講演情報
[T14-O-2]関東大震災の教訓を活かした横浜の防災のためのまち歩き
*相原 延光1 (1. 関東学院中学校高等学校)
キーワード:
関東大震災、複合災害、震災報告書、地理院地図、防災まち歩き
1923年大正関東地震は9月1日11時58分に発生した神奈川県西部を震源とするM7.9と推定されるプレート境界地震で,大きな揺れは30〜40秒間続き,その5分後の12時03分,相模湾を震源とするM7.3の第2震が発生した.本震規模は「平成7年(1995年)兵庫県南部地震」の約9倍で,震度5強〜7の揺れが2度襲った.丹沢山地や箱根・足柄山地では崖崩れが多数発生し山津波となって谷沿いの集落を襲った.また,県西部の酒匂川や県中央部の相模川,県東部の小河川流域の低地では地割れや道路陥没などが発生した.明治以来急速に発展した横浜では崖際に盛土して建てられた住宅が地すべりにより倒壊し,軟弱地盤に建てられた煉瓦建築物や木造密集住宅が倒壊して同時多発的に生じた火災となった.一方で,石造建造物の倒壊は免れ、地下に逃れ奇跡的に助かった例もある。当時海面水位は干潮に向かっていて,隆起した地域での相模湾沿岸での津波被害を除いて鎌倉や逗子と熱海などには到達した.
中央気象台の調査では,午前6時には台風が能登半島付近を東に通過中で,前日深夜から早朝にかけて県西部では豪雨が,横浜では3時〜9時頃に大雨から驟雨(総日降水量推定18mm)となり,10時過ぎに青空も覗いたが南寄りの強風が吹いていた.東京と比べて土地面積が狭い横浜は,極めて短時間で全焼した.その後高温湿潤の焼け跡から立ち上がった「火災旋風」が避難民を巻き込み大惨事となった.このように,地震災害に加えて台風一過後の不安定な大気を誘因とする気象条件が重なった複合災害といえる.(文献1,2)
震災記録は震災報告書や震災体験記録,非文字資料などで学ぶことができる(文献6,7,9,11,12,13,16).しかし一方で,震災後に公開された地盤資料(文献15)や町作りに関する古地図資料(文献3,4,5,10,17)を重ねて読み解くことにより,被災地の地盤の脆弱性と消防体制の課題(文献14)を教訓として知ることができる.演者は横浜市の被災地の現状をネット公開してきた(文献8)が,地域防災ボランティア活動推進者に役立つまちあるき用資料を新たに作成したのでその概要を報告する.
【被災地を巡るまち歩きコースの事例】
横浜の被災地は同市中区の大岡川流域の下流域の(A)低地と(B)本牧台地斜面を歩くコースである.
(A)低地コース:旧大岡川の河口の湿地帯〜砂嘴の埋め立て地(埋没谷と沖積層)
JR関内駅北口→吉田橋周辺…馬車道(街路樹,六道の辻,洲干弁天社跡,旧正金銀行跡)…→旧横浜地方裁判所跡…日本大通り(衣紋坂跡,横浜公園=旧彼我公園跡の液状化,中華街周辺の避難例)→JR関内駅またはJR石川町駅へ
(B)台地及び斜面コース(台地:上総層群の泥岩,下総層群戸塚層の礫岩,新期ローム,盛土)
JR石川町駅南口→石川町震災地蔵尊…台地斜面の古い狭隘道路(通学路)に残るブラフ空積み擁壁,元町公園の修復された擁壁…元町公園の湧水と外人墓地の地すべり災害跡地の修復擁壁…→みなとみらい線元町・中華街駅へ
【文献】
1 相原延光(2023):1923年関東地震前後の気象状況-地盤災害,火災旋風の災害誘因の考察のための情報-.地盤工学会災害論文報告集.1巻,2号,198-211.
2 相原延光(2024):複合災害としての関東大震災-地盤災害に及ぼした1923 年の気象状況―.防災科学技術研究所資料.506号,37-44.
3 月刊地図中心(2015)通巻508号.特集横浜 まち みち みなと.52P.
4 原島広至(2014):彩色絵はがき・古地図から眺めるワイド版横浜今昔散歩.KADOKAWA.223p.
5 今井清一(1994):横浜の町名から見た町作りの特色.湘南国際女子短期大学紀要,2,1-20.
6 今井清一(2007):横浜の関東大震災.有隣堂.310p.
7 井上公夫(2013):関東大震災と土砂災害.古今書院.225p.
8 いさぼうねっと歴史的大規模土砂災害地点を歩く コラム97横浜山手の関東大震災(1923)による土砂災害地点の現状
9 伊藤泉美(2014):ある英国人女性の手紙 関東大震災からの逃避行.横浜開港資料館紀要,第32号,73-87.
10 松田磐余(2013):対話で学ぶ江戸東京・横浜の地形.之潮.247p.
11 内閣府社会局(1926):大正震災誌附図―横浜火災延焼状況図―
12 内閣府中央防災会議(2006):災害教訓の継承に関する専門調査会報告書第1編第5章
13 Poule, O.M. 金井圓訳(1976):古き横浜の壊滅.有隣新書.220p.
14 高梨成子(2023):関東大震災から100年横濱市の関東大震災―大火と救出・消火・避難.消防研修第113号,84-97.
15 横浜市公害研究所(1988):横浜市軟弱地盤調査報告書―軟弱地盤構造と地盤沈下特性―.横浜市公害研究所資料83.
16 横浜市市史編纂室(1926):横浜市震災誌第一冊〜第五冊
17 横浜市歴史博物館(2010):海にできた新田.15p.
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