講演情報

[T14-P-9]島根県松江市玉湯町周辺の安山岩溶岩の熱水変質と碧玉脈の形成

*丸山 諒1、中里 瑠花1、大平 寛人1 (1. 島根大学)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

碧玉、セラドナイト、熱水変質作用、玉髄、安山岩溶岩

はじめに
松江市玉湯町の花仙山(かせんざん)周辺の碧玉(青めのう)は,古くから勾玉などの材料や装飾品として利用され,弥生時代から昭和50 年代まで採掘が行われた(島根地質百選編集委員会,2013).採掘跡は花仙山南西麓において40以上報告されている(松江市教育委員会,1978).玉造温泉街東側斜面には碧玉脈の採掘跡がめのう公園として整備されている.
花仙山周辺には碧玉のほか玉髄(白めのう)も安山岩溶岩中に脈状あるいは気孔を埋めるように産する.それらは溶岩の固結に伴う揮発成分(熱水)の分離と濃集によるものと考えられるが,詳しい産状や形成条件については不明な点も多い.
安山岩溶岩に含まれる粘土鉱物の違いなどから,花仙山周辺では熱水変質~その後の風化変質の影響が場所により異なることが示唆された.また溶岩下部~縁部(めのう公園)に産する碧玉脈が主に石英とセラドナイトからなり,熱水からの晶出に際し両者の密接な関連が示唆される.
本研究では新たに安山岩溶岩の中~上部において観察された碧玉脈および玉髄の産状や組織を調べ,安山岩溶岩下部~縁部のそれらとの比較を行った.また熱水が発達する地質条件の違いについても検討した.
なお,研究対象の碧玉や玉髄を含む安山岩溶岩は中期中新世の大森層に相当し,その層厚は最大 500m以下とされる(鹿野ほか,1994).採掘坑跡は花仙山南西麓を中心に複数の地域に偏在しており(松江市教育委員会,1978),そのような場所で碧玉や玉髄の形成に関与した熱水が発達しやすく,さらに母岩の変質等により碧玉脈を採掘しやすい地質条件が整っていたものと考えられる.

碧玉脈と母岩の安山岩溶岩の特徴
溶岩下部~縁部(めのう公園)の碧玉脈は濃緑色で,一部淡緑色~灰白色の不均質な色調を呈し,複数の分岐細脈を伴う.脈周囲の安山岩溶岩は岩石全体に気孔が発達し,石基および有色鉱物の粘土化が著しい.
一方,溶岩中~上部では碧玉脈の形成は限定的であり,さらに一般的な碧玉脈に比べて軟質で脆い傾向がある.不規則な玉髄(石英)の脈は比較的多く,典型的な露頭では,フラクチャーに沿って緑色物質を破砕するように取り込んだ脈も観察される.また母岩の溶岩は気孔を有するものの,溶岩下部~縁部に比べて変質が弱く硬質である.

碧玉脈の構成鉱物の違い(XRD)
溶岩下部~縁部の碧玉脈は一般に硬質で,石英およびセラドナイトからなり,濃緑色部ではセラドナイトのピークが確認できる.シリカ鉱物としては石英のみが検出される.一方,溶岩の中~上部の碧玉脈は一般に脆弱で,セラドナイトのほか,シリカ鉱物としてはクリストバライトが優勢である.
このような碧玉脈に見られるシリカ鉱物の違いは,厚さ数100mにおよぶ溶岩の場所による熱水の発達様式や,温度の違いを反映しているものと考えられる(例えば,Hedenquist et al., 1996).すなわち溶岩下部~縁部では比較的高温で晶出する石英が,溶岩の中~上部では,より低温のクリストバライトが優勢であった可能性を示唆する.

碧玉脈の反射電子線像
溶岩下部~縁部(めのう公園)の碧玉脈(濃緑色)の微小領域をEPMAにより観察・分析した.反射電子線像では,暗灰色を呈するのっぺりとした平滑な石英の中に,やや明るい色調の微細柱状のセラドナイトが無数に存在しており,セラドナイトが石英に覆われている様子が確認できる.まれに見られる孔隙(10μm>)には,棒状~板状の自形セラドナイト(長径0.5μm>)を確認できる.このことは熱水からの碧玉形成に際して,セラドナイトが石英と同時か,より早期に晶出した可能性を示唆する.今後溶岩の中~上部の碧玉に含まれるセラドナイトとシリカ鉱物(クリストバライト)との関連を検討する必要がある.

まとめ
花仙山周辺に分布する安山岩溶岩の下部~縁部,および中~上部の碧玉脈の特徴や母岩の変質について検討した.溶岩の下部~縁部には硬質な碧玉脈が発達し,石英とセラドナイトからなる.母岩の変質も著しく碧玉脈の採掘に適していたと考えられる.一方,溶岩の中~上部に産する碧玉脈は少なく,比較的脆弱で,クリストバライトとセラドナイトからなり,母岩の変質は軽微である.碧玉脈に含まれるシリカ鉱物の違いは溶岩の場所による熱水の発達様式や温度の違いを反映している可能性がある.
引用文献
Hedenquist et al. (1996) Epithermal gold deposits: Styles, characteristics, and exploration. Resource
 Geology Special Publication Number 1, Society of Resource Geology.
鹿野和彦ほか(1994)松江地域の地質.地域地質研究報告(5万分の 1 地質図幅),地質調査所,126p.
松江市教育委員会(1987)玉作関係遺跡.島根県生産遺跡分布調査報告書Ⅵ,p57-59.
島根地質百選編集委員会(2013)花仙山のめのう脈.島根の大地見どころガイド,今井出版,p110-111.

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン