.
[研究地域・手法]
岩手県久慈市および野田村に位置する合計13セクションで地質調査を実施し,岩相記載及び泥岩・シルト岩の試料採取を行った.加えて, Rock-Eval分析・全硫黄分析の有機地球化学分析,パリノファシス分析およびパリノモルフ分析を行った.
[結果・考察]
玉川層は地質調査より,北西から南東にかけて夏井川・沢山川・枝成沢・大沢田川・滝ノ沢・宇部川支流1・宇部川支流2・玉川海岸にて観察された.岩相は本層分布域の北西部から中央部にかけては主に礫岩で構成されており,それより南東のでは主に礫岩・砂岩で構成され,最南東部の玉川海岸セクションでは,これらの岩相に加えてカキ礁やフレーザー層理が発達した砂岩や比較的厚いシルト岩などで構成されており,最も岩相のバリエーションが多いことが分かった.
さらに,採取したシルト径以下の岩石を含む岩相のみを比較すると4つのグループに区分でき,グループ1には最も北西側に位置する夏井川セクションの礫岩直上に分布するシルト岩,グループ2には中央部に位置する大沢田川セクション・滝ノ沢セクションの礫岩直上に分布する炭質泥岩,グループ3には中央部から南東側に位置する大沢田川セクション・滝ノ沢セクション・宇部川セクション・玉川海岸セクションの砂岩直上の炭質泥岩とシルト岩,グループ4には中央部に位置する大沢田川セクションの上方細粒化を示す炭質堆積物がそれぞれ分類された.
また,グループ1は全硫黄量が0%で,有機物粒子中で不透明植物片が70%を超える割合で保存され,試料から海生パリノモルフが観察されなかったことから,海水の寄与のない酸化的な河川環境下で堆積したことを反映していると考えられる.グループ2は低い全硫黄量を示し,有機物粒子中で不透明植物片が80%を超える割合で保存され,海生パリノモルフである有孔虫ライニングが観察されたことから,海水の寄与があり,酸化的で高エネルギー環境下で堆積したことを反映していると考えられる.グループ3は,保存されているアモルファス有機物の内,蛍光しない非蛍光性アモルファス有機物の割合と全硫黄量に正の相関が認められ,海生パリノモルフである有孔虫ライニングや渦鞭毛藻シストが観察された.これより潮汐の影響がある塩性湿地のような環境を反映していると考えられる.グループ4は,保存されているアモルファス有機物の内,強く蛍光する蛍光性アモルファス有機物が卓越して保存され,さらに全硫黄量が分析試料の中では最も高く,底生有孔虫ライニングと渦鞭毛藻シストが観察されたことから,大量の炭質堆積物が短時間で輸送されたことを反映していると考えられる.
そして沢山層は地質調査より,北西から南東にかけて夏井川・沢山川・枝成沢・枝成沢支流・大沢田川・秋葉・日吉町・小屋畑川・谷地中川にて観察された.岩相は本層分布域の北西部から中南東部にかけてのセクションでは主に凝灰岩・凝灰質砂岩・炭質泥岩・凝灰質シルト岩で構成されており,それより南東のセクションでは主に礫岩,凝灰質砂岩・炭質泥岩・凝灰質シルト岩で構成されていることが分かった.これにより,本層は本層分布域の北西部から中南東部にかけて氾濫原のような環境が広がり,南東部では河口に広がるデルタのような環境であったことが示唆された.
今後は,沢山層分布域で採取した試料の有機地球化学分析や有機物粒子の顕微鏡観察を通して,より詳細に陸域~汽水域環境における堆積環境の側方変化を検討する.
[引用文献]
Ando, 1997, The Geological Society of Japan, 48
Ando, 2003, Journal of Asian Earth Sciences, 21
大澤ほか, 2002, 石油技術協会誌, 67(1)
島津・寺岡, 1962, 陸中野田(青森第59号), 5萬分の1地質図幅説明書
照井・長浜, 1995, 地質学論集, 45
山岸ほか, 2025, 日本地質学会第132年学術大会講演要旨
吉田ほか, 1987, 陸中大野地域の地質(青森第49号), 5万分の1地質図幅説明書
蝦夷前弧堆積盆を埋積する上部白亜系から古第三系の非海成層は,炭化水素鉱床の根源岩として注目されている (大澤ほか, 2002).特に,上部白亜系久慈層群は,本堆積盆北上亜堆積盆の西縁相を構成し,堆積相解析や層序学的観点を中心とした研究が行われてきている (島津・寺岡, 1962; 吉田ほか, 1987; 照井・長浜, 1995; Ando, 1997; 2003).そして,本層群のうち非海成層に当てはまるのが陸成~汽水成層の玉川層と沢山層である.特に沿岸環境下で形成した玉川層は高い炭化水素ポテンシャルを示す炭質泥岩が胚胎する一方で,未熟成であることを発表者は指摘している (山岸ほか, 2025).しかし,両層は側方変化が著しいことが発表者によって認められ,その詳細については明らかになっていない.そこで本研究では地質調査による詳細な岩相記載を主軸として久慈層群玉川層及び沢山層の側方変化を理解した上で,側方変化における有機物特性の違いを理解した.
[研究地域・手法]
岩手県久慈市および野田村に位置する合計13セクションで地質調査を実施し,岩相記載及び泥岩・シルト岩の試料採取を行った.加えて, Rock-Eval分析・全硫黄分析の有機地球化学分析,パリノファシス分析およびパリノモルフ分析を行った.
[結果・考察]
玉川層は地質調査より,北西から南東にかけて夏井川・沢山川・枝成沢・大沢田川・滝ノ沢・宇部川支流1・宇部川支流2・玉川海岸にて観察された.岩相は本層分布域の北西部から中央部にかけては主に礫岩で構成されており,それより南東のでは主に礫岩・砂岩で構成され,最南東部の玉川海岸セクションでは,これらの岩相に加えてカキ礁やフレーザー層理が発達した砂岩や比較的厚いシルト岩などで構成されており,最も岩相のバリエーションが多いことが分かった.
さらに,採取したシルト径以下の岩石を含む岩相のみを比較すると4つのグループに区分でき,グループ1には最も北西側に位置する夏井川セクションの礫岩直上に分布するシルト岩,グループ2には中央部に位置する大沢田川セクション・滝ノ沢セクションの礫岩直上に分布する炭質泥岩,グループ3には中央部から南東側に位置する大沢田川セクション・滝ノ沢セクション・宇部川セクション・玉川海岸セクションの砂岩直上の炭質泥岩とシルト岩,グループ4には中央部に位置する大沢田川セクションの上方細粒化を示す炭質堆積物がそれぞれ分類された.
また,グループ1は全硫黄量が0%で,有機物粒子中で不透明植物片が70%を超える割合で保存され,試料から海生パリノモルフが観察されなかったことから,海水の寄与のない酸化的な河川環境下で堆積したことを反映していると考えられる.グループ2は低い全硫黄量を示し,有機物粒子中で不透明植物片が80%を超える割合で保存され,海生パリノモルフである有孔虫ライニングが観察されたことから,海水の寄与があり,酸化的で高エネルギー環境下で堆積したことを反映していると考えられる.グループ3は,保存されているアモルファス有機物の内,蛍光しない非蛍光性アモルファス有機物の割合と全硫黄量に正の相関が認められ,海生パリノモルフである有孔虫ライニングや渦鞭毛藻シストが観察された.これより潮汐の影響がある塩性湿地のような環境を反映していると考えられる.グループ4は,保存されているアモルファス有機物の内,強く蛍光する蛍光性アモルファス有機物が卓越して保存され,さらに全硫黄量が分析試料の中では最も高く,底生有孔虫ライニングと渦鞭毛藻シストが観察されたことから,大量の炭質堆積物が短時間で輸送されたことを反映していると考えられる.
そして沢山層は地質調査より,北西から南東にかけて夏井川・沢山川・枝成沢・枝成沢支流・大沢田川・秋葉・日吉町・小屋畑川・谷地中川にて観察された.岩相は本層分布域の北西部から中南東部にかけてのセクションでは主に凝灰岩・凝灰質砂岩・炭質泥岩・凝灰質シルト岩で構成されており,それより南東のセクションでは主に礫岩,凝灰質砂岩・炭質泥岩・凝灰質シルト岩で構成されていることが分かった.これにより,本層は本層分布域の北西部から中南東部にかけて氾濫原のような環境が広がり,南東部では河口に広がるデルタのような環境であったことが示唆された.
今後は,沢山層分布域で採取した試料の有機地球化学分析や有機物粒子の顕微鏡観察を通して,より詳細に陸域~汽水域環境における堆積環境の側方変化を検討する.
[引用文献]
Ando, 1997, The Geological Society of Japan, 48
Ando, 2003, Journal of Asian Earth Sciences, 21
大澤ほか, 2002, 石油技術協会誌, 67(1)
島津・寺岡, 1962, 陸中野田(青森第59号), 5萬分の1地質図幅説明書
照井・長浜, 1995, 地質学論集, 45
山岸ほか, 2025, 日本地質学会第132年学術大会講演要旨
吉田ほか, 1987, 陸中大野地域の地質(青森第49号), 5万分の1地質図幅説明書
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