講演情報

[T11-P-2]埼玉県川口市上青木地区から採取した芝川低地の沖積層ボーリングコア(GS-KKA-1)の堆積環境

*菊地 一輝1、小松原 純子1 (1. 産業技術総合研究所 地質調査総合センター)
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キーワード:

大宮台地、芝川低地、沖積層、生痕化石

 集水域が台地内に限られるような比較的小規模な開析谷では,河川の堆積物運搬能力が小さく堆積物供給量が少ないため,沖積低地の中でも特に細粒堆積物が連続的に堆積して軟弱な地盤を形成する.このような小規模な開析谷における沖積層の分布や物性を把握するため,埼玉県の大宮台地を開析する芝川低地では,これまで谷の軸部に沿って複数の層序ボーリングが行われ,沖積層の堆積過程が復元されてきた(小松原・内田,2025).一方で,さらに下流側において,より大規模な開析谷の堆積環境変化とどのような関係になるかは明らかになっていない.本研究では,芝川低地の谷口付近にあたる埼玉県川口市上青木で,新たに採取された長さ50 mの層序ボーリングコアGS-KKA-1を対象として層相を記載した.そして,堆積相と生痕化石群集に着目し,芝川低地と荒川低地の境界部における沖積層の詳細な堆積過程の復元を試みた.
半割したコアの肉眼観察,X線CT像,軟X線写真に基づいて堆積相と生痕化石を記載し,厚さ10 cmの区間ごとにバイオターベーションインデックス(BI)を記録した.また,コア掘削後にPS検層,密度検層,温度検層を行った.
層相の特徴から,GS-KKA-1コアは下位から順に,深度34–50 mの砂礫層を主体とするユニットI,深度7.2–34 mの砂質シルト層を主体とするユニットII,深度0.8–7.2 mの主に砂層からなるユニットIII,に区分される.なお,本コアには沖積層の基底礫層が含まれず,下位の更新統下総層群との明瞭な岩相境界が見当たらなかった.一方,ユニットIIの砂質シルト層には深度23.1 m以深で含砂率,S波速度,密度の増加が認められる.沖積層の基盤となる更新統は一般に沖積層と比較して高い物性値を示すことから,本研究では深度23.1 mを沖積層の基底とした.
23.1 m以浅のユニットIIは,層相から深度20 mを境に下部と上部に分けられる.下部は主にオリーブ黒色のシルト層からなり,大量の植物片や根痕を含むことから,後背湿地ないし塩性湿地の堆積物と解釈される.
ユニットII上部は砂質シルト層および粘土層からなる.深度8–9 mには植物片を含む泥質細粒砂層を挟在する.ユニットII上部は強い生物撹拌作用を受けているものの,一部の層準で平行葉理がみられる.BIは深度8 mまではBI = 2–6の高い値を示し,深度8 m以浅ではBI = 1へと漸減する.深度8 mまでは水平方向への移動が卓越する摂食痕のPlanolitesが産出する一方で,それより上位ではPlanolitesは見られず,垂直方向の巣穴化石のConichnusやSkolithosが観察された.また,砂質シルト層には狭塩性のブンブクウニ類の生痕であるScoliciaがよく観察されるものの,泥質細粒砂層には見られなかった.ユニットII上部の砂質シルト層は海洋底生動物の生痕化石を含み,強い生物撹拌作用を受けていることから,内湾の堆積物と考えられる.一方,泥質細粒砂層には植物片を多く含むこと,Scoliciaが産出しないことから,荒川本流に形成されたデルタフロントがこの期間に前進し,河川からの淡水流入が一時的に強化されたことが示唆される.
ユニットIIIは深度2–7 mの主に中粒から細粒砂層からなる下部と,氾濫原ないし後背湿地の堆積物と考えられる深度0.8–2 mの植物片と根痕を含む砂質シルト層からなる上部に区分される.ユニットIII下部の砂層には斜交層理や平行葉理が見られ,粘土質の偽礫を含む.ユニットIII下部のBIは1–3で,生痕化石Scolicia,Conichnus,Skolithosなどが産出する.砂層に見られる斜交層理や垂直な巣穴が優占する生痕化石群集から,強い流れの影響下での堆積が示唆される.狭塩性生物の生痕であるScoliciaの産出から,この流れは河川流ではなくむしろ潮流の可能性が高い.したがって,ユニットIII下部は潮汐砂州の堆積物と考えられる.
ユニットIII下部の潮汐砂州堆積物は,より上流側で掘削されたGS-KZK-1コアの深度4–7 mで観察された潮汐砂州(小松原ほか,2010)と対比される可能性が高い.一方で,他地点で見られる潮汐流路堆積物や,沖積層基底の河川流路堆積物は本研究のコアでは認められなかった.このことから調査地点は芝川低地に形成された河川や潮汐流路からは外れていたものの,高海水準期には谷口の広い範囲で潮汐の影響が卓越し,潮汐砂州が形成されていたと考えられる.今後,14C年代値を測定して層序対比の確度を上げ,より詳細に堆積環境復元を行う必要がある.

文献
小松原純子ほか, 2010, 堆積学研究,69,73–84.
小松原純子・内田昌男, 2025, 地質学雑誌,131,45–58.

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