講演情報

[T7-P-30]カンラン石+普通輝石逆分別法による初生マグマ分離深度の検討―東北日本弧火山フロント、秋田駒ケ岳火山の片倉沢溶岩を例に―

*畠山 富昌1、安井 光大1,2、相澤 正隆3、井村 匠4、星出 隆志5、千葉 明5、平田 碧5、佐藤 翔1、澤藤 凌太1、今井 遼1、児玉 重樹1、浅川 敬公1、大場 司5、伴 雅雄4、国土交通省東北地方整備局 湯沢河川国道事務所6 (1. 株式会社 創研コンサルタント、2. 八峰白神ジオパークガイドの会、3. 北海道教育大学 札幌校、4. 山形大学、5. 秋田大学、6. 国土交通省 東北地方整備局 湯沢河川国道事務所)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

東北日本弧、秋田駒ケ岳火山、片倉沢溶岩、初生マグマ、逆分別法

はじめに
東北日本弧火山フロントの玄武岩は,苦鉄質斑晶鉱物の晶出順から「Type-I:カンラン石→古銅輝石→普通輝石」と「Type-II:カンラン石→普通輝石→古銅輝石」に分類される[1]。このうち「Type-I」は産出が多く,蔵王火山のソレアイトマグマの検討から下部地殻起源とされている[2]。一方,「Type-II」は岩手火山や秋田駒ケ岳火山などに限られており,一般論構築には至っていない。
一般に,玄武岩がマントル由来か否かを検討するには,マントル内部でのマグマ分離深度を算出するカンラン石逆分別法が有効である[3]。しかし,Type-II玄武岩試料ではカンラン石のほか普通輝石が斑晶として産する。この場合,カンラン石逆分別法は適さず,マグマの発生条件を制約するためには分別相を考慮する必要がある。そこで本研究では,秋田駒ケ岳火山の片倉沢の地質調査で得られた試錐試料を例に,カンラン石+普通輝石逆分別法を用いて,Type-II玄武岩のマグマ分離深度を新たに検討した。

片倉沢溶岩の地質と岩石
秋田駒ケ岳は約10万年前の火山活動にはじまり,成層火山形成期,カルデラ形成期,後カルデラ活動期に区分される[4]。このうち後カルデラ活動期の火山噴出物のひとつに,7,200~7,100年前に噴出した[5]片倉沢溶岩流が挙げられる[6]。片倉沢の河床下には3枚の玄武岩質溶岩流が確認されている[7]。本研究では,このうち上位2枚の溶岩試料を採取した。
鏡下観察の結果,2枚目の溶岩流試料(GL-7.0~7.1 m試料)が「普通輝石カンラン石玄武岩質溶岩」であった。カンラン石斑晶は径1~3 mmでコアはFo77,普通輝石斑晶は径1 mm未満でコアはMg#=82,斜長石斑晶は径2~3 mmでコアはAn90である。また,径5 mmを超える斜長石巨晶を伴いAn95に達する。石基はインターグラニュラー組織を呈する。
全岩化学組成をみると,SiO2=50.9~51.6 wt%,MgO=5.92~6.13 wt%,Na2O=2.09~2.22 wt%,K2O=0.14~0.22 wt%,Ni=32~40 ppm,Rb=0.78~3.50 ppm,Nb=2.5~2.7 ppmである。すなわち,片倉沢溶岩はlow-Kソレアイト玄武岩からなり,KやRbなどのLIL元素に乏しく,NbなどのHFS元素にも乏しいこと,さらに高MgOおよび高Ni量を示し,比較的未分化である。そして,苦鉄質斑晶コアは全岩とFe-Mg化学平衡に達している。

考察
片倉沢溶岩「GL-7.0~7.1 m試料」は,Type-IIの晶出順を示す普通輝石カンラン石玄武岩である。つまり,初生マグマの分離深度を求めるにあたり,カンラン石のみの逆分別[8]は現実的ではない。そこで,カンラン石のほか普通輝石も逆分別相に加え,初生マグマ分離深度を求めた。Ol-Pl-Qz偽三角図[9]へ投影した結果,カンラン石のみを逆分別した場合は約0.8 GPa,カンラン石+普通輝石を逆分別した場合は約1.0 GPaと,後者において深い圧力深度が見積もられた。この結果は,火山フロントマグマに関する最新の岩石学的研究例[10]とも調和する。他方,斜長石組成から高含水量であったことが示唆され,カンラン石+普通輝石逆分別法による約1.0 GPaの値は,実際には更に高圧側へシフトする可能性がある。
以上から,上部マントルカンラン岩の関与が考えられ,これが枯渇的である可能性もMo同位体比から示唆される[11]。すなわち,東北日本弧の地殻の厚さが約30 kmと見積もられていることを踏まえると,普通輝石が既に晶出を開始しているようなType-II玄武岩を出発物質として考える場合,カンラン石のほか普通輝石も逆分別法に加えるべきである。

引用文献
[1]青木謙一郎(1989)第2章 玄武岩,日本の火成岩,岩波書店.
[2]Tatsumi, Y. et al.(2008)J. Petrol., vol.49.
[3]巽 好幸ほか(1982)火山,27.
[4]須藤 茂・石井武政(1987)雫石地域の地質および同説明書.
[5]藤縄明彦ほか(2004)火山,49.
[6]柳澤妙佳ほか (2021) 火山,66.
[7]令和6年度 八幡平山系砂防施設地質調査 報告書 国土交通省 東北地方整備局 湯沢河川国道事務所
[8]中川光弘 (1985) 日本火山学会講演予稿集.
[9]Hirose, K. and Kushiro, I. (1993) Earth Planet. Sci. Lett., 114.
[10]Ban, M. et al. (2025) Island Arc, 34.
[11]Tamura, T. et al. (2026) Geochimica Cosmochimica Acta, in press.

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン