講演情報

[T6-P-2]日本海溝沈み込み帯における堆積物のひずみ状態:帯磁率異方性からのアプローチ(IODP Expedition 405)★2026年度学生優秀発表賞受賞★

*吉本 剛瑠1、内田 泰蔵2、金松 敏也3、Satolli Sara4、Gürer Derya5、山本 由弦1、IODP Exp. 405 Scientists (1. 神戸大学、2. 高知大学、3. JAMSTEC、4. University of Chieti-Pescara、5. Heidelberg University)
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キーワード:

AMS、沈み込み帯、IODP、JTRACK、デコルマ


 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では、地震に伴ってプレート境界の浅部が約50 mすべり、その変位が海溝軸に達したことで、巨大な津波が発生した(Fujiwara et al., 2011)。これは「プレート境界浅部では地震性すべりが発生せず、非地震性すべりによってプレート間の変位が解消される」という従来の沈み込み帯モデルでは説明できない現象であり、そのメカニズムの解明が期待される。
2012年に実施された科学掘削(JFAST)は、東北沖合において付加体前縁部のプレート境界物質を採取することに成功し、浅部巨大すべりの発生機構解明に大きく貢献した。一方で、JFASTはプレート境界断層の掘削に集中していたため、付加体前縁部および太平洋プレートの連続コアは回収されず、海底からプレート境界に至る堆積物の物性変化や、太平洋プレートから供給される堆積物が浅部すべりに与える影響など、未解決問題が残された。そこで、国際深海科学掘削計画(IODP)第405次研究航海「Tracking Tsunamigenic Slip Across the Japan Trench(JTRACK)」が2024年に実施され、日本海溝沈み込み帯の付加体前縁部および沈み込む前の太平洋プレートから掘削コア試料が回収された。
本研究は、東北地方太平洋沖地震時に巨大すべりを経験した沈み込み帯浅部のひずみ分布を明らかにするため、付加体前縁部(Site C0019)および太平洋プレート(Site C0026)から採取した堆積物について帯磁率異方性(AMS)を測定した。帯磁率異方性は岩石に含まれる磁性鉱物の配列組織を楕円体として表現し、弱変成堆積岩のひずみマーカーとして使用される(Borradaile, 1991)。
付加体前縁部(Site C0019)では、層理面に平行なAMS面構造(F = 1.08)が卓越する一方、主要断層帯およびプレート境界断層直上では面構造(F = 1.01)および線構造(L = 1.01)が同時に減少し、圧密によって形成された初生ファブリックが初期変形によって乱されていることを示唆する。また、付加体前縁部の帯磁率楕円体の長軸(Kmax)は、概ね水平で北北東–南南西方向を示し、プレート収束方向およびボアホールブレークアウトから推定された最大水平応力方向に対して直交する方位を示した(Lin et al., 2013)。太平洋プレート(Site C0026)上の堆積物は圧密組織を示すものの、帯磁率楕円体の長軸は特定方向に配列していないことから、付加体前縁部に見られる長軸の配列は側方短縮変形を反映していると考えられる。
さらに、遠洋性泥岩を主体とするアンダースラスト堆積物は、沈み込む前の同層準と比較して、帯磁率楕円体の長軸の方位がより集中し、より扁平な磁気ファブリックを示す。したがって、太平洋プレートに堆積した遠洋性泥岩は、沈み込みに伴う上載荷重の増加とせん断ひずみによって粒子が再配列しながら圧密したと考えられる。これらの結果は、プレート沈み込みに伴う水平短縮ひずみがプレート境界上盤だけでなくアンダースラスト堆積物にも保存されている可能性を示す。また、地質学的時間スケールでは、せん断ひずみの一部がアンダースラスト堆積物内で累積・吸収されている可能性が示唆される。

参考文献
Borradaile, G.J., 1991. Correlation of strain with anisotropy of magnetic susceptibility (AMS). pure. Applied Geophysics 135, 15–29.
Fujiwara, T., Kodaira, S., No, T., Kaiho, Y., Takahashi, N., and Kaneda, Y., 2011. The 2011 Tohoku-Oki earthquake: displacement reaching the trench axis. Science, 334(6060):1240.
Lin, W., Conin, M., Moore, J.C., Chester, F.M., Nakamura, Y., Mori, J.J., Anderson, L., Brodsky, E.E., Eguchi, N., Expedition 343 Scientists, 2013. Stress state in the largest displacement area of the 2011 Tohoku-oki earthquake. Science 339, 687–690.

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