講演情報
[T11-P-4]常時微動観測を用いた千葉県香取郡神崎町・我孫子市布佐地区の液状化発生地域と地盤構造の関係性について
*赤澤 光樹1、小荒井 衛1、先名 重樹2、宇根 寛4、真家 公輝3 (1. 茨城大学理学部、2. 国立研究開発法人防災科学技術研究所、3. 茨城大学理学部卒業生、4. 元国土地理院)
キーワード:
液状化、常時微動観測、旧河道、押堀、地盤構造、2011年東北地方太平洋沖地震
2011年東北地方太平洋沖地震では, 利根川流域に位置する千葉県香取郡神崎町・我孫子市布佐地区で液状化被害が生じた. 神崎町では主に利根川旧河道上で液状化が発生し, 1987年千葉県東方沖地震でも液状化が発生した再液状化地域である. 風岡ほか(2003)の噴砂被害分布から, 旧河道上流側で馬蹄形状の亀裂を伴う噴砂や攻撃斜面側に噴砂集中する傾向が見られる. また, 中埜ほか(2017)は比抵抗二次元探査および地中レーダー探査を実施したが, 旧河道浅部の地下構造と噴砂発生域との関係は十分に議論されていない. 一方, 布佐地区では明治3年の利根川洪水による堤防決壊で形成された押堀の埋立地で液状化が発生し, 青山ほか(2014)の液状化被害分布では, 細長い押堀埋立地において利根川に近いほど液状化被害が集中している. 本研究では, 神崎町の旧河道および布佐地区の旧押堀を対象に常時微動観測を実施し, 地盤構造と液状化被害との関係を検討した.
常時微動観測(微動アレイ観測)は神崎町28地点, 布佐地区15地点で実施した. 観測データは微動クラウド解析システムBCAS(長・先名, 2016)を用いて解析し, S波速度構造・AVS値を推定した. S波速度は軟弱層ほど小さいため, 軟弱地盤の評価に有効である. また, 一部の地点では上下の層よりS波速度が低い逆転層が確認された. 本研究では, ①液状化被害と地盤構造の関係, ②軟弱地盤の分布, ③液状化発生地点のS波速度構造の特徴を検討した.
神崎町では, S波速度構造をボーリングデータ4地点(風岡ほか, 2014;若松, 1991;ちば情報マップ)・トレンチ調査結果(小松原ほか, 2014)と比較した結果, 旧河床面に対応するS波速度は120~180 m/sであった. この値を基に旧河道断面を推定したところ, 攻撃斜面側で旧河床面が深く, 噴砂集中域と概ね一致したことから, 攻撃斜面側では埋立層が厚く, 液状化リスクが高いことが示唆された. また, AVS値は全体として攻撃斜面側で低い傾向を示し, 赤澤ほか(2025)が報告した鬼怒川旧河道でも同様の傾向が認められる. さらに, 多くの液状化発生地点では深度20~30 m付近に逆転層が存在し, この構造による地震動増幅が上部砂層の液状化を助長した可能性が考えられる. この傾向は赤澤ほか(2025)の小貝川旧河道でも確認されている.
布佐地区では, S波速度構造をボーリングデータ5地点(我孫子市液状化対策検討委員会, 2011)と比較した結果, 押堀底面に対応するS波速度は70~120 m/sであった. この値を基に旧押堀底面を推定した結果, 液状化被害が集中した地点では押堀底面が深く, 埋立層が厚いことが明らかとなった. この傾向は神崎町の旧河道でも共通して認められた. 一方, AVS値は押堀内の方が周囲の後背湿地より高く, 神崎町とは逆の傾向を示した. これは地表付近に埋立砂層, その下位に厚い粘土層が分布するため, 比較的大きなAVS値が得られたためと考えられる. このことから, 液状化とAVS値の関係を議論する際には, ボーリングデータや地形発達史を踏まえて評価する必要がある. また, 布佐地区では液状化の有無によらず逆転層が広く分布したが, 液状化発生地点では非発生地点と比較してS波速度構造の分散が小さい傾向が認められた.
本研究は, 科研費基盤研究(B)課題番号25K00555(研究代表者:小荒井衛)より助成していただいた. また, 千葉環境研究センター地質環境研究室の皆様にはボーリングコアの観察の機会を提供していただくとともに, 研究に関する貴重なご意見をいただいた. 心より感謝申し上げる.
引用文献
青山雅史、小山拓志、宇根寛(2014):地理学評論,87,128-142.
赤澤光樹、小荒井衛、先名重樹(2025)、日本地球惑星科学連合2025年大会、人間環境と災害リスク、H-DS11-P04.
我孫子市液状化対策検討委員会(2011):布佐東部地区住民説明会資料,平成23年7月10~11日.
宇根寛、青山雅史、長谷川智則(2012):日本地球惑星科学連合2012年大会、人間環境と災害リスク、HSC24-04.
宇根 寛, 青山 雅史, 小山 拓志, 長谷川 智則(2015):地学雑誌, 124巻2号, 287-296
風岡修、楡井久、香村一夫、楠田隆、三田村宗樹(2003):アーバンクボタ,No.40,4-11.
風岡修、水野清秀、吉田剛、宮地良典、森崎正昭、田辺晋、香川淳、小松原純子、古野邦雄,小松原琢(2014):巨大地震による複合的地質災害に関する調査・研究報告書,289-296.
小松原琢、宮地良典、水野清秀、風岡修、齋藤勝、細矢卓志(2014):巨大地震による複合的地質災害に関する調査・研究報告書,273-288.
長郁夫、先名重樹(2016):Synthesiology,9(2),73-85.
中埜貴元、小荒井衛、須貝俊彦、吉田剛(2017):地学雑誌,126(6),749-765.
若松加寿江(1991):日本建築学会構造系論文報告集,第421号,29-37.
ちば情報マップ:地質柱状図.
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