講演情報
[T12-P-11]粒度・組成データを用いたAIによる堆積相区分の再現性の検証-和歌山県那智勝浦町の沿岸堆積物コアの例-
*松本 弾1 (1. 産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)
キーワード:
AI、堆積相、粒度・組成、南海トラフ、イベント堆積物
近年,機械学習や生成AIの発展により,地球科学分野でも地質情報の自動解析・自動分類に関する研究が進展している.しかし,堆積相区分は粒度・組成・堆積構造など複数の情報を統合した地質学的判断を必要とするため,自動化の妥当性については十分に検証されていない.本研究では,和歌山県那智勝浦町の沿岸堆積物コアから得られた粒度および組成データについて統計解析・機械学習による特徴抽出と相関分析を行うとともに,Copilotを用いた堆積相区分を実施した.その結果を人による判読結果と比較することで,AIによる堆積相判読の再現性,有効性を検証し,適用上の課題を検討した.
本研究で用いた試料は,文部科学省委託事業「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」(令和2~6年度)の一環として,和歌山県那智勝浦町の沿岸低地の3地点(SS-2,13,16)で採取した,イベント堆積物を含む沿岸堆積物からなるジオスライサー試料(コア長約180~290 ㎝)である(文部科学省委託事業「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」令和6年度成果報告書,2025).各コアとも深さ方向に1 cm間隔で分割し,薬品処理による有機物・炭酸塩の除去,メッシュシートを用いた泥粒子の除去を行った後,砂成分を画像解析式の粒度分析装置にかけ,得られた分析結果を統計処理した.これにより,組成(含泥率・有機物含有率・炭酸塩含有率・含砂率)と砂成分の粒度(平均粒径・中央粒径・淘汰度・歪度・尖度)に関するデータセットを得た.また,これらの粒度・組成データに加えて,堆積構造や生痕の入り方などを基に堆積相区分を行った結果,SS-2と13のコアにはA~Dの4つの堆積相,SS-16のコアにはA~Fの6つの堆積相を認定することができた.
次に,これらのデータを用いて,組成と粒度に関する各パラメータ間の相関関係と堆積相との関連性を分析するとともに,機械学習による堆積相自動分類の精度を検証した.パラメータ間の相関分析の結果,粒度平均値と淘汰度の間に強い負の相関(r = -0.85)が認められ,粗粒な堆積物ほど淘汰が良好であることが示された.また,淘汰度と歪度(r = -0.84),歪度と尖度(r = -0.71)の間にも強い負の相関が確認された.組成では,含泥率と炭酸塩含有率(r = -0.59),炭酸塩含有率と含砂率(r = -0.61)に負の相関が認められた.一方,粒度中央値と平均値の間には強い正の相関(r = 0.78)があり,粒度指標の一貫性が確認された.
機械学習による堆積相区分においては,SS-2と13のコアのデータセットを教師データとして,SS-16の解析を実行してもらい,正答率を検証した.堆積相別の特徴量平均値を比較した結果,教師データにおいて堆積相Aは含泥率が最も高く(55.8%)含砂率が低い(35.1%)細粒堆積物を,堆積相Bは含砂率が最も高い(67.7%)粗粒堆積物を,堆積相Dは炭酸塩含有率が顕著に高い(23.6%)堆積物を特徴とすることが明らかになった.分類精度の検証では,SS-2およびSS-13(306サンプル)を教師データ,SS-16(89サンプル,堆積相A〜D)をテストデータとして評価した.ユークリッド距離に基づく最近接重心法では48.9%,5cm移動平均適用後は49.4%,サポートベクターマシン(SVM)のハイパーパラメータ最適化後は最高54.0%の正解率を達成した.しかし,いずれの手法でも堆積相A,B,Cの再現率は0%であり,テストデータの特性が教師データと系統的に異なることが示唆された.したがって,自動分類の実用化には,空間的変動を考慮した教師データの拡充と堆積相定義の再検討が必要であると考えられる.
謝辞
本報告には文部科学省委託事業「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」ならびに「南海トラフ地震等巨大地震災害の被害最小化及び迅速な復旧・復興に資する地震防災研究プロジェクト」の成果の一部を使用している.ジオスライサー試料の採取と分析にあたり,澤井祐紀氏・行谷佑一氏・谷川晃一朗氏・嶋田侑眞氏・加藤睦美氏・小山亮子氏(産総研)ならびに復建調査設計株式会社にご尽力いただいた.
引用文献
文部科学省委託事業「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」令和6年度成果報告書, 398p, 2025.
本研究で用いた試料は,文部科学省委託事業「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」(令和2~6年度)の一環として,和歌山県那智勝浦町の沿岸低地の3地点(SS-2,13,16)で採取した,イベント堆積物を含む沿岸堆積物からなるジオスライサー試料(コア長約180~290 ㎝)である(文部科学省委託事業「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」令和6年度成果報告書,2025).各コアとも深さ方向に1 cm間隔で分割し,薬品処理による有機物・炭酸塩の除去,メッシュシートを用いた泥粒子の除去を行った後,砂成分を画像解析式の粒度分析装置にかけ,得られた分析結果を統計処理した.これにより,組成(含泥率・有機物含有率・炭酸塩含有率・含砂率)と砂成分の粒度(平均粒径・中央粒径・淘汰度・歪度・尖度)に関するデータセットを得た.また,これらの粒度・組成データに加えて,堆積構造や生痕の入り方などを基に堆積相区分を行った結果,SS-2と13のコアにはA~Dの4つの堆積相,SS-16のコアにはA~Fの6つの堆積相を認定することができた.
次に,これらのデータを用いて,組成と粒度に関する各パラメータ間の相関関係と堆積相との関連性を分析するとともに,機械学習による堆積相自動分類の精度を検証した.パラメータ間の相関分析の結果,粒度平均値と淘汰度の間に強い負の相関(r = -0.85)が認められ,粗粒な堆積物ほど淘汰が良好であることが示された.また,淘汰度と歪度(r = -0.84),歪度と尖度(r = -0.71)の間にも強い負の相関が確認された.組成では,含泥率と炭酸塩含有率(r = -0.59),炭酸塩含有率と含砂率(r = -0.61)に負の相関が認められた.一方,粒度中央値と平均値の間には強い正の相関(r = 0.78)があり,粒度指標の一貫性が確認された.
機械学習による堆積相区分においては,SS-2と13のコアのデータセットを教師データとして,SS-16の解析を実行してもらい,正答率を検証した.堆積相別の特徴量平均値を比較した結果,教師データにおいて堆積相Aは含泥率が最も高く(55.8%)含砂率が低い(35.1%)細粒堆積物を,堆積相Bは含砂率が最も高い(67.7%)粗粒堆積物を,堆積相Dは炭酸塩含有率が顕著に高い(23.6%)堆積物を特徴とすることが明らかになった.分類精度の検証では,SS-2およびSS-13(306サンプル)を教師データ,SS-16(89サンプル,堆積相A〜D)をテストデータとして評価した.ユークリッド距離に基づく最近接重心法では48.9%,5cm移動平均適用後は49.4%,サポートベクターマシン(SVM)のハイパーパラメータ最適化後は最高54.0%の正解率を達成した.しかし,いずれの手法でも堆積相A,B,Cの再現率は0%であり,テストデータの特性が教師データと系統的に異なることが示唆された.したがって,自動分類の実用化には,空間的変動を考慮した教師データの拡充と堆積相定義の再検討が必要であると考えられる.
謝辞
本報告には文部科学省委託事業「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」ならびに「南海トラフ地震等巨大地震災害の被害最小化及び迅速な復旧・復興に資する地震防災研究プロジェクト」の成果の一部を使用している.ジオスライサー試料の採取と分析にあたり,澤井祐紀氏・行谷佑一氏・谷川晃一朗氏・嶋田侑眞氏・加藤睦美氏・小山亮子氏(産総研)ならびに復建調査設計株式会社にご尽力いただいた.
引用文献
文部科学省委託事業「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」令和6年度成果報告書, 398p, 2025.
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