講演情報

[T6-O-4]付加体断層帯におけるSlow–Fast変形遷移とレオロジー不均質の進化

*橋本 善孝1、細川 貴弘1、内田 泰蔵1 (1. 高知大学)
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キーワード:

付加体、不均質レオロジー、歪み局所化

 付加体断層帯には、圧力溶解、鉱物脈形成、カタクレーサイト化、摩擦発熱を伴う地震性すべりなど、多様な時間・空間スケールの変形構造が認められる。これらは従来、異なる変形機構として個別に議論されることが多かったが、天然では同一断層帯内で重複しながら発達しており、それらを統一的に理解する枠組みが求められている。本研究では、不均質物質中の変形局所化モデルから導かれた相図を基盤として、Slow変形からFast変形への遷移をレオロジー不均質の進化という観点から考察する。有限要素解析では、物性境界に応力・ひずみ速度が集中し、降伏・軟化・応力再配分を繰り返しながら局所化が発達する。また、系全体のひずみ速度をモデルサイズで正規化すると、局所化挙動は絶対スケールによらず整理され、レオロジーコントラストと系全体のひずみ速度によって統一的に記述できることが示された。この結果に基づき、両者を軸とする変形局所化相図を構築した。相図では、レオロジーコントラストが小さい条件では局所化は緩やかに進行する一方、コントラストが増大すると局所化は急速となる。この結果は、Fast変形はレオロジーコントラストが十分に発達した結果として発現し、その背景にはレオロジー構造を時間とともに変化させる地質学的プロセスが存在することを示唆している。したがって、天然の断層帯ではレオロジーコントラストを固定的な物性ではなく、変形とともに形成・改変される状態量として捉える必要がある。この観点から、レオロジー構造の進化に関わる二つの天然例を紹介する。第一に、カタクレーサイト中に発達するセメントでは、カソードルミネッセンス像とAl濃度との対応から、急速に沈殿したセメントと緩慢に沈殿したセメントが共存することが明らかとなった。これは、流体移動および沈殿反応が空間的・時間的に不均一であり、Slowな化学作用が断層帯内にレオロジーコントラストを形成する可能性を示している。第二に、摩擦発熱を記録するカタクレーサイトの磁気マッピングでは、高温変質は断層全体ではなく局所的な流体流路に沿って発達することが認められた。これは、高速局所化の結果として流体・熱・鉱物反応が限られた領域へ集中することを示しており、Fast変形は既存のレオロジー構造をさらに改変・再編成するプロセスとして理解できる可能性がある。以上より、Slowな化学作用はレオロジーコントラストを形成し、そのコントラストがある閾値に達するとFastな局所化が発現する。そしてFast変形は流体・熱・変質作用を局所化させることにより、断層帯のレオロジー構造を再編成し、その後の変形条件を変化させる可能性がある。本研究では、このような変形とレオロジー不均質の**共進化(co-evolution)**という視点から、付加体断層帯におけるSlow–Fast変形遷移を理解する概念モデルを提案する。変形局所化相図は、多様な断層岩組織や流体活動を単一の枠組みで議論するための基盤となり、地震性すべりへ至る断層帯進化の地質学的理解に新たな視点を提供すると期待される。

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