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[T14-O-3]土砂災害種別からみた自然災害伝承碑の建立傾向

*猪股 雅美1 (1. 広島工業大学)
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キーワード:

自然災害伝承碑、土砂災害種類

1.はじめに
 自然災害伝承碑とは,過去に発生した土砂災害や津波などの自然災害の内容や被害状況等が記載されている碑のことで,全国で2,451基が登録されている(国土地理院,2026年6月25日時点)1).災害リスクの高い地域の住民たちが未経験の地域災害について認識する手段として,小山ほか(2017)2)は,自然災害伝承碑を活用する有効性を述べており,地域災害について認識を深めるための貴重な手段として期待されている.しかしながら猪股(2025)3)は,香川県小豆島において,災害が発生した地域において碑の建立数に偏りがあり,特に地すべりに関する災害伝承碑は全国で登録されている2269基(国土地理院,2025年2月27日時点)のうち39基と少ないことから,建立数の地域差の要因が,地質由来の災害特性であることを示唆した. 本研究では,全国に建立されている土砂災害に起因する自然災害伝承碑を分析することで,災害種別による自然災害伝承碑の建立傾向を明らかにすることを目的とする.

2.研究方法
 本研究では,土砂災害に起因する自然災害伝承碑614基を都道府県別に集計した.これを,国土交通省が公表する平成15(2003)年から令和5(2023)年までの都道府県別土砂災害発生件数4) 27,726件,及び都道府県別土砂災害警戒区域指定数(2026年3月31日時点)5) 719,154箇所と比較し,土石流,急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)及び地すべりの災害種別との関連について分析した.

3.結果
 土砂災害に起因する自然災害伝承碑が全都道府県の中で最も多い広島県では,土砂災害警戒区域指定数も最も多く,土砂災害発生件数は2番目に多かった.一方,最も土砂災害発生件数が多い新潟県は,伝承碑数と警戒区域指定数は,ともに広島と比較して少なかった(表1).
 各都道府県の自然災害伝承碑数と,災害種別の土砂災害警戒区域指定数,および災害種別の土砂災害発生件数についての相関係数を分析したところ,伝承碑数と土石流発生件数に有意な正の相関がみられた(p<.01).また,伝承碑数と土石流警戒区域指定数にも同じく有意な正の相関がみられた(p<.01).いずれも相関の強さは中程度以上といえる.なお,相関係数の分析にはjs-STAR XR+release 2.5.0 jを用いた.

4.考察
 分析結果より,土砂災害に起因する自然災害伝承の建立数は,特に土石流発生件数の多い地域で増加する傾向が見られた.また,土石流警戒区域指定数とも正の相関があったことは,自然災害伝承碑が地域に潜在する土砂災害リスクを可視化する,ランドマーク的存在であることを示す.土石流は崩壊源が異なっても,下流で同じ谷筋を土砂が流下し,山裾の地域への災害を繰り返すことが多い.一方,地すべりは災害発生範囲が広く,危険箇所を提示するのは困難である.また,急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)は災害発生件数が多いが,同一ヶ所で繰り返し発生するわけではない.これらのことから,地域への自然災害「伝承」という建立意図によって,土石流被害を伝える災害伝承碑が多く建立されたと考える.

5.まとめ
 土砂災害に起因する自然災害伝承碑614基について,都道府県別の土砂災害発生件数及び土砂災害警戒区域指定数を土砂災害種別ごとに分析した.その結果,自然災害伝承の建立数は,特に土石流発生件数の多い地域で相対的に多く認められた.このことから,土砂災害の種類によって,自然災害伝承碑の建立状況が異なることが示唆された.

6.引用文献
1)国土地理院(2026)「自然災害伝承碑」掲載市区町村一覧(2026年6月25日版),https://www.gsi.go.jp/common/000215229.pdf,2026年7月閲覧
2)小山耕平・熊原康博・藤本理志(2017)広島県内の洪水・土砂災害に関する石碑の特徴と防災上の意義,地理科学,第72巻,第1号,1-18.
3)猪股雅美(2025)小豆島における自然災害伝承碑の立地と地形・地質のGIS的考察,日本地質学会第132年学術大会(熊本)発表要旨集,T3-O-10.
4)国土交通省砂防部(2024)都道府県別土砂災害発生状況(H15~R5)12.31時点,https://www.mlit.go.jp/river/sabo/jirei/h15-r5_doshasaigaikensuu_r5.pdf,2025年6月閲覧
5)国土交通省(2026)全国における土砂災害警戒区域等の指定状況 https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/content/001982570.pdf 2026年7月1日閲覧

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