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[T7-P-36]トポロジカル解析に基づく中央海嶺玄武岩の空隙構造のマルチスケール特徴抽出

*星田 昌慶1、大柳 良介1、岡本 敦1 (1. 東北大学)
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キーワード:

トポロジカル解析、パーシステントホモロジー、マイクロX線CT、空隙、流体輸送、中央海嶺玄武岩


 中央海嶺拡大軸における熱水循環は,地球規模の水循環や表層環境,海底資源形成に大きな影響を与える。アイスランドは,中央海嶺で形成された玄武岩質海洋地殻が陸上に露出する特異な地域であり,超臨界地熱資源の開発やCCSプロジェクトの実証サイトとして注目されている(Friðleifsson and Elders et al. (2010) Proc. World Geotherm. Congr. 2010; Matter et al. (2011) Energy Procedia)。玄武岩の脆性―延性遷移温度(約800℃)は高温であり,引張場で形成された岩石亀裂が,支配的な熱水の移動経路と考えられてきた(Fisher (1998) Rev. Geophys.)。一方,火山岩にはマグマの発泡過程において多数の空隙が存在し,空隙サイズ分布に着目した研究が行われきた(Zahasky et al. (2018) Adv. Water Resour.)。しかし,空隙は複雑な3次元形状や連結性を持ち,様々なスケールの空隙が存在するため,これらから定量的な特徴を抽出し,流動特性と結びつけることは未だに困難である。
 近年,3次元構造を定量的に評価できる手法として,トポロジカル解析の一つであるパーシステントホモロジーが注目されている。パーシステントホモロジーは,2値化された対象を連続的に拡大・縮小しながら,位相的特徴(連結成分,輪,空隙など)の変化を追跡し,その生成(Birth)と消滅(Death)をパーシステント図としてプロットすることで,形状に関する情報を抽出するものである。本研究では,マイクロX線CTによる空隙の3次元形状の可視化と,パーシステントホモロジーの組み合わせにより,中央海嶺玄武岩に存在する空隙構造の定量化を試みる。また,マイクロX線CT の空間分解能と視野サイズのトレードオフという物理的制約を克服するため,異なるサイズの試料の解析により,空隙構造のスケール依存性についても検討する。
 本研究では,アイスランドから採取された多数の空隙をもつ玄武岩を対象とし,X線CTの撮影と,薄片による微細組織の観察およびEPMAを用いた鉱物組成の分析を行った。玄武岩は肉眼で観察可能なセンチメートルスケールの空隙を有する。同試料からセンチメートルスケールの空隙を含む直径24 mmのコア(コア1),含まない直径4 mm(コア2)の2種類のコア試料を作成した。また,それぞれ低分解能(16 µm/voxel)と高分解能(4 µm/voxel)の異なる空間分解能でマイクロX線CT画像を取得した。これらに対して,セグメンテーションにより空隙のみを抽出した。さらに,空隙分布およびパーシステントホモロジーにより,空隙の3次元形状を定量的に評価した。
 玄武岩には,斜長石,単斜輝石,かんらん石,酸化鉄,ガラスが存在し,薄片のBSE像からは,斜長石は自形で発達しており,リムほどNaに富む累帯構造が確認された。マイクロX線CT画像から推定されたコア1,2の空隙率は,それぞれ18.9 %,2.3 %であり,最大フェレー径は27.7–20617.4 µm,6.9–1932.3 µmの範囲を示した。コア1で観察されたセンチメートルスケールの空隙は,鉱物の自形結晶を切断するように存在し,コア2で観察されたミリメートルスケール以下の空隙は,斜長石と単斜輝石の境界にのみ存在していた。コア1,2から同定された空隙に共通して,空隙の末端部分には,鋸歯状の複雑な構造が発達していた。また,ほとんどの空隙は空間的に孤立しており,顕著な連結性は確認されなかった。
 空隙に対して,連結成分を対象とする0次のパーシステント図を作成した。コア2では,パーシステント図においてDeathが正の方向へと広がるプロットと,BirthとDeathが共に負の領域に集中するプロットが見られた。コア1では,コア2で見られたプロットに加え,BirthとDeathが共に負の領域の対角線上に広がるプロットと,Birthが-40~-20, Deathが0~10の領域へのプロットが見られた。
 パーシステント図から空隙の幾何学的特徴を解釈すると(Obayashi et al. (2018) J. Appl. Comput. Topol.),コア2では,各空隙の空間的距離が大きく,くびれた空隙構造が顕著であることが示唆される。またコア1では,これらの特徴に加えて,小さなくびれた構造を介して大きな空隙同士が連結していることと,大きな空隙の空間的距離が小さいことが示唆される。このように,コア1,2に存在する空隙は,それぞれ異なる幾何学的特徴を有するため,中央海嶺玄武岩に存在する空隙にはスケール依存性はないと考えられる。
 以上のように,本研究で観察した中央海嶺玄武岩には,鉱物の自形結晶を切断するように存在するセンチメートルスケールの空隙と,斜長石と単斜輝石の境界に存在するミリメートルスケール以下の空隙が存在することが明らかになった。トポロジカル解析の結果,これら2つの空隙間にはスケール依存性がなく,成因が異なることを示唆する。

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