講演情報
[T11-P-1]房総半島,養老川低地の沖積層と1923年関東地震による液状化層
*小島 隆宏1,3、吉田 剛2、風岡 修3、野々垣 進4、中澤 努4 (1. 北海道立総合研究機構 エネルギー・環境・地質研究所、2. 千葉県環境研究センター 地質環境研究室、3. 元千葉県環境研究センター、4. 産業技術総合研究所 地質調査総合センター)
キーワード:
沖積層、千葉県、養老川、関東大震災、液状化
【はじめに】
房総半島の養老川下流域の低地(養老川低地)には,最終氷期最盛期以降の海面の上昇に伴って形成された沖積層が広く分布する.一般に,沖積層は軟弱であり,大規模地震時には地震動を増幅し,揺れによる被害や液状化被害を引き起こすことがある.実際に養老川低地では,1923年関東地震時に木造家屋の倒壊や液状化による地盤の変形が広範囲で発生した(地質調査所, 1925).
最近我々は,産業技術総合研究所の“都市域の地質地盤図「千葉県中央部」”(野々垣ほか, 2026)の整備において,層序ボーリングおよび既存ボーリングデータに基づき,養老川低地と周辺域における沖積層の層序と分布形態を明らかにした(小島ほか, 2026).本発表では,これらの成果に基づいて養老川低地の沖積層の特徴を紹介する.さらに,同地域の中で関東地震時に顕著な液状化被害を受けた市原市町田においてボーリング調査を行い,液状化層を解析した結果についても併せて報告する.
【沖積層の分布と層序】
養老川低地の沖積層は更新統の下総層群や段丘堆積物を不整合に覆う.沖積層の基底面には平坦な面を開析した埋没谷が発達している.埋没谷の最深部は養老川河口よりも約4 km南西にあり標高−40 m以深に達する.埋没谷はそこから南東方向に延び,市原市町田付近で現在の養老川と谷軸が重なり,さらに上流側では現河道に沿うように台地を開析して発達している.
本地域の沖積層は,大きく下部と上部に区分される.下部は,主に埋没谷内に分布し,河川成の砂礫層,砂層,泥層から構成され,泥炭層や有機質泥層を伴う.上部は本地域に広く分布しており,しばしば貝殻を含む砂泥互層を主体とし,内陸域では地表付近に河川成の砂礫層を伴う.砂泥互層は臨海部ほど貝殻を多く含むことから海水の影響を強く受けていたと考えられる.また,沖積層上部は,東京低地や千葉県東京湾岸北部地域における同層準の沖積層に比べて砂分に富む傾向にある.
【関東地震時の液状化層】
市原市町田では,関東地震時にすべての木造家屋が倒壊したほか,地面には液状化による亀裂や陥没が多数生じた(地質調査所, 1925).亀裂は宅地において多く認められたとされ,当時の宅地の多くは自然堤防上に位置していたことから,本研究ではこの自然堤防上でオールコアのボーリング調査を実施した.
ボーリング調査(GS-IH-1)では,地表付近から深度31.44 m(標高−26.30 m)まで沖積層が確認され,このうち深度6 m(標高−0.86 m)以浅は,細粒〜中粒砂層を主体とする河川流路〜氾濫原堆積物からなる(小島ほか, 2026のユニット5).液状化が発生した堆積物では,初生的な堆積構造が乱され,塊状無層理部や変形構造が生じるとされる(風岡ほか, 2003).本ユニットの砂層中には,塊状無層理部が多数認められるほか,典型的な液状化構造である砂脈も確認された.したがって,同ユニットの砂層が関東地震の際に液状化したと考えられる.また,液状化痕とみられる部分はいずれも,砂層よりも透水性の低い泥質堆積物に覆われている.このような難透水層の存在により,地震時に砂層中の間隙水圧が局所的に上昇し,液状化の発生が促された可能性がある.
【引用文献】
地質調査所, 1925. 地質調査所特別報告 第2号, 185p.
野々垣ほか, 2026. 都市域の地質地盤図「千葉県中央部」(https://gbank.gsj.jp/urbangeol/ja/map_chibaCA/index.html)
小島ほか, 2026. 都市域の地質地盤図「千葉県中央部」説明書, p. 9–18.
風岡ほか, 2003. アーバンクボタ, 40, p. 4–17.
房総半島の養老川下流域の低地(養老川低地)には,最終氷期最盛期以降の海面の上昇に伴って形成された沖積層が広く分布する.一般に,沖積層は軟弱であり,大規模地震時には地震動を増幅し,揺れによる被害や液状化被害を引き起こすことがある.実際に養老川低地では,1923年関東地震時に木造家屋の倒壊や液状化による地盤の変形が広範囲で発生した(地質調査所, 1925).
最近我々は,産業技術総合研究所の“都市域の地質地盤図「千葉県中央部」”(野々垣ほか, 2026)の整備において,層序ボーリングおよび既存ボーリングデータに基づき,養老川低地と周辺域における沖積層の層序と分布形態を明らかにした(小島ほか, 2026).本発表では,これらの成果に基づいて養老川低地の沖積層の特徴を紹介する.さらに,同地域の中で関東地震時に顕著な液状化被害を受けた市原市町田においてボーリング調査を行い,液状化層を解析した結果についても併せて報告する.
【沖積層の分布と層序】
養老川低地の沖積層は更新統の下総層群や段丘堆積物を不整合に覆う.沖積層の基底面には平坦な面を開析した埋没谷が発達している.埋没谷の最深部は養老川河口よりも約4 km南西にあり標高−40 m以深に達する.埋没谷はそこから南東方向に延び,市原市町田付近で現在の養老川と谷軸が重なり,さらに上流側では現河道に沿うように台地を開析して発達している.
本地域の沖積層は,大きく下部と上部に区分される.下部は,主に埋没谷内に分布し,河川成の砂礫層,砂層,泥層から構成され,泥炭層や有機質泥層を伴う.上部は本地域に広く分布しており,しばしば貝殻を含む砂泥互層を主体とし,内陸域では地表付近に河川成の砂礫層を伴う.砂泥互層は臨海部ほど貝殻を多く含むことから海水の影響を強く受けていたと考えられる.また,沖積層上部は,東京低地や千葉県東京湾岸北部地域における同層準の沖積層に比べて砂分に富む傾向にある.
【関東地震時の液状化層】
市原市町田では,関東地震時にすべての木造家屋が倒壊したほか,地面には液状化による亀裂や陥没が多数生じた(地質調査所, 1925).亀裂は宅地において多く認められたとされ,当時の宅地の多くは自然堤防上に位置していたことから,本研究ではこの自然堤防上でオールコアのボーリング調査を実施した.
ボーリング調査(GS-IH-1)では,地表付近から深度31.44 m(標高−26.30 m)まで沖積層が確認され,このうち深度6 m(標高−0.86 m)以浅は,細粒〜中粒砂層を主体とする河川流路〜氾濫原堆積物からなる(小島ほか, 2026のユニット5).液状化が発生した堆積物では,初生的な堆積構造が乱され,塊状無層理部や変形構造が生じるとされる(風岡ほか, 2003).本ユニットの砂層中には,塊状無層理部が多数認められるほか,典型的な液状化構造である砂脈も確認された.したがって,同ユニットの砂層が関東地震の際に液状化したと考えられる.また,液状化痕とみられる部分はいずれも,砂層よりも透水性の低い泥質堆積物に覆われている.このような難透水層の存在により,地震時に砂層中の間隙水圧が局所的に上昇し,液状化の発生が促された可能性がある.
【引用文献】
地質調査所, 1925. 地質調査所特別報告 第2号, 185p.
野々垣ほか, 2026. 都市域の地質地盤図「千葉県中央部」(https://gbank.gsj.jp/urbangeol/ja/map_chibaCA/index.html)
小島ほか, 2026. 都市域の地質地盤図「千葉県中央部」説明書, p. 9–18.
風岡ほか, 2003. アーバンクボタ, 40, p. 4–17.
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