講演情報
[T7-P-31]白山火山噴出物中のかんらん石およびクロムスピネルの化学組成:深部苦鉄質マグマの痕跡★2026年度学生優秀発表賞受賞★
*山内 大樹1、森下 知晃1,2、酒寄 淳史1 (1. 金沢大学、2. 海洋研究開発機構)
キーワード:
白山、マグマ混合、結晶分化作用、かんらん石、クロムスピネル
はじめに
中部日本の両白山地に位置する白山火山は,東北日本の火山フロントから背弧側に離れた場所に位置する第四紀の活火山である.本火山の噴出物は玄武岩質安山岩からデイサイトであり,スコリアや苦鉄質包有物の存在,および鉱物組合せから,複数のマグマ混合プロセスの存在が報告されている(茨木,2018 金沢大学修士論文).山内(2025, 日本地質学会第132年学術大会)は,最新期火砕流堆積物中の角閃石の化学組成に基づき,地下の浅部に流紋岩質メルト,深部に安山岩–デイサイト質メルトの存在を推定した.しかし,白山火山の全岩化学組成はこれら2種類のメルトの混合のみでは説明できず,より苦鉄質(玄武岩質)な端成分メルトの関与が示唆される.その直接的な証拠として,最新期火山噴出物中にはクロムスピネルを内包するかんらん石斑晶が確認されている.本研究では,最も新しい活動期の噴出物中のかんらん石およびクロムスピネルの化学組成を報告する.
かんらん石の産状
新白山火山期(40 ka~)の噴出物である翠ヶ池噴出物(安山岩–デイサイト),南竜ヶ馬場溶岩中のスコリア(玄武岩質安山岩),白水滝溶岩類(安山岩–デイサイト),および同溶岩中の苦鉄質包有物(玄武岩質安山岩)を対象とし観察,分析を行った.かんらん石斑晶は,スコリア,白水滝溶岩,苦鉄質包有物中に多量に含まれるが,翠ヶ池噴出物には比較的稀である.白水滝溶岩中のかんらん石の多くは,周囲をMg# ~75の直方輝石反応縁に囲まれるが,スコリアおよび苦鉄質包有物中のかんらん石は明瞭な反応縁を持たず,特にスコリア中では骸晶状の形態を示す.これらのかんらん石はクロムスピネルを内包する(以下、High-Fo Ol).一方,翠ヶ池噴出物および白水滝溶岩中には,クロムスピネルをほぼ含まないかんらん石(以下、Low-Fo Ol)も認められ,これらはMg# 72-76の直方輝石反応縁や,一部で角閃石のリムを持つ.
かんらん石およびクロムスピネルの化学組成
High-Fo OlのコアのFo値は,スコリア中で84–85,苦鉄質包有物で84,白水滝溶岩で82-84であり,いずれもリムに向かってFo値が低下する(リムの最低Fo値は71-77).一方,Low-Fo OlのFo値はコアで最大80程度,リムで~73である.これらのかんらん石のCaO含有量は0.1wt%以上であること,キンクバンドなど変形を示す組織が観察されないことなどから,マグマから結晶化したものであると考えられる.またFo値–CaO (wt%) 関係において,スコリア中のかんらん石はFo値の減少に伴いCaOが急激に増加するトレンドを示すのに対し,他のかんらん石は緩やかに減少する異なるトレンドを示した.High-Fo Ol中のクロムスピネルは,Cr# = 0.33-0.57,TiO2 = 0.70-1.47 wt%,YFe3+(= Fe3+/(Cr+Al+Fe3+) 原子比)= 0.11–0.24を示し,粒径10 µm以上の結晶ではリムに向かってCr#が低下する累帯構造が確認される場合がある.一方,Low-Fo Olに稀に内包されるスピネルは,Cr# = 0.20-0.26,TiO2 = 1.25-4.96 wt%,YFe3+= 0.21–0.45と,より高いTiおよびFe3+を特徴とする.また,かんらん石の結晶外に成長しているスピネルはTiO2 = 5.05-7.53 wt%,YFe3+= 0.27-0.57を示し,結晶分化作用や珪長質なマグマとの混合の影響を強く受けている.Low-Fo Ol中のスピネルは結晶外のスピネルと同程度のFe3+比,TiO2量を示すことから,同様の影響を受けていると推察される.一方で,High-Fo Ol中のスピネルはYFe3+の増加とともにのTiO2量は増加しCr#は低下する.YFe3+が低いスピネルをより未分化なスピネルであるとするとCr#は0.5-0.6程度である.白山火山中のかんらん石斑晶,それに包有されているスピネルやこれらに関連していると思われるAn値の高い斜長石の存在など,白山火山における未分化マグマの特徴から深部のマグマ供給系について,現在詳細な考察を進めている.
中部日本の両白山地に位置する白山火山は,東北日本の火山フロントから背弧側に離れた場所に位置する第四紀の活火山である.本火山の噴出物は玄武岩質安山岩からデイサイトであり,スコリアや苦鉄質包有物の存在,および鉱物組合せから,複数のマグマ混合プロセスの存在が報告されている(茨木,2018 金沢大学修士論文).山内(2025, 日本地質学会第132年学術大会)は,最新期火砕流堆積物中の角閃石の化学組成に基づき,地下の浅部に流紋岩質メルト,深部に安山岩–デイサイト質メルトの存在を推定した.しかし,白山火山の全岩化学組成はこれら2種類のメルトの混合のみでは説明できず,より苦鉄質(玄武岩質)な端成分メルトの関与が示唆される.その直接的な証拠として,最新期火山噴出物中にはクロムスピネルを内包するかんらん石斑晶が確認されている.本研究では,最も新しい活動期の噴出物中のかんらん石およびクロムスピネルの化学組成を報告する.
かんらん石の産状
新白山火山期(40 ka~)の噴出物である翠ヶ池噴出物(安山岩–デイサイト),南竜ヶ馬場溶岩中のスコリア(玄武岩質安山岩),白水滝溶岩類(安山岩–デイサイト),および同溶岩中の苦鉄質包有物(玄武岩質安山岩)を対象とし観察,分析を行った.かんらん石斑晶は,スコリア,白水滝溶岩,苦鉄質包有物中に多量に含まれるが,翠ヶ池噴出物には比較的稀である.白水滝溶岩中のかんらん石の多くは,周囲をMg# ~75の直方輝石反応縁に囲まれるが,スコリアおよび苦鉄質包有物中のかんらん石は明瞭な反応縁を持たず,特にスコリア中では骸晶状の形態を示す.これらのかんらん石はクロムスピネルを内包する(以下、High-Fo Ol).一方,翠ヶ池噴出物および白水滝溶岩中には,クロムスピネルをほぼ含まないかんらん石(以下、Low-Fo Ol)も認められ,これらはMg# 72-76の直方輝石反応縁や,一部で角閃石のリムを持つ.
かんらん石およびクロムスピネルの化学組成
High-Fo OlのコアのFo値は,スコリア中で84–85,苦鉄質包有物で84,白水滝溶岩で82-84であり,いずれもリムに向かってFo値が低下する(リムの最低Fo値は71-77).一方,Low-Fo OlのFo値はコアで最大80程度,リムで~73である.これらのかんらん石のCaO含有量は0.1wt%以上であること,キンクバンドなど変形を示す組織が観察されないことなどから,マグマから結晶化したものであると考えられる.またFo値–CaO (wt%) 関係において,スコリア中のかんらん石はFo値の減少に伴いCaOが急激に増加するトレンドを示すのに対し,他のかんらん石は緩やかに減少する異なるトレンドを示した.High-Fo Ol中のクロムスピネルは,Cr# = 0.33-0.57,TiO2 = 0.70-1.47 wt%,YFe3+(= Fe3+/(Cr+Al+Fe3+) 原子比)= 0.11–0.24を示し,粒径10 µm以上の結晶ではリムに向かってCr#が低下する累帯構造が確認される場合がある.一方,Low-Fo Olに稀に内包されるスピネルは,Cr# = 0.20-0.26,TiO2 = 1.25-4.96 wt%,YFe3+= 0.21–0.45と,より高いTiおよびFe3+を特徴とする.また,かんらん石の結晶外に成長しているスピネルはTiO2 = 5.05-7.53 wt%,YFe3+= 0.27-0.57を示し,結晶分化作用や珪長質なマグマとの混合の影響を強く受けている.Low-Fo Ol中のスピネルは結晶外のスピネルと同程度のFe3+比,TiO2量を示すことから,同様の影響を受けていると推察される.一方で,High-Fo Ol中のスピネルはYFe3+の増加とともにのTiO2量は増加しCr#は低下する.YFe3+が低いスピネルをより未分化なスピネルであるとするとCr#は0.5-0.6程度である.白山火山中のかんらん石斑晶,それに包有されているスピネルやこれらに関連していると思われるAn値の高い斜長石の存在など,白山火山における未分化マグマの特徴から深部のマグマ供給系について,現在詳細な考察を進めている.
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